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003 Prologue2 ──幸、あれかし


 自主退職を決めた足立区にある、創業150年の中小企業──その古びた自社ビルの4階。


 22時過ぎのエレベーターには僕ひとり。


 その中で小さく溜息を吐いた後、『1F』のボタンを押す。

 

 旧式のエレベーターのくだる速度は異常に遅い。

 それは階段で降りても変わらないくらいのスピードだ。


 頼りなく揺れながら下降していく閉塞された空間。

 その中で過ごす時間は1分にも満たない筈なのに、何故かそれ以上に長く感じる。


 落ち着かない1分弱をやり過ごすと、小さな衝突音とともに、足元がグラリと揺れて、エレベーターが停止した。



 何かが崩れるような音を立てながら、扉がぎこちなく開き──。

 ホッとしながらビルの外に出ると────冬空に浮かぶ白銀の月が僕を見下ろしていた。



“──これまでのことにさようなら。この先、何かいいことがありますように。──我が人生に幸あれかし!”


 そんなことを心の中で呟きながら、荒川の堤防に向かって人気のない夜の町を歩く。



 

 ──街灯もまばらな暗闇を、ゆっくりとした足取りで歩いていると、不図ふと、幼少時代の記憶が蘇る。



 ──幼稚園の頃、篠原涼子似の先生に、「好きです! 大人になったら僕と結婚して下さい!」みたいなことを言ったら心底嫌そうな顔をされたっけ…………。


 そんなことを思い出し、再び心の中で呟いた。



“──ついでに足立区住まいの全ての人に、幸あれかし!”

 


 夜空を見上げると、月の光に掻き消されそうな──。

 ──頼りなく瞬く、冬の星。





“願わくば…………この星空の下にいる、全ての人々に幸あれかし……!”

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