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006 彷徨
ここはどこだ? 会社のみんなは? ……たしか……辞職の挨拶の途中で、大きな地震が起きて…………それから……
夢でも見ているのか?
僕は再び首を巡らし、周囲を見遣った。
だけど、自分以外に人影はどこにも見当たらない。
ここはどこだ……?
考えが纏まらないまま、僕は洞窟周辺を彷徨いだした。
自分でもどこに向かっているのか分からない。
パニックの中、じっとしていられず、考え無しに足を動かし、なんとなく歩き易そうなところを歩いているだけだ。
一時間ほど歩き回ったが、景色は代わり映えしない──荒涼とした砂地や岩場、そして低木を時々見かけるばかり…………
不安と焦燥で頭の中がいっぱいだった。
目に映る景色は目に映るだけで、脳内で意味のある情報に変換されない。
汗が滝のように流れ、流れ落ちた汗が、足元の土に染み込んでは消えてゆく……。
──不図、背後に何かの気配を感じた。