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第三十三話 アメとムチの飴の方

 翌日も春虎は、ウィリアムたちと一緒に王城に向かっていた。

 昨日からウィリアムの様子が少しおかしかったのが少し気になっていたが、よく考えるといつも様子は変だったと思い直し、気にしても仕方がないと割り切り深く考えるのをやめたのだった。


 城につくと、その日はメイドに案内されて、昨日と同じ部屋に行くと秋護が嬉しそうにしながら春虎を迎えてくれた。


『春虎ちゃん、いらっしゃい~。今日から改めてよろしくね~』

『はい。わからないことがあったら言ってくださいね』


 二人が和やかに挨拶を交わしていると、不機嫌そうな様子になったウィリアムにレオールが話しかけてきた。レオールが話しかけてくるとは思っていなかった、ウィリアムは珍しいものでも見るような顔をした。


「やあ、今日も付き添いお疲れ様」

「なんだ?別に好きでついてきてるんだから、お前に労られるいわれはない」

「そうか、好きで来ているのか。物好きだな」

「すっ、好きって……、俺は別に普通だ。そう、普通だ普通!!」


 急に焦りだしたウィリアムに首をかしげるレオールだったが、ユリウスの残念なものを見るような顔を見てしまいさらに首をかしげるのだった。


 レオールは、提督代理として旗艦に乗ってはいるが、ここまで心を許せるような副官はいないため、ウィリアムとユリウスの関係が少しうらやましくもあった。

 そんなことを考えているうちに、取引のために会議室に来るようにと指定された時間になったため、ウィリアムたちに声をかけて出て行った。


 レオールが出ていったあと、それに続くようにユリウスも部屋を出ていこうとした。

 それに気がついたウィリアムは、昨日のことを思い出し提督のところに行くのかと声をかけた。


「ユーリ、提督のところに行くのか?」


 ウィリアムの問いかけに微妙に嫌そうな表情をしながら、渋々といった感じで肩をすくめていった。


「あぁあ、アノことを言っておかないとな。提督なら言わなくても察してくれるとは思うが、念の為すり合わせておいたほうがいいと思うしな。行ってくるよ」

「そうか、頼んだぞ……」


 他人事のようにユリウスに言うウィリアムのことを半眼で見てから盛大なため息をついて、その肩をガシッと掴み、逃げられないようにしてから言った。


「おい、お前も行くんだよ!!」

「えっ?」

「えっ?っじゃないよ!!お前がゴールデン・ウルフの船長だろうが!!それに、お前の大切なクルーのことなんだぞ」


 ユリウスの言葉で、ウィリアムは「ハルのことは大切だよ、でもそばを離れるのも心配だし……」と、一人ゴニョゴニョと言い出した。


 ユリウスは、「へー、大切ねぇ~」とウィリアムが無意識に口にした言葉にニヤニヤした表情になったが、それに気がつくものはその場にはいなかった。

 ユリウスは、自分が無意識にニヤニヤしていたことに気が付き、咳払いをしてからウィリアムを引きずるようにして部屋を出ていく。

 ウィリアムは、名残惜しさを隠そうともせずに、「い~や~だ~!!」と叫びながらも引きずられていくのだった。


 それを見ていた秋護は、言葉はわからなかったがウィリアムが残念な人だということをその行動から理解した。春虎はと言うと、そんなウィリアムの行動が謎すぎて小首をかしげてそれを見送っていた。


 秋護は、笑いつつも今日の授業内容について聞いた。


『くくくっ、お前のところの船長本当に残……じゃなくて、面白い人だな。言葉が分かるようになったら、更に楽しめ……じゃなくて、船に乗せてもらうためにも頑張らないとだな!!』


 楽しそうな秋護に、釣られるように春虎も笑顔になった。

 しかし、すぐに表情を引き締めてから秋護言った。


『そうですね、言葉が分かるようになれば楽しいと思います。ですが、勉強は厳しく行きますからね?』

『うへぇ~。できるだけ頑張る。でも、頑張った人にはご褒美が必要だと思うんだけどなぁ~』


 ニコニコしながらも、強請るように春虎に言った。

 春虎もアメとムチは必要だと考えてそれに頷いた。


『わかりました。そうですね。何か食べたいものとかありますか?』

『おっ、餌付け作戦か~。そうだなぁ、カレーとか食べたいかも』


 秋護の返事に、思考を巡らせた。

 カレーのスパイスは手に入りそうだと、しかしお米については見かけたことがない。そこで、ナンでカレーを食べることにすればいいと考えてから、笑顔で頷いた。


『わかりました。カレーですね。それでは、日常会話が出来るくらいになったらご用意しますね。なので、頑張ってくださいね』

『日常会話か~。出来るようになるのか不安しかない』

『大丈夫ですよ。発音とか言い回しに違いはありますけど、英語がある程度できればなんとかなりますよ』


 励ますように言った春虎だったが、秋護の自信なさげな表情をみて困り顔になってしまうのを止められなかった。

 そして、少し心配そうにどの程度なのかを聞いた。


『えっと、秋護さん?どのくらい英語わかりますか?』


 春虎は気まず気な感じで、秋護に聞いたが秋護はなにもない天井を見つめながら口笛を吹いて何かを誤魔化そうとした。

 それを、何も言わずにじっと見つめていると、根負けした秋護が口を開いた。


『―――程度』

『えっ?』


 あまりにも小さな声だったため聞き返した春虎だったが、秋護は恥ずかしげに先程よりも大きな声でいった。


『小学生程度です!!』

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