第十話 宴の裏話
時は、少しだけ遡る。
宴というのは表向きの口実で、実際には女王の楽しみの場だったりする。そのため、彼女の気分次第で開かれる、要は趣味の催し物という事は限られた者だけが知る真実だった。
久しぶりの燃料投下の予感に、女王はウキウキ気分で、いつもの隠し部屋へと向かった。
そう、この催しものは女王のためのウホウホタイムなのだ。
そのため、宴の開かれる広間には、覗き部屋が作られ、女王はそこから中にいる観察対象達を、熱い眼差しで見守るのだった。
準備が整い、続々と男達が広間にはいってきた。
今回は、言うまでもなくゴールデン・ウルフの新人である春虎の観察がメインだ。
そのため、会場に入ってから料理を美味しそうにパクついている春虎の元に、ウィリアムがやってきて、あーんをしている姿を見た瞬間、ガン見してしまったのは仕方がないと言えよう。
しかし、あまりにもガン見してしまっては、勘のいい者に気が付かれる恐れがあるため、抑えようとしたが、あまりにも美少年と、氷の船長と呼ばれる美青年の姿が尊しくて、ガン見を止められなかった。
「陛下、そんなに熱い眼差しを向けていると、気が付かれてしまいますよ」
「じゅるり、そうね。でも、目が離せないのよ。それに、今見つめ合って、なんだかいい感じで、さらに見ちゃうのを止められないのよ」
「わかります」
「ありがとう、同志」
そんなことを、専属メイドと言い合っていると、ウィリアムが春虎の肩を抱き寄せる姿が目に入った。
「「ウホッ!!!」」
専属メイドと一緒に悶えていると、宰相が覗き部屋に呼びに来た。
「陛下、そろそろ」
「うっ、うむ」
「はぁ。一度メイクを整えた方がいいかと」
「どうした?」
「鼻血が出ておいでです」
「おお、気が付かなかった。分かった、メイクを直したら直ぐ行く」
「かしこまりました」
そう言って、専属メイドと共に覗き部屋を出て行く女王の背中を微妙な表情で見送る宰相は疲れた声で言った。
「陛下は、本当は凄いお方なのだ。ただ、趣味がアレなだけで、本当に素晴らしいお方なのだ……」
メイクを整え、鼻血を出していたことなど微塵を感じさせない姿となった女王は広間に向かったのだった。




