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大海の鯱、井の中を知らず  作者: 異端(ヰタン)
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回想七話 イェルミ、蠢動


~草原、崖付近~




崖の裏、詰まり崖の頂上に通ずる道の始まる場。


そこに尋常じゃない程の殺気を醸すザギが到着した。


(ここでもあの忌まわしい空間に細工されるような力を感じる...)

「革命軍の幹部ごときなのに、中々厄介な奴め、天界に送ってあげようかしら。」


ザギの両腕上腕が変形する。右手首はガトリング機関、前腕横からは口径10円玉程の銃口が横並びに突き出す。

そして左腕はスコープとサーモカメラを搭載した器具に変化した。


(居た...)


木々の向こう側にサーモカメラに赤く映る人影が見えた。


蟀谷(こめかみ)に連発、それで仕留めちゃお♪」


ザギが左手で右手のガトリングに手をかける。


(あぁ~人を殺める時ってほんっと最っ高...♥️

撃つわよ?ホントに撃っちゃうよ?ハァハァ...)



カチッ、カチッ、カチカチカチカチ...

(あれ?反応しない...って、えぇ!?)


ガトリング機関の先、詰まりザギの右手首付近がバッサリ切断されていた。


(一体誰の仕業...!?)

ザギの左手のサーモカメラがサーベルに変化する。近接戦闘モードだろうか。


不意に、風が吹き始めた。鋭い風、恐らくは(つむじかぜ)、吹き過ぎた木々の葉がヒラヒラと落ちてきた。


そしてザギの視界を一瞬の内に塞いだその間隙(かんげき)、一迅、風に紛れて剛刃が飛びザギの体躯を掻き斬った。


ザギの僧帽筋辺りから鮮血が吹き出る。

「チッ...お前は...」


吹き荒ぶ風の中心に居たのは、革命軍参謀サルタであった。


「そろそろモロクの機巧(からくり)がバレる頃合いだと思って来てみたら、やはりそうでしたか...」


サルタは持っていた剣の先を地面に少し刺す。すると、風がぴたりと止んだ。


「風が五月蝿(うるさ)いと会話に煩わしいでしょう。貴方は五角天でしょうか。」

(まあ、戦場を動き回る女の子なんて五角天以外有り得ない話だが...)


「フフッ、見たら分かるでしょ?私が只者ではないことくらい」


「成程、一つ解せないのは何故貴方が大砲の妨害を行う者の正体と居場所を的確に知っているのか。

神、天使、悪魔の襲名を行った者は、目視の他の如何なる方法を用いてもその居場所を特定することは不可能となっている筈。それらはどこにでもいて、どこにもいない存在ですから。」


「そんなの、私の目が良いからに決まってるじゃなぁーい♪」

ザギは微笑む。


「腑に落ちないが...まぁ良いでしょう。」

サルタは剣の光沢を確認する。


「見て♪もう傷が治っちゃった、腕もアマルガム仕様だから少し電流を流したら変幻自在だもんね♪」


ザギの右腕が欠けたガトリング機関から通常の手に戻る。


「ほう、面白い仕組みですが...モロクに会いたければまずこの私と遊んでからですよ、お嬢さん。」


「貴方参謀でしょ?戦闘向きじゃないこと丸分かりだよ?^^」

ザギは左手サーベルを天高く突き出し、大腿部を再度膨れ上がらせ突撃の構えに入る。


同様サルタも砂塵を舞い上がらせ、剣を構える。





~王城エントランス~





赤いカーペットが一面に張られた広大なエントランスにて、二人の女戦士が剣を交える。


バキッ!


稲光が走る程の鉄同士の()ち合い、時には疾風怒濤の連撃による応酬、まるでアンジェラとイェルミが織り成す闘いのアート。


銃剣の刃に己の剣を押し返されアンジェラは後ろに飛び、再び体勢を整える。


「ねえ、やっぱり会話しながら闘わない?沈黙の中で闘ってもテンション上がらなーい。」

イェルミは口を開く。


「...闘いの中でべらべらと話すのは無粋だ。」


「だって、攻撃の説明とか私達自身で入れないと見てる人が分からなくなっちゃうじゃない。」


「何を戦闘マンガみたいなことを...」


アンジェラは剣を構え再度飛び掛かる。


「あっ、口が滑っちゃった、」


イェルミは突進してくるアンジェラ目掛け銃弾を一発放つ。


(チッ、銃が厄介だ、無闇に近づけない...)


アンジェラは咄嗟に横飛びで弾を避ける。

当然、イェルミはアンジェラに追従し銃弾を放つ。


(弾を入れ換える様子は無いな...それどころか、実弾の予備も無い。

弾切れを厭わないのか...元から銃は牽制用...?)


アンジェラは横飛びにブレーキをかけ、イェルミとの距離を周りを回りつつ縮めていく。


(一発、二発、三発...来た!弾が止まった!)


アンジェラは一気に間を詰め剣を振り上げる。が...

イェルミがニヤリと笑ったのを目に映し、次の(コマ)では壁に横殴りで叩きつけられていた。


(一体何が起こ...ぐっ...)


壁にぶち当たった側とは反対、左脇腹辺りに鈍痛が走る。


(左脇腹辺りに何かをぶつけられて飛ばされたのか...)

アンジェラは地面に膝をつく。


「やっぱり喋らないとダメじゃない?今の私の攻撃の内容、私が何も教えてあげなかったら多分もう貴方に勝ち目は無いも同然よ。」


イェルミの銃からは白煙が漏れ出ていた。


「くっ...よ、予備が無いのに何故弾切れしない...」


「仕方ないなあ、真面目な女騎士さんに免じて教えてあげる、この銃は、特別製よ。」

イェルミは銃口を上方に持ち上げる。そして素早く横に引いた。すると、床に落ちていた銃弾が物凄い勢いで飛んできた。


「つまり、こういうこと。弾と銃が糸で繋がってるから弾切れはないし、ゼンマイ仕掛けで収集&再装填出来るから弾切れはないってワケ。」


(ならば糸を切る方法で立ち回るか...)

「ふぅ、ご親切にどうも。でも屹度(きっと)後悔することになる、教えなければ良かったって。」

アンジェラはオーラを放ち、剣を前に構え今度はゆっくりと間を詰める。


「貴方、セリフまで戦闘マンガっぽいのね。まあ、この私の銃剣を攻略出来るとは到底思えないけどね。」


パーン...


一発。アンジェラはしっかりと目に捉えていた。そして、銃口へと伸びる一筋の糸まで。


空中を顔目掛け一直線に直進する弾を斜め下に体を曲げて避けた後、糸を剣で下から切り上げる。


ジャキッ!


アンジェラは違和感を覚えた。明らかに糸が裁てていない音であったからである。

その通り、糸は剣をガッチリと止めていた。


「嘘だろ...」


イェルミが銃剣を振り回し、それに連動して高速の銃弾が眼前を移動する。

アンジェラは剣を前に構え防ぐが、能わず後ろへぶっ飛ばされてしまった。


「言い忘れてたけどこの糸は普通の剣では絶対に切れないわ。この糸は先進カーボンナノチューブと特殊モリブデン合金の繊維を合わせたもの。そして、とっておきの私の白い髪を縫い合わせて完成した完璧な強度を持つ糸。」


シュルシュルシュルと銃弾が銃口へ吸い込まれていく。


「カントール家が誇るこのヴァクティニア最高峰の技術の結晶。

簡単に突破出来ると思わないことね。」


アンジェラは生まれて初めて闘いに於いて命の危険を感じた。

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