005 転移 ──【挿絵あり】
──次の記憶は左半身が熱い、と感じたことだった。
パチパチという火が爆ぜるような乾いた音が聞こえる。
快・不快のどちらかというと、「快」な音だ。心地いい。。。
このまま意識を懸濁させたままでいたいと思ったが、肩や腰、そして後頭部に痛みと冷気を覚えた。
瞼を開けると、僕の左に焚き火が見える。
その炎は緑色をしていた。
周りを見回すと、前後左右は岩の壁……遠くには、ぼんやりとした白い光が見え──。
ひんやりとした空気が僕の鼻孔を擦った。
……洞窟の中?
まだ意識がはっきりしないまま、僕はヨロヨロと立ち上がり、半ば無意識で白い光に向かった。
眩しさに目を慣らしながら、ゆっくりと進む。
白い光の中に……徐々に……水色の空と……白い雲が見えてくる。
そして……洞窟の外に一歩足を踏み出して、僕は辺りを見渡した。
脳に飛び込む情報は、夢とは決して思えない──大自然の圧倒的な臨場感。
僕は今、どこかの山の斜面にいるらしく、山の麓には深い緑が広がっていた。
その森の中央には、湖が静かに横たわり──。
森のはるか向こうは土か岩、そして所々に樹が点在するだけの、荒れた大地。
アフリカのサバンナを思わせるような光景だ。
そのサバンナの遥か先には、高原が朧に見える。
その向こうには──空と雲しかない。
視線を近くに転じると、洞窟周辺は灌木が疎らに生える────土と岩が剥き出しの雄々しい斜面。
──頭上には──太陽がギラギラと輝いていた。