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第000話:プロローグ
ひるるるるるるる・・・べしゃん
薄汚れたぼろきれのようなものが落ちてきた。
どこから?
空の彼方であれば原形をとどめていないだろう。
辺りに木は生えていない。
ここは見渡す限りの草原だ。
何かが落ちて来るような場所はない。
それなら、飛んでいた鳥が落とした?
鳥が運ぶにしては少し大きいような気がする。
「それ」を運べる鳥がいるとしたらかなりの大型だろう。
もしくは、魔物や魔獣といった類であれば、運搬も可能だろう。
しかし、空を見上げてもそのような生物は存在しない。
そもそも今夜は新月だ。月は出ていない。
鳥であれ魔物であれ空を飛ぶのには適さない。
どこからともなく「それ」は落ちてきた。
夜明け前の、真っ暗闇の丘の上の草原に。
「それ」は動かない。
ただそこに佇んでいる。
しばしの時が流れ、朝日が「それ」を照らし出す。
「それ」はようやく動き出す。
起き上がり、両手を伸ばす。
欠伸をしながら、のびをする。
「それ」は・・・どうやら人らしい。