062 神聖騎士4 ──健常者上位種
仕方がないので、ゲイルさんの元へと向かった。
──ゲイルさんは凛々しい表情で僕を睨みつつ、冷静に僕を観察している。
その態度は先の二人と比較して、極めて落ち着いたものだった。
【鑑定】によると26歳──僕より一つ年下だ。
僕と同世代だというのに、大したものだ。
明らかに怪しい、みすぼらしい格好をしたハゲの醜男に、手足を拘束されて土中に埋められ……尋問される。
そんな異常事態に対して──少なくとも表向きは──一切動じず、冷静だ。
僕が逆の立場なら、見苦しいまでに狼狽していただろう。失禁も辞さなさそうである。
前の二人と同様に、可能な限りの丁寧さを意識しつつ、声を掛ける。
だけど、ゲイルさんはこちらに視線を据えたまま、口を開こうとはしない。
弱めの【プレコックス感】をかけてみると、青い瞳が微かに揺れた。
徐々に【プレコックス感】を強めていくと、目を白黒させ始めるが、それでも暫くすると、再び僕に視線を戻す。
大した胆力だ。
“プレコックス感”に対する反応性は、人により様々だ。
先にも述べた通り、トリスさんなどは感受性が高い部類なんだろう。
一概には言えないが、“プレコックス感”への感受性が高い人間ほど、気が弱く、小者であることが多い。
社畜時代を振り返るに、大層な肩書きを持ついい大人──例えば大企業の部長クラスの人間とかでも、アワアワとまごつき始める人は結構いる。
こういう人ほど、重大な事態を前にすると、我先にと逃げ出したり……責任転嫁をしたり……いざという時に残念な姿を晒すことが多い……。
一方、“プレコックス感”に耐性のある人ほど、優しさと度胸を兼ね備え、人をうまく御し、物事に動じにくい。
当然ながら、そうした人ほど人間力も高く、多くの人に敬われ、慕われやすい。……そんな傾向があるように思う。
僕の目には、ゲイルさんはリーダー的な資質に富んだ、有能な人物であるように映った。
健常者の中における上位種のような存在だ。
知力・体力等、各種パラメーターが平均以上で、人間性も非の打ち所がなく、多くの人々の尊敬を集めるタイプの人間。
こうした健常者上位種は、自身の能力を鼻にかけることもないし、劣った人間を表立って蔑むこともない。
そして、なんら苦労することなく、仕事で成功を収めたり、趣味の分野で大成したり、人生を優雅に楽しむ。
所謂、チート持ちと言ってもよいだろう。
ジャミング症候群罹患者の対極ともいえる存在だ。




