025 サバイバル7 ──再発防止
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随分な時間が経過したように思える。
仰向けになり、天上に映る滲んだ炎の陰を見ていると、いつの間にか、心は穏やかに凪いでいた。
絶望も不安も、炎の揺らめきに溶けたかのように薄らいでいる。
冷静になれたというよりも、どちらかというと、諦めとか開き直りといった心持ちに近いだろうか。
そんな精神状態で、僕は『死んだ理由』と『今すべき』ことを考えた。
『死んだ理由』は、脳内で勝手に生じる記憶の自動再生──フラッシュバック──により、周りの状況が見えなくなってしまった所為だ。
職場ではフラバ対策として、一時間おきに、スマホのアラームを鳴らすようにしていた。
こうすることでフラバのみならず、過集中に気がつけたり、To Doリストを見直す等の時間を作っていたのだ。
だが、今はスマホはないし、うまい代替手段も思い付かない。
僕はこの問題を一度、棚上げすることにした。
社畜時代の経験を振り返るに、失敗が起きる度に、再発防止策を講じることに意味はなかった。
対策を講じることで、自身の行動が制限されて、好機を逃したり、逆に新たな問題を発生させたり……結局のところ、時間と労力の無駄になることが多いのだ。
──なので、『今すべき』ことを考えよう。そこに時間を費やそう。
そのためには、まずは現状確認──。
パンは残り一つ。
水は皮袋の中に……コップ一杯分くらいだろうか。
…………これがなくなれば、本格的な飢えと渇きに襲われる。
最悪の想像に背筋が震え、額に汗が滲みだす。
今日の夜をなんとか堪えて……飲食の問題をどうにかしなければ……
僕は祈るような気持ちで【神木の木盤】に視線を向けた。
木盤は黙して語らず、焚火の爆ぜる音だけが、静謐の隙間を埋めていく……
胃が捩じられるようにキリキリ痛む。
洞窟の外に目を向けると、暮れ泥む夕陽が目に飛び込んだ。
何はともあれ、今夜の防寒対策に力を入れなければ……。
今夜を乗り越えないことには明日はない。
そう自分に言い聞かせ、外に飛び出し、付近の低木の枝をひたすら集める。
集めた枝を、寝床に敷く。チクチクするけど、地面に直に寝るより、遥かにマシだ。
簡易な寝床が完成すると、僕はもう寝ることにした。
今日はこれ以上、体力を消耗しないようにしよう。
今は明日に備えて疲労を少しでも解消することが肝要だ。
明日することは、①枯れ草の回収、②水の確保、そして……③食料調達……。
やることがたくさんある。
特に②と③が……心配だ。水と食料……簡単に見つかるものだろうか……。
はっきり言って自信がない……。
前の世界ではサバイバルどころか、キャンプすらやったことがないのだ……。
不安が入眠を妨げる。
だが、パチパチと爆ぜる焚き火の音に誘われるようして…………いつしか僕は、微睡の中へと落ちていった……




