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056 湖へ10 ──こうした種類の快楽は……1
塹壕戦法でレベルが上がったのは良かったが、僕の人間性は悪い方向に歪み始めていた。
端的に言うと、僕はレベル上げの快楽に嵌まっていたのだ。
人の考えや思いなど、状況次第でいとも容易く流される。
僕は、魔物をレベル上げのための道具のように見なすようになっていたのだ。
初めてフェネックたちと魔物を狩った時の心の痛みが、今では嘘のようだった。
集団リンチのようなマネをしてしまったと、罪悪感で心を軋ませていたのは何だったんだろう……。
圧倒的に有利な状況で、自分よりも遥かに強いものを叩き伏せる──このアドレナリンが溢れだす悦楽に、僕の理性は遥か遠くへ押し流されていた。
レベルが上がる、という現実世界では経験不可能な“歓び”も──僕を、さらなる殺生の連鎖へと駆り立てる。
“暴力の享楽”も“レベル上昇の悦び”も、どちらも脳が焼けるような体験だ。
こうした種類の快楽は、例外なく人間を駄目にする。
そのことに気づかせてくれたのは、ミー太だった。
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