第７０５話：楽園
「こんなことが出来るようになりました！」
シシリーさんが両手を腰に当てて立って居る。
試し切り用の藁束は背後にあるんだけど何するの？
徐に右手を上に掲げて指パッチン。
パチン
ズドドドドド！！！
無数の斬撃が藁束をズタズタにしたんだよ！？
「まあ、それほどの威力は無いんですけどね・・・」
何をどうやったの！？
「見えない分身で滅多切りにしただけですよ」
すごいんだよ！
「リズ様のようにはいきませんね。ギガントサイクロプスは倒せませんでした・・・」
使ってる武器のせいかな？
「わらわは別に武器など使ってないのじゃ」
リズのは参考にならないんだよ。
それとも魔法を使った方がそれっぽくなるかな？
「え？なになに？指パッチンで藁を斬ればいいの？」
リズがやった時はクロノスの大迷宮のギガントサイクロプスが砕け散ったんだよ・・・
「なるほどね・・・それくらいなら出来るかな？」
やっぱりシャーリーも人間じゃ無いんだよ・・・
「まだ人間だよ？ギルドカード見る？」
シャーリーがギルドカードを取り出してヒラヒラと揺らしている。
別に見せなくてもいいんだよ・・・
シャーリーがくるっとその場で回転すると服装が変化したんだよ。
剣聖マカロンちゃんだね。武器を持ってないけど・・・
「じゃあ、行くね！」
シシリーさんと同じ腰に手を当てたポーズからの指パッチン。
すると藁束がバラバラになってふわっと舞い上がったかと思うと粉々になったんだよ？
え？
何が起こったの？魔法？でも、グラニテちゃんじゃ無いよね？
「剣聖は伊達じゃ無いってことだよ！」
詳しい解説を希望するんだよ！
「こう力を貯めてズバッとした後にバーンってやって・・・」
何を言ってるかわからないんだよ・・・
リリスはわかった？
「多分こういう感じですの！」
パチン
ズガシャー！！！
なんでみんな出来るの！？
「ここなら、わがあるじでも出来ると思うのじゃ」
こうして・・・ぱっちん？
へにょんっ！
音が出なかったんだよ・・・
でも、藁は粉々になったんだよ。って言うか、明らかに精霊さんがやってたね・・・
まあ、楽しかったからいいんだよ！
精霊さんにはお礼のお菓子を出してあげた。
「ありがとうございました！おかげで冒険者としてやっていく自信が持てました！」
シシリーさんならＳランクも夢じゃ無いと思うんだよ？
「最後にこの技を受けていただけませんか？」
シシリーさんがリズに話しかける。
「うむ、どーんとかかってくるのじゃ！」
今度は普通に刀を持ってるね。両手でしっかりと構えてるんだよ。
『『『『『三千世界！！！』』』』』
シシリーさんの体がブレて見えたと思ったら、リズが呆然としてるんだよ？
「コイツはたまげたのじゃ・・・」
ボトッ・・・
リズのおててが取れちゃったんだよ！？
お薬！すぐにかけなきゃ！
「この程度問題無いのじゃ」
リズは落ちたおててを拾うと自分でくっ付けちゃったんだよ。
「この世への在り方が違うはずなのにどうやって切ったのじゃ？」
多分、シャーリーでもリズのことは切れないんじゃ無いかな？
「並行世界にまたがって斬撃を多重コピーしました」
なんかもう何を言ってるのかさっぱりわからないんだけど、凄すぎなんだよ！
「斬撃の威力自体はそれほどでも無いんですけどね・・・」
でも、リズを切っちゃったのはびっくりどころじゃ無いんだよ！？
-人の子がそこに至るのは看過出来ない-
久しぶりに空間に轟く声、そして崩れ落ちるシシリーさん・・・
お臍のあたりから真っ二つなんだよ・・・
「しかし、その攻撃すら私には効きません」
真っ二つになったシシリーさんが消えて無傷のシシリーさんが現れる。
「あなたが何者かは知りませんが、人の可能性を否定するのですね」
何度ともなく、切られては復活するシシリーさん。
-多重世界に偏在しているのか-
神様の声だよね？
最近聞いてなかったから上手くやってると思ってたのに・・・
-やはり、この世界は危険だな-
あちゃあ、とうとう世界丸ごとまで目をつけられちゃったんだよ・・・
-そもそもの原因を排除する以外方法がないのか？-
-この街、まるで世界の縮図ではないか-
ドラゴンや悪魔の人、色々な人を集めすぎちゃったのが原因なの！？
それとも世界中の食材を集めちゃったのがダメだったのかな？
-なぜ楽園を目指す？-
楽園？別にそんなものを目指してるわけじゃないんだよ？
ただ、私はのんびりと暮らしかっただけなんだよ・・・
-あらゆる種族が暮らし、あらゆる食材が溢れる地。すなわち楽園-
ぐ、偶然なんだよ？
