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大海の鯱、井の中を知らず  作者: 異端(ヰタン)
seen_革命後の日々
18/85

四話 hidden_会議へ

王室の視察には思っていたよりも時間を要しなかった。


昼迄小一時間はある。サルタは頭の中で今日(こんにち)のスケジュールを組む。


なんせ政治を司る立場、一分一秒が惜しい。


(徴税と法律の是正...ここを如何にするかが先ずの目標だ。


デーメーテールは頭がキレないという訳では無いが政治には疎い。


それは私も然りだ...が、統率者のお手を煩わせないように事を運ぶのが私の務めだ。


...昼迄の時間は思索に耽ることにしようか。)


サルタは王城の中庭にあたる部分の石の階段に腰を下ろしていた。


「モロク、私は思考に集中するからそこのインミッション小僧をどこかへ連れて行ってくれ。出来れば冥界が好ましいが...」


アドラは例の部屋から持ってきた金塊をまじまじと観察していたが、やがてサルタを睨み付けた。


「じゃあアドラ、取り敢えず城下町に出ましょ、幹部の皆と会えるかもしれないし、、」



「わーったよ。」


アドラは如何にも不貞不貞(ふてぶて)しく立ち上がり、モロクの後ろを少し距離を開けて城下町へと歩いて行った。


「...」


僅かに鼓膜を掠める風の音が妙に心地良く感じる。


今思い返せば革命軍参謀の頃はこんなにも嘯風弄月(しょうふうろうげつ)と言うか、自然に身を投じたことも無かったような気がした。


(この素晴らしい地を二度と戦火の色に染めぬ為にもここは脳の使いどころだ...)


サルタの国造りは前王朝の政治体制を基盤とし、そこから元々自分達が感じ革命に至った法を是正していく単純な物だ。



重税、徴兵、国民を蔑ろにする悪政諸々、当時は様々な鬱憤に苛まれ有志を集めて武装蜂起したもいうもの。


しかし現に政権を握ってみると、細かい所まで手が届かなくなるのも現実である。


「...今度は誰が私の集中を(こぼ)つ...」


頭を垂れ完全に意識の世界での思索に陶酔していたサルタの前に華奢な印象を与えつつも、よくよくみれば(ふく)(はぎ)はふくよかさを感じさせる二本の足、踵を底上げするハイヒールブーツを膝の下辺りまで深履きし、かすかな桃のような甘い香が鼻腔を刺激した。


サルタは頭をゆっくりと上げ(なが)ら目は剽悍(ひょうかん)と、その美しい足の持ち主を確認しようと試みた。


「デ...デーメーテール...」


サルタは一度上げた頭を垂れ直した。


そして一秒程礼をした後、立ち上がり今度はデメテを座らせ自分が立つという構図に持っていこうとした。


「心遣いありがとう、サルタも座って、」


石の階段に二人分の体重が掛かる。


「どうやら考え中だったみたいね」


デメテはサファイアの様に透き通った群青色、それともセルリアンブルーとも言えようかきめ細かな長い御髪を靡かせ、サルタの顔を覗きこむ。


「何故私がここにいるとお分かりになったのですか、」


「さっき城下町でアドラとモロクと会って、サルタの居場所を聞いたのよ。

邪魔...かしら?」


「いえ、私事のプライオリティは国王である貴方の事の次ですので。


...して、ご用件は何でしょうか。」


デメテは端正なその美貌を少し歪ませ微笑みつつ顔を(もとい)に戻し、サルタが何ということなく見つめる中庭の木々へと目を向ける。


「大したことじゃないんだけど、3日後あたりに初会議を執り行うつもりで、


だから、サルタには特に出席してほしくてね、」


「承知しました。」


即答。


「会議の内容はやはり...アンジェラですか...」


「まあアンジェラの安否に関してもなんだけど...


先の戦争には幾つか疑問点を感じてて...」


デメテは親指と人差し指の間のアーチを顎にフィットさせ、如何にも考え込む素振りを見せる。


「"五角天討伐の報告に来ていない者"の存在...


私はアンジェラだと踏んでいるのだが。」


「まあ大方はそうなのだろうけど、アンジェラが居ない限りそれも分からず終いだし...


初会議迄の3日間にアンジェラが帰ってくることを信じるしかないのよねぇ。」


「...」


「ま、取り敢えず3日後の昼過ぎに王室で行うからお願いね、


あっ、私も今日か明日には王城内部に入るつもりだから、」


デメテは立ち上がり、サルタの方を向いた。


「王の務めは苦行でしょう。しかし、私は貴方のお手を煩わせないよう努めますので。」


「ありがとね、頼りにしているわ、」


サルタは立ち上がり、一礼をし見送る。


デメテが中庭を出て見えなくなると階段に座り直したが...


腕時計を見ると時刻は昼を通り越していた。


「飯だ。」


サルタは城下町へ腹拵えに出ようとしたが、思い立つ。


(序でにこの王城の修理費用分の金塊を売りに行くか。)




✝️




空腹がピークに達するとサルタは突拍子もない行動を取ることがある。


例えば革命を目論み、国民有志で組織を作っていた頃である。


城下町での隠密行動では町外れにはよくいるアウトローとのイザコザ等で足止めを食わぬよう予め腹は空かしておくようにしていた。


しかしその日は運悪くサルタ、アドラ含め数人で夜の王城直下の城下町を視察している

時に有象無象のアウトロー達を束ねる首魁の如きグループと鉢合わせしてしまったのである。


王城直下の大規模な城下町にはやはり色々な意味でレベルの高い人間がうろついていることを実感し、相手側も数人ではあったが苦戦を強いられることとなった。


結局、この日は革命軍陣営の勝利となり翌朝には相手の反社会組織の団員らしき者が町の支道に転がっていたのだが、革命軍陣営も痛手を負った。


この時に判明したのがサルタの悪癖だ。

夜を明かす勢いで繰り広げられた喧嘩によりサルタの空腹はピークに達していた。


そこでなんと彼の取った行動というのが、アドラをじっと見つめ(おもむろ)にフォークとナイフを手に持ったかと思えば


「飯だ...」


と一言。その時側に居たヘスティオがサルタの口に鳥の脚を突っ込んでいなければアドラはまんまとサルタにカニバられていただろう...





✝️





✝️





そうこう話している内に、サルタが金塊を両手に抱えて戻ってきたようだ。


サルタは駆け足で城下町へと踏み出した。

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