053 湖へ7 ──……チッ……1
──翌朝。
全員レベルアップを果たし、僕はレベル7に、フェネックたちはレベル6に、ハヤナはレベル2になっていた。
そして僕は今後について、あーだ、こーだと悩んだ末に、湖探索と同時に塹壕戦法の洗練化を進めることにした。
この方法であれば、安全かつ効率的に、自分達より強い魔物を狩ることが出来る。そうすれば、レベルも容易に上げられ、僕らが出来ることも増えるだろう。
【神木】の指令達成が遅れるのは正直怖いが、致し方ない、と割り切ることにした。
これから先、【神木】の要求がエスカレートしてゆく……そんな可能性だって十分あり得る。楽観的ではいられない。
言われたことを頑張ってやろうとしたが、やってみると、そもそも能力がまったく足りていない──相手を酷く幻滅させる(失笑される)──そんな経験を僕はこれまで何度も味わってきた。
──あれは前の会社にいたときだ。井口先輩から使いパシリのようなことを頼まれた僕は……
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井口「おい、明日部。午後の会議で使う資料、小池さんに頼んでおいたんだけど、それを取りに行ってこい。それくらいならお前でも出来るだろ?」
僕「はい。分かりました。小池さんから午後の会議の資料をもらってきます」
僕はそう返事して、庶務課の小池さんの元へと向かった。
僕「すみません。井口さんから午後に使う資料を取ってくるように頼まれたのですが……」
小池「……」
庶務課の島でキーボードを叩いていた小池さんはこちらを見ることなく、僕を無視して、手を動かし続ける。
そして、つい今しがたまで軽い世間話をしながら、書類を見たり、メールを打ったりしていた他の社員たちは、気が付くと談笑を止めていた。
あたり一帯、水を打ったような静けさだ。
僕「あ、あの、小池さん。今、話しかけてよろしいでしょうか?」
声を少し張り上げ気味にして再度、話しかける。
小池「……チッ……」
……舌打ち……? と思った瞬間小池さんは立ち上がり、ツカツカと隣の島の総合企画調整課の白鳥の所へ向かった。




