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020 サバイバル2 ──日常でついつい口にしてしまう、『もう、死にたい……』


 ──気が付くと、左半身がなんだか熱い。


 パチパチという、火が爆ぜる音が聞こえる。

 そして、腰や肩、後頭部に痛みと冷気を感じた。

 瞼を開けると、左側には緑色の炎を上げる不思議な焚き火が目に映る。

 

 また死んだのか……。

 このループはいつまで続くのだろう……。


 僕は半身を起こし、皮袋(小)を手に取り、水を一口、口に含んだ。



 無理だ……ジャミング症候群の僕が……こんな大自然の中で生きていける訳がない……

 何故、こんな目に遭わないとけいないんだ!

 僕が何か悪いことでもしたのか……



 もう嫌だ……疲れた……


 前の世界では、“ジャミング症候群”のせいで人並みに仕事を出来ず、その為に恥辱にまみれた日々を過ごし、異世界に来たら来たで、やはり同じように障害のせいで苦しめられる。


 なにかチートスキルでも身についたのか! と喜び勇めば……ろくでもないスキルばかり…………。


 そもそも【HUP】*って、なんだよ!

 こんなスキルが、一体何の役に立つんだっ…………!


*【HUP】──Hang up Phone。電話をしても、電話に出てもらえないスキル。




「はぁ……」


 溜め息しか出ない。


 やがて、僕は何もかもがどうでもよくなり、無力感の内に目を閉じた。



 気が付くと、僕の意識は深淵へと沈み込み、知らぬ間に僕は眠りのとばりの中に落ちていた。



 ・

 ・

 ・



 ――深夜。


 異常な寒気で目が覚めた。

 地面の冷えがダイレクトに身体に伝わり、骨の髄が痛むように冷えている。


 慌てて身体を起こし、緑の焚き火に手をかざす。


 先ほどまでの自暴自棄が、きれいさっぱり吹き飛んだ。

 そんなことを言っていられないほど、死の恐怖が肉薄した極寒だった。


 日常でついつい口にしてしまう、『もう、死にたい……』、そんな言葉にはまだまだ“遊び”の部分が残ってる。

 本当に“死”を間近に感じると“死にたい”なんてことは思わない。本能は全力で生きようとする。それが人間の本質らしい。


 今、目の前に謎の緑の焚き火があって、本当によかった。

 この炎がなければ、凍死している……。


 それにしても、こんな砂漠のような土地で、昼夜の激しい寒暖差は当然のこと。

 考えずとも分かりそうなものなのに、想像力が働かない。

 これもジャミング症候群の哀しいさがだろうか……。


 

 僕は焚き火にあたりながら、夜が明けたらすべきことを考えた。



 まずは防寒対策だろう。

 衣・食・住の“住”から手をつけよう。

 水・食料への不安もあるが、夜ごとにジリジリと体力を奪われることは兎に角避けたい。


 

①体調悪化

 ↓

②視認性悪化&判断力低下

 ↓

③勘違い増加&不注意増加

 ↓

④取り返しのつかないミス

 ↓

⑤死


 こんなフローチャートが頭に浮ぶ。


 ジャミング症候群罹患者が仕出かす大失態の背景には、体調不良が潜んでいることが多いのだ。


 僕は焚き火のそばから離れることなく、寝ずに朝まで過ごした。



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