第1071話:始まりの森
「まずは聖女ちゃんの採寸ね!」
そう、シャーリーが連れて行ったのはマーガレットさんのもと。
おそらくは冒険者用の装備を整えるため。
「次はククリのところだよ!」
採寸から戻ってきたリーシャをすぐに鍛冶工房へと連れていく。
「ところで聖女様はどんな武器を使うんだい?」
そんなククリの質問にポカンとして困惑する。
「武器は使ったことがありません・・・」
まあ、普通はそうなんだよ。
「それじゃ適正からだね?」
「まずは一般的な剣から」
いきなり剣を渡されても振り方もわからないと思うんだよ?
まずはシャーリーが見本を見せてみるべきだと思うんだけど、
シャーリーの剣捌きは参考にならないと思うんだよ・・・
「こう振り上げて、こう振り下ろす」
シャーリーが簡単な動作で剣を振る。
それをリーシャが真似をする。まるで似ていないんだよ・・・
「才能がないのでしょうか?」
うーん、まずは魔法でいいんじゃないかな?
いつもの愚者の杖を用意するんだよ。
「レベルを上げてから武器の扱いを教えたほうが上達が早いね」
どっちにしてもマーガレットさんの服が出来ないとダンジョンには行けないんだよ?
「まあ、クロノスでレベルを上げてから改めて女神の試練場ですね」
なんて言うか、普通とは順番が違うんだよ・・・
私のダンジョンは初心者のための練習用なのに・・・
「そんなわけでもう少しお待ちください」
それまでの間にこれを読んで欲しいんだよ。
「これは?『錬金術師の黒猫ちゃん』って錬金術の教本?」
そうなんだよ。
まずはこの本の通りに作業してみて欲しいんだよ。
「わかりました!」
まずは薬草の採取からだね。
「空中神殿の農場で栽培されているのでは?」
もちろんそうなんだよ?
でも、それが普通だと思っちゃダメなんだよ。
「どういう事でしょうか?」
ここ空中神殿は普通じゃないんだよ。
「なるほど・・・」
だから、普通の状況でも正しく作業出来るようになってほしいんだよ。
「それでは、まずはどうすればいいのでしょうか?」
とりあえずはどこの街でもいいけど近くの森に行ってみるんだよ!
そんなわけで、手っ取り早くやってきました。近くの森です!
「ここは?」
コモンズの街の近くの森なんだよ。
「始まりの森ですね・・・」
始まりの森?ここは近くの森なんだよ?
「女神リーゼロッテの活躍の第一歩すべての始まりの場所だと聞きました」
そう言われれば確かにそうかも?
この森で薬草の採取をしたのが始まりだね。
「これで合ってますか?」
違うんだよ。葉っぱの先っぽに注意して確認するんだよ。
「とがっていますね」
先っぽがとがっているのはポポロ草なんだよ。
この少し丸まっているのが薬草なんだよ。
「これでしょうか?」
そう!それなんだよ!
「これが薬草の採取・・・」
こういう作業はとても大事なんだよ。
これを続けることによって、私は鑑定のスキルに目覚めたんだよ。
「鑑定ですか?」
鑑定と収納のスキルはとても大事なんだよ。
でもね、何もかも自分で出来なくてもいいんだよ。
自分に出来ないことは出来る人にお願いすればいいんだよ。
だから私は魔物の討伐はしないし、服も作らないんだよ。
「なんとなくわかりました。自分の使命を果たせと・・・そういう事ですね?」
そして、聖女に認定されたリーシャなら、きっとすごいお薬が出来るんじゃないかな?
「それが私の使命という事でしょうか?」
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
でも、結構確率は高いと思ってるんだよ!




