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私ナタリー5歳の前世は、葉月みなみ19歳だった。

しかも異世界での生まれ変わり。

何より、この世界は恐らく私がプレイしていた『ときめきヴィスルツ魔導学園☆』そのものだ。


溢れ出した記憶と共に興奮してきて、要素を書きなぐる。


まずこの国!ヴィスルツ王国!

ゲームと同じ名前の国、そして魔法が存在する世界観。

何よりゲームタイトルのヴィスルツ魔導学園がこの世界には存在している。

ゲームの設定通り、15歳になった魔力を持つ者たちが通う学校だ。

そこには身分の差はなく、校門をくぐり抜けた瞬間に平民だろうが王様だろうが平等に扱われる。

身分ではなく優れた魔法を使うものが評価され賞賛される場所だ。


次にこの国の王子!私と同じ歳であられる彼の名はアラン殿下という。

ゲームのメイン攻略対象である王子の名も、アランだ。


あとは自分自身の立場だけど……。

ナタリー・ブローニュ……。

信じたくないけど、これって……これって……。


まだぼんやりとした記憶の中におぼろげな姿を浮かべる。


「確か銀髪で、目が青で……容姿・家柄・富の三拍子が揃う公爵令嬢……。アランの婚約者でヒロインに魔法で嫌がらせをして婚約破棄させられるキャラ、いたよね……」


ハッピーエンドでは最終的に魔力を封印されて、島流し……。

そこから先はゲームで描かれていなかったけれど、魔力のない10代の女の子が1人で島に送り込まれれば、その先に幸せなんて見えないだろう。


バッドエンドでは死刑だし、アランルート以外でもろくな運命を辿っていなかった気がする。

正直、そんな当て馬役のこと大して覚えてないけど。

1ルート目以降はそんな当て馬キャラ、流し見だったし。


今思えばなんでもっとちゃんと見とかなかったんだー!!感しかない。

だってその当て馬キャラ……私なんだもの……。


鏡に映った私は、まだ幼いとはいえゲームで見た彼女とそっくり。

お母様譲りのプラチナブロンドと、お父様譲りの真っ青な瞳。


ゲームの紹介ムービーを思い出す。

キラキラとそれぞれのイメージカラーと共に攻略対象を紹介し、『あなたと彼の恋路を阻む存在も!?』なんて煽り文句とともに『公爵令嬢 ナタリー・ブローニュ』ってしっかり書かれていた。


「整理すると、つまり、私は19歳で死んでゲームの世界に転生した。しかもバッドエンドしかない最悪な当て馬キャラに……」


たどたどしい5歳の声で口にして、絶望する。

そう、私は5歳にして未来が明るくないことを知ってしまったのだった。


「ううん! 落ち込むのはまだ早いわ」


『ときめきヴィスルツ魔導学園☆』のストーリーが始まるのは学園に入学する15歳。

なんと、あと10年もある。

これはきっと、神様が神回避しなさいと言ってるに違いない!


「うん! 違いない!!」


心の声を復唱する。

こうしちゃいられないと私は早速作戦会議を開くことにした。

出席者はもちろんナタリーとみなみだ。つまり私1人である。


不思議なことに前世の記憶が戻ったとはいえ、なんというか私はナタリーだった。

知識や経験は2人分、性格もみなみの成分が混ざったように思う。

けれど、根本的なところはナタリーのままで、どこかみなみだった時の記憶は他人事だった。

なので知識はあっても、思考力は5歳そのもの。

好きなものや趣味などもナタリーの頃のまま変わらずだった。


前世ではツンデレショタのジュダくんが好きだったみたいだけど、私はもふもふ獣人さんの方気になるなぁ。

紙の端にオオカミの絵を描きながら、うーんと考える。


どうやったらバッドエンドを神回避できるんだろうか。

そもそもゲーム内で私はアランの婚約者だったけど、私は一度も彼に会ったことはない。

この国筆頭の公爵家であるブローニュ家の娘である以上、いつか会うことは避けられないだろうけど。というか婚約者になる設定だし、否が応でも会うことになるだろう。


いつ会うことになるのか分かれば対策を打てそうなものだけど、ゲームには私たちの婚約について事細かに書いてなかったし、そもそもあったとしても覚えていない。



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