023 サバイバル5 ──フラッシュバック2
──こんな感じで玉突きのように、昔の記憶が連綿と自動再生され続ける……。
『──一昨日の大きな地震のこと』
『──その時、白鳥に抱きついた宮内さんの少し嬉しそうな表情』
『──宮内さんと仲のよい、飯島さんのこと』
『──飯島さんといえば、ある朝、エレベーターで乗り合わせになった時のこと。
僕の顔を見るなり、心底嫌そうな顔をして、大きな溜め息を付かれたっけ』
『──嫌そうな顔といえば、ある日の朝礼での岡本課長の表情。
────“残念ながら、人間というものは平等ではない。
その存在が千にも万にも値する人物がいる一方、寧ろいない方がいい、という人間もいる”
──僕の目を真っ直ぐに見据えながら、訓話を繰り出す課長の目力……』
『──目力といえば、高校時代、リア充女子の筆頭だった池之端さん』
『──池之端さんと言えば……大学一年の秋……。
無性に焼き肉が食べたくなり、チェーンの焼肉屋で一人焼き肉を敢行した時のこと。
隣の予約席に突然、池之端さんが現れた。
えっ!? と思って、ビックリしてると、彼女の後ろから見知った顔がゾロゾロ出て来る……
……その後、徐に母校の同窓会が始まって…………』
あれは本当に気まずかった……
『気まずい……と言えば、ある日の職場。トイレの個室に入った時のこと。
……その直後、先輩の井口さんと後輩の白鳥が、雑談しながらトイレに入って来て。ドア越しに聞こえた二人の会話は、こんなもの。
井口「しかし、明日部の奴、本当にクズだよな。仕事は出来ないし、外見もブサイクだし。しかも最近、ハゲてきたじゃん。俺、あんな風に生まれてこなくて、本当によかったわ」
白鳥「いやぁ……でも悪い人じゃないですよ。だから……そんな言い方はやめましょうよ」
井口「いやいや、悪口じゃなくて、事実を言ってるだけだし。ハゲも事実だし」
白鳥「そんな、酷いですよ。人の外見のことをアレコレいうのは。……でも、明日部先輩の場合……なんて言うか……ハゲの中でも正解の方のハゲっていうか……だから、いいと思うんですよねぇ」
“正解の方のハゲ”って何だよ? と思いながらも、白鳥の優しさが妙に心に滲みいって……個室の中で嗚咽を漏らしそうになったっけ……』
『嗚咽と言えば……』
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こんな感じで、一度何かを思い出すと、連鎖的に様々な記憶が蘇り、止まらなくなる。
時には、自分自身も完全に忘れていた遠い昔の記憶を思い出し、びっくりすることも屡々だ。
そして、思い出すことの99.99%は恥ずべき悲しい……辛い出来事ばかりだった。
自分がしたこと、されたことは、全て脳内に保管されていて、決して消えることはない。
こうした記憶は呼んでもいないのに、ある日突然、怪鳥のようにやって来て、僕の古傷を突き、抉り出すのだ……。
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ふと、“草を刈りにくいな。なんだか辺りが暗い気がする……”そう思って腰を上げ、辺りを見回し、やっと気付いた。
日が完全に落ちている。
…………やってしまった…………。




