050 湖へ4 ──ハヤナ
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──バオバブ広場の中央付近。
陽があるうちに、出来るとこまでやっておこう。
そう考えて、早速家づくりに取り組んだ。
まずはツー太に、樹をぐるっと囲うようにして、高さ一メートルほどの土の壁を作ってもらう。
その間、僕は洞の中の掃除と寝床作りに勤しんだ。
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【器用】などのステータスが上がったおかげか、予想外に作業が捗る。
陽が落ち切る寸前。
彼方の森の樹々が夕陽の中へと編み込まれていく中、ツー太特製の土の竈が完成し、ようやく住処づくりが終わりを迎えた。
──その日の夜は早速、竈を使って鍋にした。
材料はバオバブの葉と、昼間に狩った魔物肉。それらを竈に置いた鍋でぐつぐつ煮込む。
煮立ったそれらをバオバブの樹の器に取り分ける。
新しい仲間のハヤブサには取り分を多くしてあげると、“ピィィー!”と嬉しそうな声を上げ、翼でバタバタと宙を叩いた。
夜空を見上げると尖った金属を想起させるような、細い三日月が浮かんでいる。
その淡い光に照らされて、爛々と輝くハヤブサの瞳。
その凛々しい顔立ちが、妙に頼もしいものとして目に映る。
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──翌朝。
耳に飛び込む様々な音と共に夜明けを迎えた。
この広場は、命の気配に満ちていた。
小鳥の囀ずり。
猿っぽい何かを連想させる獣の咆哮。
遠くから聞こえる正体不明の生物が鳴き合う声。
そして、時折吹く風はバオバブの梢を揺らし、無数の葉擦れの音を掻き立てていた。
それらの音がそれぞれに重なりあい、混然とした音を成して広場の空気を満たしている。
山中の洞窟と比べると、随分賑やかな朝だった。
そんなことを思いながら、寝床の中で大きな伸びを一つすると、脊椎の骨が心地良さそうに小さな音を立てた。
目を擦り、朝特有の気怠さと格闘しながら、洞の外へと一歩踏み出す。
すると、ハヤブサが樹上からヒラリ、ヒラリと滑空しながら僕の元へとやって来た。
右腕を伸ばすと、音も立てず、ハヤブサが腕に止まる。
この猛禽をよく見ると、嘴と両脚の爪の部分が透明化し、宝石のようにキラキラと輝いている。
“──【魔物】【ステルス・ファルコン】【レベル1】──最上級の隠密スキルを保有。”
順当に魔物化している。
この子には斥候役として、これからも活躍してもらおう。
僕は新しい仲間を“ハヤナ”と名付けた。
その後、魔物肉を焼いただけの簡素な朝食を済ませると、僕らはさっそく湖方面へと向かった。
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