表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/193

023 サバイバル5 ──フラッシュバック2


 ──こんな感じで玉突きのように、昔の記憶が連綿と自動再生され続ける……。



『──一昨日の大きな地震のこと』



『──その時、白鳥に抱きついた宮内さんの少し嬉しそうな表情』



『──宮内さんと仲のよい、飯島さんのこと』



『──飯島さんといえば、ある朝、エレベーターで乗り合わせになった時のこと。

 僕の顔を見るなり、心底嫌そうな顔をして、大きな溜め息を付かれたっけ』



『──嫌そうな顔といえば、ある日の朝礼での岡本課長の表情。

 ────“残念ながら、人間というものは平等ではない。

 その存在が千にも万にも値する人物がいる一方、むしろいない方がいい、という人間もいる”


  ──僕の目を真っ直ぐに見据えながら、訓話を繰り出す課長の目力……』



『──目力といえば、高校時代、リア充女子の筆頭だった池之端さん』



『──池之端さんと言えば……大学一年の秋……。

 無性に焼き肉が食べたくなり、チェーンの焼肉屋で一人焼き肉を敢行した時のこと。

 隣の予約席に突然、池之端さんが現れた。

 えっ!? と思って、ビックリしてると、彼女の後ろから見知った顔がゾロゾロ出て来る……

 ……その後、おもむろに母校の同窓会が始まって…………』


 あれは本当に気まずかった……



『気まずい……と言えば、ある日の職場。トイレの個室に入った時のこと。

 ……その直後、先輩の井口さんと後輩の白鳥が、雑談しながらトイレに入って来て。ドア越しに聞こえた二人の会話は、こんなもの。


井口「しかし、明日部あすべの奴、本当にクズだよな。仕事は出来ないし、外見もブサイクだし。しかも最近、ハゲてきたじゃん。俺、あんな風に生まれてこなくて、本当によかったわ」


白鳥「いやぁ……でも悪い人じゃないですよ。だから……そんな言い方はやめましょうよ」


井口「いやいや、悪口じゃなくて、事実を言ってるだけだし。ハゲも事実だし」


白鳥「そんな、酷いですよ。人の外見のことをアレコレいうのは。……でも、明日部先輩の場合……なんて言うか……ハゲの中でも正解の方のハゲっていうか……だから、いいと思うんですよねぇ」


 “正解の方のハゲ”って何だよ? と思いながらも、白鳥の優しさが妙に心に滲みいって……個室の中で嗚咽を漏らしそうになったっけ……』



『嗚咽と言えば……』


 ・

 ・

 ・ 


 こんな感じで、一度何かを思い出すと、連鎖的に様々な記憶が蘇り、止まらなくなる。

 時には、自分自身も完全に忘れていた遠い昔の記憶を思い出し、びっくりすることも屡々(しばしば)だ。


 そして、思い出すことの99.99%は恥ずべき悲しい……辛い出来事ばかりだった。


 自分がしたこと、されたことは、全て脳内に保管されていて、決して消えることはない。

 こうした記憶は呼んでもいないのに、ある日突然、怪鳥のようにやって来て、僕の古傷をつつき、えぐり出すのだ……。



 ・

 ・

 ・



 ふと、“草を刈りにくいな。なんだか辺りが暗い気がする……”そう思って腰を上げ、辺りを見回し、やっと気付いた。



 日が完全に落ちている。







 …………やってしまった…………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ