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第四十七話 そして、船長は二度目の恋に落ちるのか?

「ハルトラに私のパートナーとして晩餐会に参加してほしい」


 レオールの言った言葉に、その場の空気が凍りついた。

 そして、一番最初に復活したウィリアムが猛烈な勢いて食ってかかった。

 

「はっ!!何いってんだ?ハルは男の子だぞ。それなのにパートナーって?無理に決まっている!!そんなの駄目に決まっている」

「ハルトラが男の子なのは承知だ。しかし、シェリアの助けになるためには、晩餐会に参加する必要がある。しかし、エスコールする女性もいない状態で参加はできない」

「いやいやいや、そこは一人でいけよ!!」

「こちらの作法では、一人での参加は不可なのさ。妻や恋人、婚約者と行くのが普通なので。そういったものがいない場合は、家族や知人に頼むこともある。しかし、私にはそれを頼める女性がいない」

「だったら、シェリアに頼めばいい」

「駄目だ。彼女では、面が割れてしまう。そうなると、今後彼女が私の相手として周りに認識されてしまう」

「そんなの無理です。無理無理、レオール様のお相手として名前が出るなんて恐ろしくて無理です」

「と、言うことだ。そういうわけで、面の割れていない者に頼みたいが、この中でそれが可能なのはハルトラだけだ」


 レオールの提案に、ユリウスと秋護は面倒なことになりそうだと、頭を抱えた。しかし、シェリアの危機を救うためだと聞いた春虎は、自分が女装すれば万事解決と聞いてしまえば否とは言えない。

 

「わかりました。僕が女装してレオールさんと一緒に行けばシェリアさんの危機は救えるんですね」

「そういうことだ。しかし、ドレスはどうするか……」

「服装については僕に考えがあります」

「わかった。頼んだ」

「ドレスコードとかはありますか?」

「ああぁ。すまん。本来は行く予定はなかったので、調べていない。だが、王妃は基本的に白や淡いピンクを好むから、寒色系なら大丈夫だと思う」

「わかりました」


 こうして、ウィリアムの否定する中春虎の女装は決定した。

 春虎は、着るものの手配をすると一旦自室に戻った。数分ほどで戻ってきた春虎は、「明日の昼までには手配できそうです」とだけ伝えた。

 

 それから、レオールの考えを全員に説明することになった。

 

 まず、シェリアは50瓶のマヨネーズを用意する。そして、マヨネーズを取りに来た城のものに、こういうのだ。

 

 「用意できたのは約束の半分の50瓶です。しかし、これはマヨネーズの提案者である、レオール様の大切な女性からの提案です。約束の残り50瓶については、それ以上のものを会場にお持ちするとのことです」

 

 使いの者は、それで納得しない可能性も考え、レオールが手紙を用意した。

 

「ちょっと待て、大切な女性ってなんだよ!!」

「嘘も方言と言ってだな。そういった方が、相手をある程度牽制出来る。それだけだ」


 レオールの言葉に納得行かないウィリアムではあったが、ユリウスに目で制されて、一旦そのことは置いておくことにして、他に気になることを確認することにした。


「まぁ、それはそれとして……、それ以上のものって、どうするつもりだ?」


 そこまでの説明を聞いた、ウィリアムは不機嫌な顔を直そうともせずに何を用意するのかレオールに聞いた。

 

 レオールは、それを聞いて春虎に向き合い頭を下げた。

 

「すまないが、君が密かに作っているあるものを見てしまった。あれを是非譲って欲しい」

「あれですか?別に隠していたわけではないですし。それに、あれでシェリアさんが助かるなら、全然問題ないですよ」

「しかし、あれを楽しそうに作っている君を見てしまっているとな」

「ふふふ。実は、僕の兄さんがあれが好きで、つい作っているとあの駄目な兄のことを思い出してしまって、楽しくなってしまうんですよね」

「君の兄君は駄目な人物なのか?少し意外だ」

「なんというか、僕が関わらないと完ぺきな人なんですが、何故か僕が関わると途端に駄目な人になってしまうんですよね」


 春虎の困ったような表情を見たウィリアムたちは全員がなんとも言えない表情になったが、秋護はだけは春虎の兄がどの様な人物なのかピンときてしまった。

 

(ああぁ。超絶なシスコンなんだな……。春虎ちゃん、すごく苦労してたみたいだ……)


 こうして、明日の筋書きが全員に説明されたが、春虎はあれでマヨネーズ50瓶以上のいいものとして納得してもらえるのか頭を悩ませたのだった。


 翌日、この日は急遽写しの作業は取りやめにし、今夜の晩餐会に向けて体を休めることになった。

 そして、昼頃になると式紋の上に荷物が届いた。それを受け取った春虎は、代金とお礼の手紙を式紋の上に置き、それが消えるのを確認し後に包みを開いた。

 そこには、要望通りの藍色の振袖一式が入っていた。

 

 包みを解いていると、式文の上に追加の荷物が届いていた。不思議に思い包みを開くと、そこには鬘と髪飾りといった小物類と手紙が入っていた。

 手紙には、「よろしければお使いください。これはいつもご贔屓にしていただいているお礼です」と書かれていた。

 春虎は、心遣いに感謝しお礼の手紙を送ってから、早速準備にかかった。

 

 レオールは夕方には家を出るといっていた。あれの準備は既にできているので、後は身支度のみとなっていた。

 急いでお風呂に入り、それから身支度を始めた。揚羽から貰って影に入れっぱなしにしていた化粧品で軽くメイクをしてから、鬘を被る。送られてきた鬘は、黒いロングの鬘だった。

 サイドをゆるく三つ編みにしてから、それを後ろでひとまとめにする。後ろの髪の毛を上下に分けで、それぞれをゆるくねじってまとめながらピンでとめていく。毛先は見えないよううに内側に入れてピンでとめてから、包みに入ってい白い花の髪飾りをつける。

 前髪は、眉の上ほどの長さで切りそろえられていた。

 メイクと、ヘアメイクが終わったら、振袖を着付けていく。

 藍色の地色に白や薄いピンクの辻が花の振袖に銀糸で織られた帯を立て矢結びにする。

 濃いめの藍色帯締めと薄いピンクの帯揚げを着けてから、全身を見ようとしたが、部屋に全身を映せるような大きな鏡がなかったので、確認は玄関にある大きな鏡で行うことにした。

 草履を履いた後に、もう一度部屋にある鏡でメイクと髪型を確認する。

 見える範囲は問題なさそうだったのでそのまま部屋を出た。

 大きな鏡で全身を見ようと玄関に向かっていると、リビングからちょうどウィリアムが出てくるところだった。

 廊下に出たウィリアムは、振袖姿の春虎を見て固まった。

 急に固まったウィリアムを不審に思った春虎は、ウィリアムの目の前で手をひらひらさせながらどうしたのかと話しかけた。

 

「船長?どうしました?船長~?」


 呼びかけに全く反応しないウィリアムだったが、春虎が覗き込むように下から見上げた途端、顔を勢いよく背けた。

 そして、バクバクと早いリズムで刻む鼓動に「落ち着け!!」と自分に言い聞かせる。

 鼓動は未だ早いリズムを刻んだままだったが、先程目に入った可憐な花のような少女のことを考える。

 

(俺には、ハルトラという心に決めた人がいるのに……。俺は、初めてあった可憐な乙女を好きになってしまったというのか?俺は、こんなに惚れっぽかったのか!?)


 一人混乱するウィリアムの後ろからやって来た、秋護が脳天気な声で言った。

 

「春虎ちゃん。マジカワ。マジお人形~」


 脳天気な秋護のセリフを聞いたウィリアムはもう一度目の前の可憐な少女を見つめてから、手で口元を覆い顔から火でも出るのではないかというくらい顔を赤らめた。

 

(やばい。俺、どんなハルでもきっと好きになるんだ。一目で恋に落ちる……)

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