061 神聖騎士3 ──人それぞれの感受性
僕はスミスさんに対し、出来る限りゆっくりとした穏やかな口調で、話しかけた。
清澄な森の奥の泉の水面に──言葉を一つ一つ、静かに投げ入れていくような──そんなイメージを心掛ける。
「私は、明日部太郎と申します……このようなマネをして申し訳ありません。ですが、私たちはあなたに危害を加えるつもりはありません……私は……遠い国からここに来ました……なので……この辺りのことを何も知りません……差し支えなければ……色々と教えていただけないでしょうか……?」
自分でも随分とくどくて拙い言い方だ……とは思うが仕方がない。
普通の社会人のように流暢に、他者とコミュニケーションがとれないのだ、僕は。
なので、まずは──“僕に敵意はありません”ということが相手に伝わればそれでいい。誠意を精一杯伝えよう。とにかくそれを、優先させる。
だが、そんな努力は全く、通じていないようだった。
スミスさんは大変分かりやすい感じで、嫌悪と怒りで顔を歪ませ、燃え上がるような瞳で僕を睨みつけている。
「拘束を解きますので、色々とお伺いしてもよろしいですか?」
「……」
スミスさんは相も変わらず、怒りの形相。
これはダメだと思い、僕はスミスさんを拘束したまま、トリスさんの方へと向かった。
──彼にも同様のことを尋ねる。
トリスさんは引き攣った表情をしていた。
その瞳には、未知のものを見た時に人が感じる、本能的な恐怖を宿しているように思える。
僕から逃れたい、と思う本能を、トリスさんは必死に理性で抑え込もうと葛藤しているようだった。
トリスさんの視線は、僕のそれと交わりそうになる度に逸れた。
だが、その度にトリスさんはその視線を元に戻そうとする。
僕と視線を合わせる──たったそれだけのことに、尋常でない精神力を消耗させているようだった。
スミスさんとは全く異なる反応だ。
当たり前だが、人の性質は十人十色。
思うに、スミスさんは僕の持つ“Hate性”への感受性が高く、一方、トリスさんは“プレコックス感”へのそれが高いのだろう。
僕は、トリスさんが応じてくれることを期待して暫く待ったが、結局、期するところは返ってこない。
仕方がないので、ゲイルさんの元へと向かった。




