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第五十話 晩餐会②

 国王がおかわりの声を上げたことで、争いから一点呆気にとられていた王妃と宰相は我に返った。

 

「貴方!!私が楽しみにしていることを知っていながら、何ということをしてくれるんですか!!」

「そうですよ!!、陛下はいつも自分勝手でマイペースで自分勝手で!!」

「おい!!宰相、何故自分勝手を二回も言う!!」

「大切なことだからです!!」


 揉め始めた三人をどうしたらいいのか、分からずにオロオロし始めた春虎だったが、レオールが落ち着いた様子で春虎に言った。

 

「リア、おかわりを三人にお出しすることは出来るか?」

「フルーツパフェはあれ一つだけでしたの。王妃陛下にお出しした後は、皆さんで食べてもらうようにケースに入れているだけですわ。材料はありますので、急いで準備をいたしますわ」

「頼んだ」

「お任せください。王妃陛下、今から新しいフルーツパフェをご用意いたしますわ。あちらのテーブルをお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」


 春虎の言葉に、瞳を輝かせた王妃は春虎の希望したテーブルの使用を許可し係の者にテーブルの上で片付けるように命令をした。


 春虎は、たすき掛けをしてからテーブルの上に材料を取り出した。眼の前に広がる見たことのないアイスの入ったケースや生クリーム、美しくカットされたフルーツにうっとりとした表情をさせた王妃と宰相は春虎の作業に見入った。

 バッグから取り出せれた、3つのガラスの器の底にクッキーを荒く砕いたものを敷いて、その上にカスタードクリームと寒天を入れていく。その上にフルーツソースを掛けてから、バニラアイスを入れる。その上に生クリームを搾る。

 更に、その上にフルーツソースを掛けてからカスタードクリーム乗せてからバニラアイスとストロベリーアイスを乗せた。その周りに、フルーツを乗せていく。バナナにオレンジ、苺にキウイ、パインにマンゴーとたっぷりのフルーツを飾り付けていく。

 飾り付けた、フルーツの周りに生クリームを搾っていき、最後にフルーツソースをトッピングする。

 完成したフルーツパフェ見た王妃と宰相は、蕩けるような表情でそれを見つめた。

 

「こっ、これは……。何と美しいのだ!!作っている間もワクワクが止まらなかったわ。もう、食べてもいいのかしら?」


 顔を紅潮させながら、瞳を潤ませてホウっとため息を吐きながら王妃は春虎に聞いた。

 春虎は、笑顔で頷きながら完成したフルーツパフェを差し出した。

 受け取った王妃は、それをいろいろな角度から眺めてから生クリームをスプーンで掬って口に入れた。その瞬間、体を震わせてから両手で体抱きしめた。そして、顔を上げて、天井にあるシャンデリアを見つめながら恍惚とした表情で言った。

 

「美味……。この世に、こんなにも美味いものがあったなんて……」


 そう言ってから、フルーツパフェを黙々と食べ始めた。宰相と国王も蕩けるような表情で無言でフルーツパフェを食べ進めた。

 

 フルーツパフェを食べ終えた後に、王妃は春虎に向って言った。

 

「感謝いたします。ここまで美味しいものを提供していただき、私は本当に嬉しく思います」

「ありがとうございます。それで、不躾なお願いなのですか……」

「いいわ。話を聞きましょう」

「ありがとうございます。レオール様……」


 春虎の視線を受けたレオールは一つ頷いてから、話し始めた。

 

「マヨネーズの件です。ビー商店はシェリア嬢が一人で切り盛りしている状態です。そして、マヨネーズも一人で作っています。今回のように大量に注文が入ると対応しきれないのが現状です。そこで提案がございます」

「提案?どんなものだ?」

「はい。マヨネーズのレシピを国で買い取っていただくということです」

「国で買い取る?」

「そうか、国で買い取れば市民にマヨネースのレシピを売り出すことが出来るようになる。つまり、シェリア嬢には今後、売り出したレシピの何割かを入れるということかな?」

「はい。宰相の言うとおりです。いかがでしょうか?」

「陛下、これは良案です。レシピが広がれば、王妃陛下の求める食事改善に一歩近づくはずです」


 宰相の言葉を聞いて、国王は思案顔で瞳を閉じた。そして次に瞳を開いたときに決意した表情で言った。

 

「わかった。ビー商店からマヨネーズのレシピを買い取ろう。そのうえで、レシピを販売し、その利益の二割を渡そう。それでいいな?」


 国王の言葉に宰相は頭を下げて頷いた。

 

「かしこまりました。それでは、早速準備を行い明日にでも契約を取り付けます」

「頼んだぞ」


 レオールの用意した筋書きは、晩餐会で春虎がフルーツパフェを献上し、その際にマヨネーズのレシピを国で買い取ってもらう様に提案をする。そして、そのレシピを国で販売することで、シェリアの負担を小さくするのと同時に、彼女への収入にもつなげるという一石二鳥の筋書きだった。

 

 こうして、マヨネーズ革命はレオールの書いた筋書きのとおりにレシピを売ることに成功して幕を閉じた。


 しかし、ここからスイーツ革命が起こることなど筋書きを用意したレオールも予想はしていなかったのだった。

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