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レベル2

「何だぁ?お前ぇ?」

 手刀で目の前の娘を潰そうとした瞬間。後ろから間抜けな声が森に響いた。

 お陰で手刀が娘の頭上で止まり、娘は目を回して気絶してしまった。まぁいい。後で起こして改めて殺そう。それよりも。だ。

 後ろを向いて邪魔をした奴を見る。

 なんだか…拍子抜けする奴だな。

 今まで俺に盾突いてきた奴らはいくらレベル差があっても共通してその眼に力が有った。決して負けない。という意志が有った。が目の前の間抜けは違った。

 覇気がない。

 ショボくれた盾と剣を手に持ち、革の鎧に身を包み、腰には予備の、これまたショボい剣を持った優男。その面も間抜けで散歩でもしているような緊張感の無さだ。

 身の程を知らない間抜けは面白いがここまでくれば腹が立つ。

 「何だお前?『助けに来た?』何を言ってるんだ?」

 思わず口調が真面目なものになる。イラつきで口調を変えるのを忘れてしまった。

 「彼女に手を出すな。俺が相手だ。」

 目の前の間抜けは剣を構えて戦闘態勢に入る。馬鹿馬鹿しい。

 『レベルサーチ』

 相手のレベルを見る鑑定魔法を使う。下位の鑑定魔法だが最低限の情報は見られる。

 その結果。



名前:クロウ=ベンジャルク

職業:冒険者

レベル:1



 ………。無性に腹が立った理由はソレか。

 レベル。この世界において強さの基準となる数値である。

 モンスターを倒すなどすれば上がり、高ければ高いほど強い。

 それ以外にもレベルを上げる方法があり、どんな生き物も生きていればある程度のレベルになるのだが…

レベル1。

 「ハァ、ハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ………生まれたばっかのガキか!」

 高笑いをしていたが、呆れて突っ込んでしまう。

 そんなレベルの奴がこの世界にいるとは思わなかった。というか、よく今まで生きていたものだ。

 「何言ってるんだ?早く、掛かってこい!」

 それがこの俺に喧嘩売る?舐めすぎだろ?

 「良いだろう。 死ね。」

 肉体の力のみで跳躍し、背後に回り、手刀を頭に食らわせる。レベル1にはこれで十分だ。

 「何言ってるんだ?さっさと掛かってこい。」

 後ろから声がする。ハッとなって振り向くと剣を構えた間抜けがさっきと同じ格好でこちらを向いていた。

 幻覚か?

 俺はてっきり自分が寝惚けたかとも思ったが。さっきの娘が俺の目の前にいた。

 俺は間抜けに向き直り、後ろに回り込んでいた。つまり、俺の正面に娘がいるのは正しい。幻覚に掛かっていないし寝惚けてもいない証拠だ。

 「フン、中々素早いな。スキルか。」

 スキル。様々な生物の持つ特殊技能である。その効果は様々で、レベル1だろうと残像を起こす程度の速さで移動することが出来るようになる場合もある。

 下位の鑑定では見られないものであるため、見逃したのだろう。

 「だが、だからどうしたというんだ?ちょこまか動くだけじゃ蝿と変わんねぇぞ!」

 『肉体強化』

 魔法で肉体を強化して最短距離で脳天を狙う。速度がいくら優れていてもレベル52の強化魔法であればスキルを使いだす前に仕留められる速さを出せる。

 「潰れな」

 手刀を繰り出す。速度・膂力共に前のものとは比べ物にならない。身体をミンチにするくらいなら楽勝な威力だ。

 ガキン!

 安物の剣と俺の手刀がぶつかり合って火花が飛び散る。

 「断る。俺の冒険は文字通りこれからだ。」

 そう言って俺の手を弾き飛ばしつつ、蹴りを撃ちこんできた。

 「グァッ!」

 吹き飛び、近くの木がへし折れる。馬鹿な!速度だけならまだしも筋力で俺を負かした!しかも…

 悪魔は目の前の男を見た。正確には男の足を。そう、傷一つない足なのだ。

 足一本犠牲にした特攻で傷つけたならまだしも無傷だと?こいつ、レベルの偽装でもしてんのか?

 「偽装してると思った?残念!俺のレベルは1だ!」

 手の中の剣が砕ける。が、それ以外に先程と違う点は一つも無い。

 「ヤロウ………」

 仕掛けは解らないが全力で潰すべき脅威が目の前にいる事だけは解った。


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