037 魔界の生活1 ──フェネック
──翌朝。
目が覚めて、洞窟の外に出てみると、昨晩捨てた筈のスイカの皮が無くなっていた。
何かの小動物が、食べたのだろうか?
心に微かな引っ掛かりを覚えながらも、その時はそれ以上気にすることなく、僕の思考は他へと流れた。
──今日も、森へ行かねば。
ということで、この日も早朝から森へ赴き、水集めと湖方面への探索に勤しむ。
森の中では、【メタル・マンティス(レベル1)】というカマキリの魔物とエンカウント。
【Ignorance】と【隠密】の併用で、サクっと倒す。
──やはり格下の魔物であれば、両スキルの併用で、完全なステルス状態になれるようだ。
ちなみにカマキリは、“鉄製の鎌”を落としてくれた。帰路のための道標──そのための草刈りにとても便利だ。
そして、今日も今日とて太陽が真上を少し過ぎた頃、僕は森を引き上げることにした。安全第一。
◇
洞窟に戻ると、昨日とまったく同じことをする。
スキルを放ち、木槌を振り回しながらのイメージトレーニングだ。
落ちていく太陽を見届けて、昨日のスイカの余りを口にする。
そして、スイカを食べ終えると、僕は皮を洞窟の外に放り投げた。
その後、何とは無しに外を【暗視】スキルで見ていると、小さなキツネのような生き物が五匹ほどやってきた。とても愛らしい姿をしている。
【鑑定】を使うと、『フェネック』だった。
お父さんとお母さん、それに子供が三匹の五匹家族のようだ。
可愛い! なんとかこの子たちを懐かせることは出来ないだろうか?
そんなことを思いながら、この日は就寝。
◇
◇
◇
──翌日も、早朝から森へお出かけ。
帰り道、【気配感知】に禍々しいオーラを放つ魔物と二度ほど遭遇。
【Ignorance】と【隠密】を使い、【神木の槌】でサクリと仕留める。
この日倒した魔物は──フライング・ラビット(レベル1)と、レッド・サラマンダー(レベル1)。
入手したドロップ品は、それぞれの魔石と“毛皮”と“トカゲ肉(小)”
毛皮は寝床に敷いて大切に使わせてもらうことにしよう。トカゲ肉は勿論、食料だ。
◇
洞窟に戻り、日課になりつつあるスキルと木槌の型稽古を行う。
そして日が落ちると、僕はさっそく、トカゲ肉を焼いて食べた。
……味は何もしなかった。
本当に無味なのか、僕が味覚音痴の所為なのかは分からない。
いずれにせよ、塩か醤油が欲しいところだ。
トカゲ肉を食べ終わると、【Ignorance】を纏って外に出る。
そして、フェネックのために切り分けたトカゲ肉を、剥き出しの岩肌にそっと置いた。
──しばらくすると、フェネック親子がやって来る。
彼らが肉を取ろうと近づいてきたところで、僕は【Ignorance】を解除した。
フェネック親子が、驚いて逃げていく。
逃げた先ではフェネックたちが、諦めきれないといった様子で、トカゲ肉を見ている。
僕は少しずつ、後退りして、お肉のある位置から離れていった。
すると、ちょうど十メートルくらいの距離が開いたところで、お父さんフェネックがダッシュでこちらに駆けてくる。そして、肉を咥えて奪い去り、家族と共に闇に紛れて何処かへ消えた。
僕はしばらく、エサをやり続けることにした。
フェネックたちが、いつか懐いてくれることを期待しながら。
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