プロローグ~悪夢の淵源
ただ前へ進むことしか考えていなかった。
だってそういう風に教わってきたから。
がむしゃらに前へ進んで行けば自ずと結果がついてくる物だと誰かが言ったから。
その過程に何を残すことも、その道程がどこに繋がっているかさえも、それについて考えるのは我々の知らない偉い人だと思っていた。
未熟な我々には、そんな風に何かを吟味する時間も猶予も許されていないのだ。ただ努力を重ねることのみ求められている。何も考えずに結果を出すことだけを求められている。
疲弊していた。
すり切れていた。
けれど、誰も、考えることを許してはくれなかった。
立ち止まることを一度も許してくれなかった。
たった一度。一瞬だけでも、道程を振り返る時間をくれていたら。
悪意の欠片も無い、だからといって善意ともどこか違う。前しか見えていない私に、誰かが声を掛けてくれていたら。
自身が創り出した地獄に、もはや救いは無い。我々の時代は、終わってしまったのだ。
追い立てられるように走り続けているうちに、我々はとっくに終わってしまっていたのだ。
巻き戻すことの出来ない時間が時を刻み続ける。
その時初めて、私は願った。誰かに救いを求めた。
まだ見ぬ誰かに、この地獄を託した。
身勝手なことだ。なんて我が儘な話だ。けれど私にはもう、何も無い。何も出来ない。
誰でも良い、誰でも良いから。
ただひたすらそう願い続けた。