ー四方山話ー異端の日常
(今日は、今日こそは報告を投稿しないと...私の文を待っている人達が居る限り...)
パカッ(電子機器を開く音)
ご丁寧にホーム画面に追加された小説家になろうのユーザーページのアイコンを震える指で触る。
(今日こそ次話投稿するぞ次話投稿するぞ次話投稿するぞ、皆が待っているのだからな...)
「はいポイント一桁!...いかんいかん、誰も読んでくれてないやん、どうしてくれんのこれ。」
いつも通りあえなく断念。
そしてランキング一位の方の小説を読み分析。
(この方々が一位たる所以はなんだ...)
指を二回ほど下から上へ、下から上へ、一瞥した後自分の投稿ペースに問題があるとの結論に至る...
「1日1話投稿、3日で3話、3話進んで2ポイント増える...」
頭の中で例の音楽がリピート。
(これでは、なろう小説家どころかnarrow小説家じゃないか...)
まあ、報告をつらつらと書いているだけだから小説家なのかさえ怪しい所だが。
等と思いつれども、操觚する気には至れず...
「よし、また明日だ、今日は回想の解析を」
(一体何日ネタを構築すれば気が済むのか...)
これが午前2時の溜め息であった。
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かくいう私は一般人である。
何せ夜更かしが多く、朝起きる時刻は馬車の乗り合わせを吟味した時間ギリギリのボーダーラインになるのが必定、朝ごはんは栄養たっぷりのココア、ソーダ、クエン酸。
朝の用意は歯磨きのみ。
何故か。
白衣を着、準備を整えた状態で寝るという時間削減法に目覚め、さらには全ての実験は部屋に放置してある。
ここにもワンポイント+だ。殆どの実験室は数式放置を禁止しているとは思うが、これの突破方法がある。そりゃあ知らん顔して則を破るのも一つだ。
だが私は、恥ずかしながら生真面目な研究者なのである。
実験室用のシューズを入れる袋がある。そこに計算途中の数式を書いた紙を押し込むのだ。机の横にかけられたシューズ袋がパンパンに膨らみ異様な存在感を醸しているのを見るのはとても高揚する。
当のシューズは何処に置いているのか。
そりゃあ簡単な話だ、掃除用具入れに隠すのだ。半ば研究室は私物、とても高揚するだろう、フライブルグ君。
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目覚まし時計にも一工夫だ。通常の時間よりも30分程時間を早めるのだ。
何故か。
この画期的な方法を是非皆様にも試して頂きたい。
(ジリリリリリリリ!)
私「...」
(目覚まし時計上部突起物に手を伸ばし、再度鳴ることのないよう器用に引っ掛けをかませ押し込む。)
...とその時!
私「...!
マジか。」
時刻は7:30(ボーダーライン10分超え)。
脳が驚きと恐怖で一気に覚め、これから起こる様々な災厄を頭の中で思索し、2分程呆然としていると...
「ああそうかそうか学会。30分早めてたんだそう言えば、畜生、憎いね昨日の私は。」
という風だ。
人類最大の発明が数字なら、これは私史上最大、いや二番目の発明と言っていいだろう。とても高揚するよ。
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朝
上記これ程の研鑽と試行錯誤を積んでも、やはり時間との戦いは熾烈だ。
朝の部屋に設置された自作のデジタル時計の時刻を頻繁に確認しつつ私は朝の任務を遂行す。
歯磨きは案外時間が掛かるものですな。
何せどれだけ急いで磨いたとしても4分は掛かる。
上着のボタンを付けるのにも一苦労。まあ私、不器用なんでね。
朝飯のパンを口にはさみ、ボーダーラインギリギリの7:20に家を飛び出し、最寄りの駅まで自作の車輪運動機をひっ転がす。(約10分)
偶に咥えたパンを道に落とすが、多少の有機物が自然へ還っただけだから気にする必要は無し。
道中、車道横断は計3つ。いくつかルートがあるが、最も速いルートでこれだ。
最新技術の電気を用いて敷設された信号設備が行く手を阻む。
最初に言っておく。"必ず一つは信号の足止めを食らう"と。
私のユニークスキル(信号活性化)がしばしば発動する時はとても高揚する。
駅には私御用達、駅前の運動機置き場がある。しかしそれを挟んで2つ、連動した信号があるのだ。
これが非常に厄介だ。一つ目の信号でほぼ80%引っ掛かる。そして1分半ほど待ち信号が青に変わる。
赤信号の間にキックボードに乗ったあんちゃん、クラウチングスタートの準備をするオッサン諸々がレース前の馬のように待ち構えている。
ここで置き場入り口まで一着でないと即ち馬車に乗り遅れて死す、だ。
入り口の検閲を抜け、空いている場所を探し運動機を停める。そこから出口に向かうまでを青信号の間に二つ目の信号を抜けるのは非常に困難である。
(さて、今日の対戦相手は問題無さそうだな。左上に見える私の進む道と直角に交わる車道の信号が赤になり、眼前約10mの信号が青になればこのキタサンブラック((自作の車輪運動機))でスタートダッシュだ。)
勝利のビジョンは見えた、
往くぞキタサンブラック!
まず左上の歩道の青信号が点滅し赤に変わる。
(来た。レース開始のファンファーレが!)
私はハンドルを強く握り締める。
そして車道の信号も青から黄、そして赤へと...
...とその時!
横に居たオッサンが飛び出した。
(何ィ!?フライングじゃないか...!)
通常、車道の信号が赤に変わり、道行く牛車が止まった後我ら歩道の信号が青になるまで暫しの時間が流れる。この間は待つのがレーサー達の暗黙の了解...の筈だった。
私は敗北を確信し、同時に馬車を一本逃すことになることも確信した。
(型破りだったな...あのオッサン...)
戦意を喪失し4着程で入り口に到着。
猛ダッシュで駅ホームまで走ったが...
眼前をボーダーラインの馬車が走りすぎて行くのをただ見つめるのみだった...
私は考えるのを止めた。
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ということで、十字架も揃って来ましたね。
神様仏様アンジェラ様どうか私に一縷の光を。
とんでもない地雷を置いて...
ー四方山話、異端の日常、終わりー