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大海の鯱、井の中を知らず  作者: 異端(ヰタン)
seen_革命後の日々
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七話 準備段階

会議からそれなりの時が経った。


王城下町は相変わらずの賑わいを見せ、戦争の名残は薄れつつあった。


そして城下町の主道を突っ切る行列。

数人組、独り者、服装性別は様々。

真っ直ぐ王城の入り口へと続いている。


この日は会議で議決された法律新案の発布から一週間が経ち、施行が始まる日である。


行列の正体は各々の会社の買収要請や国営化による収入の安定化の相談。


そして大企業たる新王朝への従属の表明。


王城一階部エントランスにて手続きは行われており既に王朝役員は雇傭試験を終え現在初仕事に励んでいる。


「王城を開けて初日。大盛況も大盛況ね。」


「ここに来る人々は個々の理由を携えて来訪している筈だ。

それが我々に対して善いか悪いかは別としてな。」


サルタとアンジェラが二階部からエントランスを見下ろし会話を交わす。


「ねぇ、あの人達...」


「刺青の集団か。思い邪無しとは言い難いだろう...が、粗方予測は出来ている。

詰まるところ、新法律に不満があり文句を言いに来たのかそれとも来るべき日の為の視察か...」


「私達が革命軍として組織してた頃も度々抗争があったのよねえ、

まあ確かに彼らの経済の命綱である麻薬取引を禁止されて黙ってはいないわよね...」


「こちらから手を出すことは基本的に無いだろう。


...まあ私の予想だと3日後の戴冠式に事が動く。」


見下ろす先では王朝役員が急ピッチで作り上げたあらゆる契約書や保証書にサインや署名が行われている。

そして随時買収金額を役員が書き取り、即時で金銭を払う作業。


「この調子だと、大分長くなりそうだ...」


(戴冠式の準備を明日明後日で行うとするならば兵士や役員にはもう少し骨を削って貰わねばなるまい。)



「じゃあ私は訓練兵の教鞭に行くわ、また後で」


アンジェラは王城裏の訓練場へ続く二階廊下を歩いて行った。


「さて、俺も仕事に取り掛かるか。」

サルタは二階部の視察の時に見つけた書斎へと向かう。


彼はこの書斎を仕事部屋として私物化する考えらしい。


書斎は予めサルタの手によって整然と掃除されていた。


(夜は城の修理業者との面会、そして第一回兵役試験の募集の為の広報委託と忙しい。

今の時間内で兵役試験内容を考えておくべきだな...)


(取り敢えずはコースを3つ鼎峙させる形として...そうだな、予め受験生にはある程度の志望コースを決めてもらい試験内容の段階からコースの差別化を図るか...)


(まずは...)


サルタは自分で用意した簡素な椅子に座り、机に向かう。

そして引き出しから紙を用意しペンをとる。


(まずは単純な兵役コースからだな...)


紙に記し始めたのはサルタの異常なまでの処理速度を持つ脳から弾き出される試験内容の草案の数々。


順序や(ふるい)にかける際のメリット等を瞬時に処理し最善案を紙に記す。


(道具はこちらで用意できる物が好ましいが...まず剣技は心得る必要有りとして銃はどうか...一兵卒にまで配れる代物では無いが、念のため検査しておくべきか。


ミット代わりのカカシは外注する必要有り。また銃捌きの際の的も外注か。いや、手作りでも十分か...?


面接は必ず要るな、出来れば私自ら受験生と接したい所だ。時間が許せば検討...)



(次は役員試験...こちらは元来の筆記、知識を問うテスト形式と面接で問題ないだろう。


そして王城、城下町運営に携わる人員の試験は...)


サルタは買収が確定し国営となった企業のリスト(役員の手書き)をざっと一瞥し、


(コンサルタント系統の子会社も眷族となる英断を下してくれている。運営に関わる専門知識はこちらへアウトソーシングで今のところは良いか...)


(試験に求められるのは人材の薫蕕(くんゆう)を的確に見極めることだ。

ここは人員を割いて精密に点数を出し、合格者の情報は一人一人正確にデータ化するべきか...)


サルタは椅子に凭れ伸びをする。


(そろそろ業者が来る時間だな。)


サルタはエントランスへと下りる。

数人の子供と保護者だろう大人が戴冠式開催のポスターを見ている。


「楽しそうでしょう。」


サルタが話しかけると保護者だろう女性がちらりとサルタを見、暫くの時が流れた後飛び上がるようなリアクションをとった。


「さ、ささささ参謀の方、、」


「サルガタナスだー!」


ポスターを見ていた少年少女がサルタを指差し吠える。


「こっ、こら!呼び捨てしてはいけませんよ、それと人に指を差すのもだめです!」

女性が焦った様子で子供を叱り、サルタにペコペコ頭を下げる。


「いえいえ、子供はこういう時が最も輝く物ですよ。」


サルタは少年少女の目線と合わせるようにしゃがみこみ、


「このお祭りはね、とてもお美しいお姫様が王冠を授かるお祭りなんだ。

お菓子やパレードなんかもあるんだよ。」


「えぇー!楽しそう!ママ、絶対行こうね!」

少年が女性を振り返り偪促(ふくそく)


「はいはいわかりました。」


女性は少年に笑いかける。


「もうそろそろ日も暮れますし、この戴冠式の日に備えてゆっくりお休み下さい。」

サルタは女性に話しかける。


「そうですね。ほら、帰るよ、」

女性は少年少女を携える。


「ご親切に有難うございました。

...あ、あの、政治...頑張って下さいね、家族一同応援してますので...」


女性は一礼し、王城から去って行った。


(戦争、喧騒の日々だが決して忘れてはならないのは温かみか...この国の民はまだ確実に生きている...)


エントランスには役員達と手続きを未だ終えていない人がちらほら居るのみとなった。




✝️





✝️






数分の時が流れ、入り口から建築関係の仕事服を来た男達が礼をしながら入ってきた。


「御依頼を承りました者です。」


「お待ちしておりました。では部屋へ案内します。」


一行はエントランス奥の扉の先にある会議室へと移動した。


「御自由にお掛けください...

ん、貴方達は...」


「覚えて頂いていたとは恐縮です...」

男達は席に座り頭に巻いたタオル、帽子をとった。


「死体回収屋の...」

サルタも席につく。


「恥ずかしながら、とある仮面をつけた男に助けられましてね...こうして会社を設立し軽く生計を立てられる程になれました。」


男達の中の一人が頭を下げる。


「あの方は新王朝の役人であらせられるのでしょうか。実は前王朝の時も度々戦場で見かけたことがありまして...」


また違う男が話し始める。


「いえ、憶測ですが、彼は質屋の店主ですよ。

...戦場で目にされたとは...」


「道化の面をしたスーツ姿の男、そっくり私達を恵んで下さった方です。なんせ一際目立つオーラというかそんなものを発していたもので...」


男達は顔を見合せ相槌をうつ。


(元戦人か...仕えていた王朝が潰れ心機一転質屋を開店する...前王朝はどれだけ敬われていなかったのかが窺えるぞ。)


「そろそろ本題に入りましょうか。」

サルタが眼鏡を指で押し上げる。


「お気づきになられている通り、エントランスの天窓が木端微塵に砕け散っているのと、外壁にも何ヵ所か戦争の痕が残っています...」


「問題ないですぜ、俺らは元死体回収屋!とは大声で言えないけど路地裏の男達の団結は固いんでさ!」


「おい敬語、敬語!」


男が先程喋った男の腕をつつく。


「なーにいってんだ!一度依頼を受けた方はもう商売仲間だぜ、上と下もないって解釈だろ?」


敬語を注意した男が恐る恐るサルタを見る。


「では、3日後の戴冠式までに終われるよう頑張ってくれ。」


サルタは笑顔で応えた。


「あっ、そうだ俺らの会社も買収してくんねえか?

買収といっても金はいらん、ただ、今の不安定な状況を脱するまで必要な時に少し支援してもらいたいんだ。」


男が自分の頭を撫でながら言う。


「了解。眷族企業となれば売上の5%を月々払って頂くことによって金銭の支援、また会社の危機にも対応するよ。」


サルタが側にいた役人に指示を出し契約書を持ってこさせる。


「ではサインを...」


「末永く宜しく頼むぜ。」

男はにこやかに捺印し、王城を後にした。

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