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052 湖へ6 ──カプトブレパス2


 僕は自分の持つスキルと、フェネック達の持つ魔法で試したいことがあった。


 今がそのチャンスだ。

 この機を逃さずやってみよう。


 という訳で、カプトブレパスに背を向けて、逃げるようにして来た道を戻る。


 そして、ほどよいロケーションを見つけると──ツー太に横幅5メートル×縦幅2メートル×深さ1メートルくらいの溝を掘ってもらった。

 ちょうど、塹壕のような感じの代物だ。


 次に、その塹壕のバオバブ広場側に、高さ1.5メートルくらいの土塁を築く。


 その後、僕らは土塁に背を預け、カプトブレパスが来るのを息を殺して静かに待った。


 フェネックたちも僕を真似て、身動きせず──警戒心だけを立てて、息を潜める。



 ……僕とヒー太たちと……カプトブレパスしかこの世に存在していないかのような、不思議な感覚が僕の全身を満たしていた。



 ・

 ・

 ・



 やがて、カプトブレパスが【気配感知】の射程に入る、と同時。渾身の【Hate】を放つ。かの魔物がスピードを上げてこちらに迫り来る。ズシンッ、ズシンッという腹の底に響くような足音。大地が揺れ、振動が土塁越しに背部と臀部に伝わる。僕は【Hate】の強度をさらに上げた。

 怒りで盲目にさせ、塹壕に気づかせないようにするためだ。


 程なくしてドシンッ! という内臓を揺らすような重い衝撃が僕の身体を撃ち抜いた。背骨が砕け散るような激痛。続いて、咆哮。穴に落ちたカプトブレパスの空気を歪めるようなたけり声が森の中に響き渡る。


 その雄叫びに動じることなく、ツー太が冷静に塹壕を埋めていく──。

 頭の重いカプトブレパスは頭部と脚部を土に埋められたまま、引っこ抜くこともままならない。


 近くの樹の枝から全てを見ていたハヤナが、“もう出てきて、大丈夫”、と僕らに“念”を送ってくれた。

 【テイム】効果のおかげで僕だけではなく、ハヤナとヒー太たちの間でも、意思の疎通が可能だ。


 僕らは塹壕に降り、カプトブレパスのお尻を【神木の槌】で軽く叩いた。

 一度では青い粒子にならなかったため、もう一度叩く。

 二度目の打撃でカプトブレパスは成仏した。


 ドロップ品は、『ヌーの肉(上)』


 その後も余勢を駆って、塹壕を利用した魔物狩りを色々試してみたかったが、ツー太は魔力切れのようだった。

 ぐったりと項垂うなだれて……心配したシロとヒー太が寄り添うようにツー太に身体を寄せている。



 僕はツー太の頭を撫でながら、今日はこのまま、彼の掘った塹壕跡地で野宿しよう、そう心の中で呟いた。



 ◇



 5センチ先も見えないような夜の森。時おり聞こえる獣の声。


 だけど、ヒー太たちが傍にいるだけで、不安も恐怖も、沸き立つ前に消えていく。そんな不思議な無敵の気分に包まれて、僕はゆっくりと目を閉じた。

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