010 明日部太郎3 ──社会のゴミ
ほかにも拙いところはまだまだあった……。
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────指示を適切に理解出来ない(異常な勘違いが多い)。
例えば、上司Aに「午後2時から生活用品売り場の棚卸をする」と言われたとき……
普通の人は午後2時前に生活用品売り場に集まって、棚卸の手伝いをする筈だ。
だけど僕は違った。
“へぇ~、上司Aさんは午後2時から棚卸をするんだ~”と思うだけ。“自分も手伝いに行かなきゃ”という発想が浮かばない……
そのときは、結局その時間、僕は自分の仕事(作業)をしていて、後になって上司Aに怒られて、同僚たちには「なんで、ちゃんと来なかったの?」と唖然とされた。
────物事の全体像を把握出来ない。
一つ一つの作業の背景や、最終目標を想像することが出来ず、どうでもいい細部にばかり拘って、いつまで経っても仕事が前に進まない。周囲の顰蹙を買った挙句……最終的には……。
「もういいよ! 面倒くさい! 代わりに俺がやるよ!」
上司や先輩が僕の仕事を肩代わり。
僕は一つ仕事(作業)を失い、その度に、職場での居場所が狭くなる。
────感情の制御がうまく出来ない。
予定がほんの少し変更になっただけで、すぐにパニックを催した。
変更に合わせて、その後の予定を組み立て直す……なんて器用なことは全くできない。
怒鳴られたり、嗤われたり、嫌がらせを受ける度に、怒りに我を忘れ…………その日一日、まったく仕事(作業)が手に付かない。
家に帰って寝床についても、いつまでたっても寝付けない。
その日の嫌な出来事が、脳内で何度も何度もフラッシュバックされるのだ。
結局、寝不足のまま次の日を迎え、翌日の不注意やケアレスミスに繋がった。
そして上司の怒りをさらに買い、同僚にからは蔑まれ──職場でますます孤立する……。
……僕は社会人として、あまりに未熟な振る舞いが多かった。
その他、ダメな部分を挙げていくと、本当にキリが無い……。
一年ちょうどで、このスーパーを首になり……僕は転職を余儀なくされた。
自分が社会のゴミであることに……ようやく気付けたのは、二十三歳の春だった。