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049 湖へ3 ──EAL




 ◇ ◇ ◇




 バオバブ広場はいつものように猿やリスなど、様々な動物で賑わっていた。

 それらの動物が樹の高い位置から警戒するようにこちらを見ている。


 居住場所は既に決めてた。バオバブの樹のうろだ。


 広場の中を散策するような足取りで、周囲をキョロキョロしながら歩き始める。



 点在しているバオバブの木はどれも巨大で、高さは──日本にいたとき住んでいた二階建ての木造アパートの──四倍分はありそうだ。

 幹も太く、直径10メートルはゆうに超えそう。

 

 中々に威圧感のある光景だが、見上げれば青空が開けている。

 足もとの草も、この広場の中だけは草丈が低く歩きやすく、どちらかと言えば開放的で心休まる場所だった。



 そんなことを思っていると、程なくして広場中央付近に到着。

 一人プラス六匹住まいにちょうど良さそうな、洞つきのバオバブが目に留まる。

 【暗視】スキルで洞を覗くと、今回はヒョウが1匹、中にいた。

 しなやかな肢体をくるりと丸め、横になって寝息を立てている。呼吸する度に上下する、白く柔かそうな腹部が目を引いた。


 綺麗な毛並みだ。

 これが魔物であれば、いい毛皮を手に入れられそうだ。でも、強そうだから戦うことはしないけど、とかなんとか。取り留めのないことを思ったり。



 というか、それはさておき、【神木の槌】は魔物にしか効果を発揮しない。

 なので、ヒー太たちに戦ってもらうことも考えたが、今回は、それは次善の策にすることに……。


 僕は今まで使い処が分からなかった謎スキル、【EAL】※を使ってみることにした。


※【EAL】:Enter and Leave ──僕が部屋に入ると、中にいた人々が黙って外に出ていくスキル。


 失敗したら、フェネックたちに後を任せる算段だ。

 僕の目から見て、今のフェネック達は五匹とも狼並みに強かった。その上、魔法も使える魔物なのだ。万に一つも、ただのヒョウに負けるとは思えない。


 大きな深呼吸をひとつして、【EAL】を発動させる。

 そして、ゆっくりと、足を忍ばせるようにして、洞の中に入ってゆく。

 すると、それまで寝ていたヒョウがハッとした感じで頭を上げて、僕とほんの一瞬だけ目を合わせ──。

 その後、すぐに目を逸らし、逃げるようにコソコソ僕の脇をすり抜けて、そそくさと洞の外へと出ていった。


 戦わずして勝てた!……そんな安堵を感じたが、同時になんとも言えない寂しさと哀しさが、胸の内にせり上がる。

“これって人間としてどうなんだろう……?” と当然思う……。



 そんな疑問をかぶりを振って追い払い──僕は住処作りに意識を向けた。



 人としての在り方はどうあれ…………どんな人間だって、どうにかこうにかして、生きていかねばならない……。



 ──どう在りたい?


 ──どう生きたい? 


 ──もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは本当にやりたいことなのか?



 そんな高尚なことを──低スペックの弱者が、考えている余裕はないのだ。



 ◇


 ◇


 ◇

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