045 登山1 ──一区切り
──十日後。
レベル上げに勤しんだ結果、ヒー太達のレベルは速やかに5まで上昇。
僕は再び、ヒー太たちに対して【Ignorance】付与の実験を行うことにした──。
──結論から言うと、格下の魔物相手であれば、完全なステルス性を発揮した。
おかげで今まで以上に、安全かつ効率的に、魔物狩りが出来る。
この他にも、フェネックが魔物の青い粒子を浴びようとする、謎の行動に関する実験も行った。
こちらも結論からいうと、あの粒子を浴びることで魔物の力を取り込み、経験値を獲得してレベルアップに至るらしい──と推察された。
ヒー太とカー子に粒子を浴びる動作を止めさせたところ、この二匹だけレベルの上がりが遅くなったのだ。
再現性の確認のため、シロとツー太とミー太に同様のことを行うと、今度はこの三匹のレベルが上がらない。
どうやら、次からは自分も率先して、青い粒子を浴びたほうが良さそうだ。
──そして、僕はここを一区切りと考えた。
洞窟の入口に立って、山の頂上を仰ぎ見る。
灰色の岩肌が延々と続く急峻な斜面。その斜面にしがみ付くように生えている灌木たち。
山の頂の向うには、真っ白な雲を従えた青い空が広がっていた。
一度、この山の頂上まで登ってみよう。
何か新しい発見があるかもしれない。
今の自分たちのレベルであれば、多少強い魔物が現れても大きな脅威にはならない筈だ。
僕は突然の登山を思いつき、その日の夜に準備を整えると、いつもよりも早く寝床に就いた。
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──翌朝。
僕らは日の出とともに洞窟を発った。
手と足を使って、這い蹲るようにして登攀してゆく。
ゴツゴツとした岩肌は夜の冷気を多分に含み、指が千切れるような冷たさだった。
──無心で黙々と山を登る。
ありがたいことに、息が切れることはなかった。レベルアップの賜物だ。
日本にいた頃の自分であれば、十メートル登っただけでギブアップをしていただろう……。
そんな中、ヒー太たちは僕を先導しようと、跳ねるように軽快に山の斜面を駆け上がる。
そんな彼らの後ろ姿を見ながら、“頼もしい……”と僕の口角も少し上がる。
──やがてお昼に差し掛かる頃合い。
僕らはあっさりと、山の頂に着くことが出来ていた。
山頂に立って、ふぅと大きく一呼吸。
──額の汗を拭って、周囲の景色を見渡した──。




