063 神聖騎士5 ──無能な人間と仲良くしていては、己の立場を危うくする
僕はゲイルさんを見て、白鳥のことを思い出していた。
タイガー商社時代の2歳年下の後輩だ。
仕事が出来、イケメン。物腰も柔らかく、誰からも好かれる好青年。
多くの社員が僕を蔑む中、彼だけが最後の最後まで、敬意を持って僕に接してくれていた。
ゲイルさんからは白鳥と似たようなオーラを感じる。
そんな有能な人間が、僕のような不審者に、簡単に口を割るとは思えなかった。
これ以上は無駄な時間になるだろう。
そう思い、ゲイルさんを拘束したまま、彼の腰に差している剣を引き抜いた。念のための用心だ。
そして、同様にスミスさん、トリスさんの剣も預かって、マイケル隊長の元へと向う。
部下たちの剣を三振り持って現れた僕に対し、隊長はほんの一瞬だけ僕を見て、次の瞬間には無視を決めこんだ。
僕から目を逸らし、腕を組んで遠くの森の梢あたりを眺めている。
どうやらマイケル隊長は、僕の“Ignorance性”への感応性が高いらしい。
当たり前だが人は社会的な動物だ。
自分より無能な人間、組織の役に立たない人間と、仲良くしていては己の立場を危うくする。
なので、”コイツは信頼出来る/出来ない──頼りになる/ならない”という判断を、人は極めて一瞬で、本能的に下せるようになっている。
人類は30万年近い歴史の中で、そのように脳の機能を進化させてきたのだ。
──”この人と仲良く出来るといいなぁ”
──”こいつ、ヤバそうだなぁ。関わらないようにしよう……”
マイケル隊長はそうした人を見る眼力──一瞬の判定力──が、普通の人より優れているのだろう。
だからこそ、『隊長』などという監督職に就いているだ。多分。
それはさておき、このまま彼を野放しにしている訳にもいかない。
僕はマイケル隊長に向けて【Hate】を放った。




