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012 明日部太郎5 ──ジャミング症候群


 ──二十六歳の春、僕は何かで“ジャミング症候群”、という言葉を知った。

 なんとなく、その言葉が気になり、インターネットで検索し、意味を調べた。




 吃驚した。


 症例が、あまりに自分に当てまり過ぎるからだ。


 インターネットの辞書サイトには、こう説明されていた。





~・~・~・~・~・~・ジャミング症候群・~・~・~・~・~・~


・現代の奇病。有病率は0.1%。

・2010年 イギリス人医師──フランク・ジャミング──によって発見される。


・脳の神経細胞の糖鎖の一部に、異常が見られる疾患。

・疾患の原因──感染的か、生得的か──は未だに不明。


・根本的な治療方法は、確立されていない。

・この糖鎖の異常により──脳内各部の連携が妨げられ、脳の活動にアンバランスを引き起こす。


・引き起こされる具体的な症状は──脳の実行機能、メタ認知、ワーキングメモリ、手続き記憶、コミュニケーション能力、想像力、非言語的コミュニケーション能力、表情認知能力、感情制御能力、協調的運動能力の著しい低下など。

・また、これらに加えて、反復的常同的な行動へのこだわり、フラッシュバックなども、よく見られる症状である。


・以上の症状は、罹患者の社会性を低下させ、社会生活に著しい支障をもたらす。


・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・



 難しいことは分からないが、自分のことを言われているのだと、すぐに確信出来た。



 思えば、僕は計画的に行動することが、異常に苦手だ──<実行機能>。

 自身の体調不良等にも、気づけない──<メタ認知>。

 忘れ物や失くし物は、しょっちゅうだ──<ワーキングメモリ>。


 異常に不器用で、習い事をさせられても、楽器を弾けたり、字が上手になることはまずなかった──<手続き記憶>。

 周囲の人間と良好な関係を、築くことも出来ない。彼女いない歴=年齢どころか、友だちいない歴=年齢だ──<コミュニケーション能力>。

 不図ふとした自分の発言で、相手を激昂させたことは数知れず──<想像力>。


 というか、人の表情や仕草から、相手が今どんな心情でいるのか、推測することがまったく出来ない──<非言語的コミュニケーション/表情認知能力>。


 感情を暴発させることも屡々(しばしば)だ──<感情制御能力>。

 運動神経も皆無。小学校、中学校、高校と……体育の時間はいつだって地獄だった。サッカーの授業では、ボールがどうか僕の方に来ませんようにと、グラウンドの隅で祈るばかり──<協調的運動能力>。


 子供の頃からいつも一人ぼっちで、傍から見ていて何が楽しいのか分からない、意味不明な一人遊びに興じていた──<反復的常同的な行動>。


 過去の嫌な出来事を突然思い出すことも非常に多い……<フラッシュバック>。

 念のためですが、ジャミング症候群という疾患は、現実に存在しません。

 この小説の中だけに存在する架空の疾患です。

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