第044話:オークション
そう言うわけでオークション会場にやってきたのじゃ。
妾はデイツーの助手ということで一応それっぽく着飾ったのじゃが、
いかんせん片腕なので別な意味で目立ってしまうのじゃ。
会場の中にいるのはいかにもといった感じの貴族っぽい連中なのじゃ。
警備の騎士団も正規の王宮の騎士のようじゃし、
どうやら非合法な競り市というわけではなさそうじゃ。
さて、我が主は無事に宿についたかのう?
今頃はおそらく旨いものでも・・・
いや、我が主のことだから堅パンと塩スープじゃな・・・
倹約家なのは褒めるべきかもしれんが質素すぎるのじゃ。
ニニアはどうせ串焼きじゃろう。
尤も妾もいつも芋ばかりじゃがな、
好きなものは仕方がないのじゃ。
事前に目録に存在しない飛び込みでの出品なので、
他に目当てのものがある客には売れないかもしれんのじゃ。
「さて、いよいよ始まりますよ」
オークションが開始され、美術品や伝説の武器などが出品される。
そのどれもが結構な金額で落札されていくのじゃ。
美術品はよくわからんが、あの聖剣は偽物じゃないかや?
でも、先日の件もあるしのう・・・
最近の聖剣はあんなもんしか無いのかのう?
オークションも半ばまで進み、
いよいよ妾の出番なのじゃ。尤も妾は見ておるだけじゃが・・・
「これは数百年前に流通していた古代の金貨」
そう言ってテーブルの上に金貨を並べる。
「それが今回はなんと10枚も手に入りました」
そう言いながら、嘘にならない範囲で話を盛りに盛る。
「さる高貴な方が密かに隠し持っていたとか、さる王族の隠し財産だとか」
まあ、妾は龍神の王じゃし、高貴じゃし、王族でもあるので嘘じゃないのじゃ。
「現在の金貨に切り替わるときに全て鋳つぶされたとも聞きます」
これは知らんが、通貨が変わるときとはそう言うものらしいのじゃ。
会場の客たちもざわめいておる。
そんなに騒ぐほどのものかのう?
今の金貨とは模様が違うだけなのじゃ。
まあ、金の含有量は今の金貨よりも上じゃが、
そこまでは違わないはずなのじゃ。
わからんのう。
そもそも、貨幣としての価値は今の金貨の方が上なのじゃ。
当時は銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚だったのじゃ。
金貨1枚は銅貨100枚。今の銀貨1枚分の価値なのじゃ。
最も当時は銅貨数枚で飯が食えたから、
単純には比較ができんのじゃが・・・
それでも今の金貨ほどの価値はない気がするんじゃがのう・・・
世の中もずいぶん変わったようだし、見ていて飽きないのじゃ。
妾を連れ出してくれた我が主には感謝の言葉もないのう。
デイツーの説明が一通り済んだら、司会が開始を宣言する。
「それではこの幻の金貨10枚。1500からお願いします」
--1550--
--こっちは1600--
--1800--
この程度ではギルドの買い取り価格以下なのじゃ。
--1900--
--2000でどうだ!--
「2000、他ありますか?」
まあ、こんなもんかのう?
もう一声欲しいが欲張っても仕方ないのじゃ。
--2500--
--3000--
む、この2人怪しいのじゃ。
--3500--
--5000!--
特に今一気につり上げたこのデブ。
ちょっと様子がおかしい。
「では、5000でよろしいでしょうか?」
--くぅ、ご、5100--
--7000!!!--
なんか訳ありじゃな?
相場を無視しためちゃくちゃな金額じゃ。
「他ありませんね?それでは7000で落札です!」
それにしても、ずいぶんと値段が上がったのう?
デイツーの報酬を踏まえて2500程度で良かったのじゃが、
コレは少しおかしい金額なのじゃ。
7000枚もの金貨が巾着袋に収まるわけもなく、
木箱にぎっしりと詰め込まれておったのじゃ。
それを係員が数えて確認中じゃ。
まあ、こんな会場でごまかす奴おらんとは思うが、
おそらく規則でそうしないといかんのじゃろう。
係員が確認し終わった木箱をバスケットに収納する。
(ひそひそ)デイツーよ、今5100まで頑張ったのは?
「(ひそひそ)7000の方ではなく?」
あやつはどうせ私腹を肥やす豚じゃろ?見ればわかるのじゃ。
大方、教会か王宮の上層部じゃろ?
しかし、5100で諦めた方は貴族としての気品は感じるが、
見た目が他よりも少し劣るのじゃ。
とは言え、良い素材の上等な服を着ておる。
落ちぶれつつある上級貴族とみたのじゃ。
「さすがですね、彼はプロシュート侯爵」
どうにかして話が出来んかの?
「以前は貴族の中でも上から数えるような方で、会うことはまず無理でしたが・・・」
なるほど、落ちぶれた今なら不可能ではないというわけじゃな?
もっとも、今すぐにというわけにもいかんじゃろ?
今回の王都滞在中には無理じゃろう。
それは後々のこととして、まずは我が主と合流したいのじゃ。
「そうですね、私の出品物も全て終了したので戻りましょう」
我が主も待ちくたびれておるじゃろう。




