第1053話:お風呂上りにはもちろん
「ところで我が神よ、ベルベットの扱いはどうするのだ?」
扱いって?
「元姫なのであろう?であれば姫巫女騎士団に入れるのか?」
ああ、なるほど。
「しかし、あの様子ではシャーリーと引き離して大丈夫とは思えん」
じゃあ、聖女のお付きってことにしようか?
「それが無難であろう」
今もベルベットはシャーリーに抱き着いてお風呂に入ってるしね・・・
「それにしてもこのお風呂はいい香りがしますね」
ここはりんごのお風呂なんだよ。今度ミカンのお風呂も作ろうか?
「それは私じゃなくて、果物のミカンが入ってるんですよね?」
もちろんなんだよ!
「このお風呂は街のお風呂屋さんとは違うんですね」
りんごのお風呂は私のおうちにしかないんだよ。
ほかにもリズ専用のお風呂とかもあるけど、絶対に入っちゃダメなんだよ!
「リズ様に叱られるのでしょうか?」
そういうわけじゃないんだけど、普通の人だと入ると死んじゃうんだよ・・・
「え?」
電気風呂はしびれすぎるくらいの強さだし、滝風呂も押しつぶされるほどの強さなんだよ・・・
「リズ様はそれで大丈夫なんですか?」
なんせ最強のドラゴンだからね。
「わらわだって、たまにはこうしてのんびり湯につかることもあるのじゃ」
いつの間にかリズが隣でお酒を飲んでるんだよ・・・
「あの、それは?」
透明なお酒だから多分セイシュなんだよ。
「わらわのために作ってくれた『真・龍殺し』なのじゃ!」
多分酒精が強すぎて普通の人が飲んだら死んじゃうんだよ・・・
「エベレスト!ちょっと来るのじゃ!」
リズに手招きされてエベレストがざぶざぶとやってくる。
「なんでしょうか?」
そういえば、エベレストはリズとはどういった関係なの?リズの子供じゃないんだよね?
「親戚のおばあ・・・じゃなくてお姉ちゃん?」
おばあちゃんって言おうとしたんだね?
「さすがに転んだ程度で死ぬのはどうかと思うのじゃ・・・」
そういえばリズはレベル1の状態でもステータスはすごかったんだよ?
それなのにエベレストはステータスが私と同じ最弱状態だったんだよ・・・
「手っ取り早くレベルを上げるとするかや?」
そう言うとエベレストをお姫様抱っこしてどこかに行っちゃったんだよ・・・
まだエベレストの装備も出来てないんだよ?大丈夫なのかな?
「女神様、そろそろのぼせてしまいそうです・・・」
じゃあ、そろそろ上がろうか?
「お風呂上がりのミルクが楽しみなのだ!」
何でお風呂上がりだと牛乳がおいしいのかな?不思議なんだよ・・・
「トリアはどれを飲むの?」
サナはイチゴの牛乳を選んでるね。
「私はメロンの牛乳なのだ!」
みんなが思い思いの牛乳を選んでる。
私はもちろんりんごの牛乳なんだけど、シャーリーは新作を用意してたみたいなんだよ。
「聖女様、これは何なのですか?」
オレンジ色をしてるからミカンなのかな?
それともニンジン?
「柿の牛乳だよ」
それは想定外だったんだよ!?
「柿とは?なんでしょうか?」
そういえば柿はどこで見つけてきたんだっけ?いつの間にかあったんだよ・・・
「これはナッツ大陸のヘーゼル王国で手に入れた果物だよ。生のまま食べたりドライフルーツにするんだ」
シャーリーが見つけてきたのか、道理で心当たりがないわけだよ・・・
「でもね、これで完成じゃないんだよ!」
そういってシャーリーが来るんと回転するとグラニテちゃんの姿になってるんだよ!
「そして、これがグラニテちゃんのグラニテの魔法!」
柿の牛乳が蒸発して雲になって雪になったんだよ!?
「ただグラニテを作るだけじゃなく演出にも凝ってみました!」
もはやシャーリーのすごさが変な方向に向かってるんだよ・・・
「サラサラしてて、シャクシャクしてとっても冷たいです!お風呂で火照った身体がすっきりとします!」
これは飲み物に近いグラニテなんだね。
「とてもおいしかったのですが、体が冷えてしまいましたわ。聖女様にぬくもりを分けていただきませんと・・・」
うん、思った通りだね。
ベルベットがシャーリーにすりすりしてるんだよ。




