064 神聖騎士6 ──虎視
僕はマイケル隊長に向けて【Hate】を放った。
隊長が顔を真っ赤に染め上げて、綺麗に整った顔立ちをぐしゃりと大きく歪ませる。
その相貌は、まるで狂人のようだ。
そんな彼が、雄叫びを上げながら、腰に下げた大ぶりの剣を音高く抜き放ち、突進してくる。走るに応じて、金属製の甲冑がガチャガチャという音を立て、掲げられた大剣には頭上から降り注ぐ陽の光を、その切っ先に宿らせていた。
突然、隊長が宙を飛んだ。左右非対称に歪められた顔面が、膨らむようにしてこちらに迫る。
ハヤナがマイケル隊長の背後から、彼のアキレス腱をさくりと切り裂いたのだ。
僕の足元に、隊長が顔面から地面へ突っ込む。続いて、流れ作業のようにして、ツー太が彼の手足を土中に埋めた。
這い蹲った彼を見下ろしながら、無駄だろうとは思いながらも念のため、隊長にも同様の質問をしてみる。
四つん這いの姿勢のまま、しかし彼は、目線を真下に落とし、無視することに徹していた。
その姿は組織の長としての正しい在り方からはかけ離れ、己の保身に執着している、そんな姿に目に映る。
ゲイルさんの方がよほど……と思わなくもない。
僕は情報を引き出すのは無理だと判断し、シロにアキレス腱の治療をさせた。
そして、騎士たちの半身を土中に埋めたまま、その場を引き上げることにする。
四人の美丈夫が大地に手足を埋められて、四つん這いになっている姿というのは……なんというかシュールで……そして痛々しい光景だ。
心がチリチリと燃やすような憐憫と罪悪感……。
申し訳なさからか、僕はゲイルさんたちから預かった三本の剣のうち、一本をマイケル隊長の前にそっと置いた。
四人が帰路、魔物や野生動物に襲われても、無事に帰れるようにするためだ。
その代わりに……と言ってはなんだけど、後で容易に追跡されぬよう、係留されていた駱駝のうちの二頭をもらい受けることにした。
二振りの剣を僕が持ち、駱駝二頭の手綱をヒー太とシロに咥えさせる。
駱駝なんて子供の頃に動物園で見た以来だ。
体高、2メートルはあるだろうか? 見上げるそれは中々に威圧感がある。
あとで【テイム】で仲間にしよう。そんなことを思いながら、僕らはその場を立ち去った。
だけど、暫く歩くと──彼らのことが気になって、僕は立ち止まり、四人の方を振り向いた。
ゲイルさんが手足を土の中に沈めたまま、ジッと此方を虎視する姿が遠目に見える。
その射ぬくような双眼が妙に印象的なものとして、僕の網膜に残り続けた。
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