表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/193

064 神聖騎士6 ──虎視


 僕はマイケル隊長に向けて【Hate】を放った。


 隊長が顔を真っ赤に染め上げて、綺麗に整った顔立ちをぐしゃりと大きく歪ませる。

 

 その相貌は、まるで狂人のようだ。

 

 そんな彼が、雄叫びを上げながら、腰に下げた大ぶりの剣を音高く抜き放ち、突進してくる。走るに応じて、金属製の甲冑がガチャガチャという音を立て、掲げられた大剣には頭上から降り注ぐ陽の光を、その切っ先に宿らせていた。


 突然、隊長が宙を飛んだ。左右非対称に歪められた顔面が、膨らむようにしてこちらに迫る。


 ハヤナがマイケル隊長の背後から、彼のアキレス腱をさくりと切り裂いたのだ。



 僕の足元に、隊長が顔面から地面へ突っ込む。続いて、流れ作業のようにして、ツー太が彼の手足を土中に埋めた。



 

 這いつくばった彼を見下ろしながら、無駄だろうとは思いながらも念のため、隊長にも同様の質問をしてみる。

 

 四つん這いの姿勢のまま、しかし彼は、目線を真下に落とし、無視することに徹していた。

 その姿は組織の長としての正しい在り方からはかけ離れ、己の保身に執着している、そんな姿に目に映る。


 ゲイルさんの方がよほど……と思わなくもない。



 僕は情報を引き出すのは無理だと判断し、シロにアキレス腱の治療をさせた。

 そして、騎士たちの半身を土中に埋めたまま、その場を引き上げることにする。


 四人の美丈夫が大地に手足を埋められて、四つん這いになっている姿というのは……なんというかシュールで……そして痛々しい光景だ。

 心がチリチリと燃やすような憐憫と罪悪感……。



 申し訳なさからか、僕はゲイルさんたちから預かった三本の剣のうち、一本をマイケル隊長の前にそっと置いた。

 四人が帰路、魔物や野生動物に襲われても、無事に帰れるようにするためだ。

 


 その代わりに……と言ってはなんだけど、後で容易に追跡されぬよう、係留されていた駱駝のうちの二頭をもらい受けることにした。

 







 二振りの剣を僕が持ち、駱駝二頭の手綱をヒー太とシロに咥えさせる。

 

 駱駝なんて子供の頃に動物園で見た以来だ。

 体高、2メートルはあるだろうか? 見上げるそれは中々に威圧感がある。


 あとで【テイム】で仲間にしよう。そんなことを思いながら、僕らはその場を立ち去った。





 だけど、しばく歩くと──彼らのことが気になって、僕は立ち止まり、四人の方を振り向いた。

 ゲイルさんが手足を土の中に沈めたまま、ジッと此方こちら虎視こしする姿が遠目に見える。


 その射ぬくような双眼が妙に印象的なものとして、僕の網膜に残り続けた。



 ・

 ・

 ・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ