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第二十五話 呪いの効果でダメージを負う

 三人にざっくりと説明をした春虎は、のんびりお茶を飲みつつ二人の仕事が終わるのをまつことになった。


 その間、先ほどの青年のことを考えていた。春虎は、あの青年からこちらに来る直前にどういった行動を取っていたのか聞くことが出来れば、元の世界に帰る手掛かりになると考えていたのだ。

 そのためには、何としてももう一度彼と接触をしないといけないと思っていると、仕事を終えたウィリアム達が迎えにきた。


「ハル、お待たせ。船に帰ろうか」


 そう言うウィリアムに続いて旗艦を後にしようとしたが、春虎はそれが不味いことだと気が付いた。

 ボートに残っている水夫たちに春虎がいる理由を説明する訳にはいかないと考え、結局は来た時の方法で帰ることになった。

 借りた服は、くれると言うのでその格好のまま鋼糸の上を走って船に戻り、急いで元の服に着替えて、ボートが着くのを待った。


 ゴールデン・ウルフに帰ってきたウィリアムとユリウスがキッチンにやってきて、陛下から下った命令について教えてくれた。


「陛下は、ラジタリウスの旗艦のみ上陸を許可、その他の船はそのまま待機。通信施設も貸し出すと言っていた」

「教えて下さり、ありがとうございます」

「いや、ハルにも関係がある話だ。それで、呼ばれた青年の通訳を頼むかもしれないと言っていた」

「そうなんですね。分かりました」

「王宮の学者が通訳出来れば必要ないそうだが、知らない言葉の場合は頼むことになると言っていた」

「ああぁ、それならボクが通訳することになりそうですね」

「どういうことだ?」

「青年の言葉はボクの故郷の言葉でした。なので、王宮の方は知らない言葉だと思います」

「「……」」


 春虎の言葉に、以前の宴での悲劇?を思い出し遠い目をするウィリアムとユリウスであった。


 翌日、ラジタリウスの旗艦を囲むようにしてサングリッドの港に次々と船が入港した。

 ゴールデン・ウルフのクルーは港に着くなり船の整備に取り掛かった。

 本来は、休暇の後に呪いの腕輪探しになるはずだったが、ラジタリウスの件もあるため、船の整備だけ行い、王宮からの命令があるまで待機することになった。


 春虎は、キッチンで暇つぶしにお菓子作りをしていた。

 その匂いに誘われたエルムが、キッチンにふらふらとやってきた。


「ハルハル~、いい匂いっすね。何を作ってるっすか?」

「いま、スコーンを焼いたところなんだ。食べていく?」

「食べるっす!!」


 焼きたてのスコーンにリンゴのジャムとホイップクリームを添えた皿をエルムに差し出した。二人分の紅茶も入れて、焼きたてのスコーンを食べ始める。

 エルムはスコーンにたっぷりとジャムを付けてから口いっぱいに頬張った。


「もぐぐ!!旨いっす!!売り物レベルっすよ、これ!!」


 目を輝かせて、スコーンを褒めるエルムだったが、口の端にジャムを付けての熱弁だった。

 春虎は、世話が焼けるといった感じで、笑いながらエルムの口の端のジャムを指で拭って自分の口に入れて言った。


「ふふふ。褒めてくれてありがとう。でも、口の端にジャムが付いてるよ」

「ありゃ、あまりに旨かったもので、うっかりっす」

「そんなに美味しかった?」

「最高っす!!また、食べたいっすよ」

「それじゃ、また別のお菓子を作った時は一緒に食べようね」

「やったっす~。約束っすよ~」


 新人二人による、和気あいあいとした午後のひと時だった。

 ただし、その光景をキッチンの外から偶然見てしまい、中に入るに入れなかった哀れな男が一人いた。


(ハルが、ぺろって!!ぺろってした!!うらや、じゃない。はぁ、なんで俺、タイミングがこんなに悪いんだ。もう少し前にここにたどり着ければ、俺が舐めてもらえていたはずなのに)


 そう、残念なイケメン船長ことウィリアムが呪いの効果により、絶賛ダメージを受けているところだった。

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