024 サバイバル6 ──人間廃棄物
日が完全に落ちている。
やってしまった……。
辺りは既に真っ暗だ。
延々と続くフラッシュバックのせいで、周りの状況に気が付けなくなっていた。
焦って元の洞窟を確認するが、既に大雑把な方角すら分からない。
風はとうに冷たく、首筋を伝う汗が気化熱を生みだし、容赦なく体温が奪われる。
慌てて頭のスカーフを解き、汗を拭った。
心なしか呼気も白く感じられる。
ヘタに動くと、状況をさらに悪化させるのは確実だった。
この場に留まり、朝まで待つしかない…………。
空には濃密な勝色が広がり、星々が頼りなくに瞬いている。
刺すような寒さと、すべてを呑み込むような暗闇が、僕の心を弱気にさせる。
僕は寝ないように、兎に角、その場で足踏みを続けた。
だが、昨晩もまともに眠れていない、憔悴しきった僕の意識と肉体は……強い眠気の前に容易に屈した。
◇ ◇ ◇
──気が付くと、左半身がなんだか熱い。
僕はまた、最初にいた洞窟に戻っていた…………
また死んだのか……もう勘弁してくれよ…………
自分みたいなジャミング症候群が、こんな大自然の中で生きていける筈がない……
実力と成果がすべてのメリトクラシーな世の中で、僕はどんな場所でも敗者で在り続けた落ちこぼれだ……
人並み未満の能力しか持たない……社会のお荷物……人生の落後者……“人間廃棄物”だ……
普通の人が当たり前に出来る事が何一つ出来ない……器用さも……運動能力も……注意力も……何もない……。
そんな人間が、こんな苛酷な世界で生き延びれるのか???
絶対に無理だ!
自棄と銷魂が、脳の中を一瞬で満たす。
絶望感で胃がキリキリと痛み、呼吸は浅い。
僕は水筒の水を一口含むと、毛布の上に身体を投げ出すようにして突っ伏した。
静寂の中、焚き火の罅ぜる音だけが、洞窟内に反響している。
瞑った目から、押し出されるように涙が溢れた。
奥歯を噛み締め、嗚咽を堪え、壁を睨んだ。
壁に映る炎の揺らめきが、涙で滲んで……光と影が溶けてゆく。
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