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046 登山2 ──不安材料


 ──額の汗を拭って、周囲の景色を見渡した──。


 視界になだれ込むのは、圧倒的な大自然。

 端的に言って絶景だった。日本の都会暮らしではまず見れない。


 その雄大な自然美を前にして、心に清涼な──感慨めいたものが吹き抜ける。



 ふぅと小さく息を吐き出して、額の上に手をかざし、四方を確認。



 ──太陽を背にした北側には──今いる山よりも遥かに高い山が雄大な姿を湛えている。


 

 ──東と西にはサバンナのような光景が広がっており、その先には空の色と溶け合うような海が見えた。

 よぉく目を凝らして見てみると、北東側のサバンナの向うに一つ──そして、その先の海の境にもう一つ──街のような人造物が陽炎の中で揺れている。


 

 ──南側にはいつもの森、その中心には湖。

 湖と森の向こうにはサバンナ。その先は淡い灰青色はいあおいろの高原が威容を湛えてそびえていた。

 そして、その頂には石造りの城のような構造物が、置物のようにポツネンとたたずんでいる。



 城のような構造物や、街のような人工物を目にして、僕は“やはりこの世界には人がいて、文明があるのだ”、と今更ながらに確信出来た。

 【言語理解】なんていうスキルを持っているのだから、当然と言えば当然だろう。



 そして…………今後のことについて思いを馳せる。


 もし……僕がこの世界の人と出会ったとして、その人々は……僕を受け入れてくれるのだろうか?


 僕はジャミング症候群──不出来な脳味噌は他者との間に絶え間のない軋轢を生み落とす。

 それに加え、【Hate】や【プレコックス感】など……人に不快感を与えるだけのスキルを大量に保持していることも、大きな不安材料だった。


 ここに来たとき、これらのスルキレベルは2しかなかった。

 それが今では10になっている。こんな人間をこの世界の人々は受容出来るのだろうか?


 ちなみに、【Hate】も【プレコックス感】もレベルが10に達した時点で、属性付与が出来るようになっている。

 僕が直接触れた人や魔物などに、“Hate”や“プレコックス感”をまとわせることが出来るのだ。


 はっきり言って、人間相手であれば社会的な死を与えることの出来るスキルだ……。


 小中高生であれば、激しい虐めに遭うことは避けられない。

 就活中の学生であれば、内定を取ることは絶望的。

 社会人であれば……運がよくて左遷…………最悪は……きっと離職を迫られる。どこかの誰かさんのように……。

 そして、既婚者であれば離婚され……独り身であれば、一生独身。生涯孤独だ……。



 ──そんな暗く黒い思考を頭の中でぐるぐると流しながら、フェネックたちと持参したお昼ご飯を無言で頬張る。


 そして、周囲を見渡して、あらためて気付いたことがもう一つ。


 遠くに超大型の生物がいることが、目視で分かるのだ。


 例えば……今いる山の北側にある大きな山──そのいただき付近に巨大な鳥が弧を描いて飛んでいるのがはっきり見える。大きさはセスナ機くらいだろうか。


 そして、ここから南西方面のサバンナには、電車一両分ほどの大きさのイグアナのような生物がゆっくりと移動しているのが視認出来る……。


 この世界は脅威に満ちていて、自分は比較的安全な初心者ゾーンにいるんだということを、僕は初めて理解した。

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