047 湖へ1 ──メッセージ
洞窟に戻ると、僕は久しぶりに【神木の木盤】を手に取った。
……すっかり………存在を忘れていた…………。
レベルが上がって、フェネックたちとも仲良くなれて、ここでの暮らしが楽しくなり始めて……。
……【神木】のことなど、完全に意識から抜け落ちていたのだ。
ないがしろにして申し訳ない……そう心の中で謝って、大よそ一月半ぶりに見た【神木の木盤】には……
“──湖へ向かえ”
それだけの簡潔なメッセージが浮かんでいる。
僕は今更ながら、【神木】の存在に思いを馳せた。
そもそも、この【神木】とは何なのか?
ジャミング症候群のズレた思考回路ゆえか、健常者であればまず真っ先に疑問に思うことを、僕は今の今まで、何とも思うことなく過ごしてきた。
今更だけど、足りない頭で、想像を巡らせ考える。
普通のラノベ的なドラマツルギーであれば……【神木】とやらが何らかの使命のために、僕をこの世界に転移させたとか、そんな感じの筈だ。
でも……その使命って……何なんだろ?
そんなことも気にはなったが、気づいたことが他にもあった。
僕はこれまで、この世界を一人で──自分の努力と能力だけで──生き延びてきたような気になっていたが、実のところ、神器と各種スキルに生かされているだけの存在だということに……。
この期に及んで、その事実に気が付くと、僕の心は恐怖一色に染め上げられた。
【神木】のメッセージを無視するのはまずい!
いつから【神木の木盤】はメッセージを発していたのだろう!?
もう手遅れかもしれない……。
というか……【神木】様はさぞ、お怒りになられている筈だ……。
底の知れない不安感と恐怖心が、僕のチキンハートを軋ませる……
今からでも行こう……いや、行かねば……。
湖には何があるのだろう……
普通に考えて、喜ばしいものではないはずだ。
不吉な思いを胸に抱きながら、僕は湖に向かうことにした。
といっても、この洞窟から一日で辿り着けるような場所ではない。
僕はバオバブ広場に拠点を移すことにした。
──その夜、さっそく、荷造りを始める。
なんだかんだで、ここでの生活も数か月。
ドロップ品やら自分で作った日曜品など、細々とした品々が気づくと随分増えている。
蔓で作ったお手製のカゴをフェネックたちにも背負わせて、荷物を半分持ってもらう。
出発は明朝──。
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