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第六十話 困惑と確信

 初めてされた異性からの告白を通り越してプロポーズをされた春虎は、ふわふわとした心地でレオールに手を引かれて帰宅した。

 

 徒歩だったためか、物音も少なく帰宅した二人を今日は出迎えてくれる者は居なかったが、今はそれが有難かった。

 誰かに合う前に与えられた部屋に行ってしまいたいと思っていたが、レオールがそれを引き止めた。

 

「リアのことで聞いておきたいことがあったのを思い出した。すまないが、後で私の部屋に来てもらってもいいかな?」


 レオールの言葉に、首を傾げながらもそれに承知した。玄関先でそんなことを話していると、人の気配に気が付いたらしいユリウスが顔を覗かせた。

 

「おかえり。遅かったな。何かあったのか……。おい、どういうことだ?」


 ユリウスは、帰宅が遅くなったことを心配し声を掛けてきたが、二人の姿を見て眉間に皺を寄せてレオールに詰め寄った。

 レオールは、ちらりと春虎を見た後に何でもないことのように言った。

 

「ちょっとトラブルがあってな、服が汚れたから着替えてから帰ってきただけだ。なにもない。リアには傷一つないから安心していい」


 レオールの言葉を聞いたユリウスは包帯を巻かれた手を見た後に、春虎の方を見てからため息をついた。

 

「ああ、ハル坊には怪我はないようだな……。だが、顔が赤いようだが何かあったのか?トラブルとは何だ?」

「大したことじゃない。私のプライベートなことだ。それにリアを巻き込んでしまったことは悪いと思っている。しかし、そのおかげというのもあれだが、私は大切な……、いやなんでもない」


 そう言いかけてから、愛おしそうな表情で春虎のことを見つめるレオールを見たユリウスは天を仰いだ。

 

(これは、すごく面倒なことになるな……。明らかに二人の間に何かあったとしか思えない)


 二人の様子から、そう考えたユリウスはなんとしてもこの状況を把握する必要があると考えたが、レオールは口を割らないと考えて標的を春虎に変更することにした。

 しかし、春虎も普段であれば簡単に口を割ることはしないとわかっているが、今はいつもと様子が違っていたため、行けると踏んだのだ。


「そうか、それでハル坊はその服はどこで着替えてきたんだ?よく似合っているが、何かあったのか?俺はお前が心配なんだよ」


 本当に心配そうな表情をしたユリウスが春虎の腕を掴んで逃げられないようにしてからまだ赤い顔を見つめた。

 未だにぼうっとした様子の春虎は、ポツポツと語った。

 

「ごめんなさい。ちょっと、大立回りをすることになってしまって、それで着物が汚れてしまったので、心配をかけないようにするために着替えたのですが、結局は心配させてしまいました」

「それはいいんだ。大立回りと言ったが、本当に怪我はないんだな?」

「はい。僕は大丈夫です。でも、僕の力が及ばずレオールさんに怪我をさせてしまいました」

「レオールは、お前よりも年上の男だ。自分の身は自分でなんとかすればいい。ハル坊はレオールの怪我を気にする必要はない」

「でも!」

「お前は、ハル坊に守ってほしかったのか?」


 言い募ろうとした春虎から視線をレオールに移して、ユリウスは問いかけた。その目は「お前は、自分の身も守れないような男なのか?」と言っていた。

 ユリウスの言いたいことを理解したレオールは、ゆるく首を振って否定した。


「事実私は力が及ばずに、リアに守ってもらった身だ。だが、これからそうならないように努力するつもりだ。大切な人は自分の手で守ってみせる」

「ちょっ!!レオールさん!!」


 レオールの言葉に焦った様子を見せた春虎を見て、確実に二人の中で変化があったことを確信した。春虎から戦闘があったということを聞き出したユリウスは、今のレオールなら口を悪かもしれないと、熱のこもった瞳で春虎を見つめるレオールに標的を変えて誘導尋問をすることにした。


「ほう、大切な人か。レオールは随分とハル坊のことを気に入ったんだな。今までそんな素振りは……、餌付けか?餌付けされたのか?」

「リアの作る食事が美味しいのは確かだ。だが、それだけではない。リアは、ちょっとした仕草や、たまに見せる笑顔が可愛い」

「ああ、分かる。特に、俺たちが旨いって言って食事を食べているのを見ているときに見せるあの表情は可愛いな」

「ああ、あのときに見せる笑顔は可愛い。だが、可愛いだけではなく、戦う姿は美しく格好良い」


 春虎を褒めそやしていたレオールは口を滑らしたがそれをいい傾向とみたユリウスは誘導尋問を続けた。

 

「ああ、分かる。動きに無駄がなく、それでいて力強くもあるな」

「そう、あの見たこともない剣で自分よりも大きな男達を鮮やかな手並みで倒す姿は、まるで冴え冴えと輝く月のようで見惚れた」


(ほう、つまりレオールが原因で戦闘になったということで間違いないようだな。それで、奴は怪我をしたということか。しかし、複数人の男を相手に鮮やかな手並みとは恐れ入った。しかし、これだけではないな、もう少しで事の真相に辿り着けそうだな)


 そう考えたユリウスは追随の手を緩めずに畳み掛けた。

 

「なるほど、その月のような美しさを見て惚れたということか?単純な奴め。意外と惚れっぽいんだな」

「そんなことはない!!私だって悩んださ。知らなかった意外な姿に驚いただけなのではないかとかな。だが、私は故意ではないと言っても見てしまったときに、私が一人の男としてリアのことを好きなのだと、好きでいていいのだと確信した」


 挑発するように言うと、簡単に乗ってきたレオールは感情的になっていたようで更に口を滑らせていった。もう、なんとなくのレオールが何を見たのか予想は出来てきたが、念のために自分の想像した通りのようなことなのか確認するためユリウスは更に続けた。

 

「へー、見たんだ。で、どうだった?」

「!!!そっ、それはその……、白い肌だなっt……」

「わーーーーーーー」


 そこまで言ったレオールの言葉を遮るように春虎は叫んだ。ぼうっとしていたら、なんだか二人に褒められていたたまれない気持ちになっていると、段々とレオールの言葉に熱がこもってきて、とんでもないことを言い出したのだからその先をユリウスに聞かれないように叫ばずにはいられなかった。

 

 それに、春虎が思っていたよりもしっかり裸を見られていたようで更に顔を赤らめてから非難するようにレオールの顔を少し頬を膨らませて睨んでしまってもしかたないと言えよう。

 しかし、ユリウスはレオールの言った白い肌という言葉はしっかりと聞こえてしまったため、混乱していた。


(はっ?しっ、白い肌?ちょっと待て。待て待て待て、俺の想像よりも大変なことになってないか?それって……まさか。ハル坊の秘密を……)

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