選挙とラーメン屋、カルトの1票ってな
世の中、民主主義ってもんで、清く正しい1票を、とか、白票でも1票を、なんて言ってたり、投票率が下がってて若者の声をと、投票できる年齢を下げてみたりとしてますが。
どうもこの選挙の投票って奴が人気が落ちてきてますなァ。
今の投票とか、選挙で選ばれた政治家を見ると、あたしはラーメンを思い出しますな。
え? 話が違う? まぁまぁ聞いて下さいな。
あたしにはね、ラーメンの大好きな二人の友達がいたんですわ。この二人が、豚骨ラーメンに関しちゃあ、ちょいとうるさい人でね。
あたしはラーメンてのが苦手だったんですよ。そんなに旨く無い、食べると頭が痛くなるってもんで。
ですがその二人に連れられてですね、その二人が最高という豚骨ラーメンを食いに行ったんですよ。
いや、驚きましたね。豚骨ラーメンってこんなに旨いもんだったとはね。しかも食っても頭が痛くならねぇ、油っ濃さが気にならねぇってもんで。
「頭痛の原因は、化学調味料か悪い油、じゃないのか?」
と、教えてもらいまして、あァ、なるほど。あたしはラーメンで頭痛がするんじゃ無くて、化学調味料で頭痛がするのか、という発見もありましたね。
で、まァ、この二人が豚骨ラーメン好きなだけあって、味にはうるさい。
一人は旨いラーメンならいくらでも食えるって、変え玉十三回とかね。もうひとりはラーメンマップなんて作って、地図にAとかBとか、店のランクを書き込んでるんですよ。
そいで新規開拓だってんで、あたしを入れて三人で噂になるラーメン屋とか行くんですがね。
この二人は豚骨ラーメンには妥協はしない。一時間並んで店に入っても、出てきたラーメンが不味けりゃあ、一口食って、
「これはラーメンじゃ無い」
と、一口しか食わずに残してご馳走さまして店を出ちまうんですわ。あたしの舌じゃ、普通、と思うんですがね。それでも二人が進める旨いラーメンを食った後じゃあ、確かにあれには遠く及ばねぇやなって、食うのがつらくなっちまう。
そんななんで、この二人が旨いっていうラーメンはほんとに旨い。気になるのは人が行列作る不味いラーメン屋。
ある日テレビでラーメンランキングなんてのが紹介されてたんですがね。そこのランキングの中にラーメン通の二人が不味いと、一口しか食わずにご馳走さました店が何軒か入ってんですよ。
「なんであんな不味いものをわざわざ並んで食べてるんだ?」
「自分の舌がバカになってるのを気がつかないまま、他人の評価を信じてんだろ」
実際あたしも、なんでこの店がランキングに? と、疑問でしたね。でもランキングに入ってテレビで紹介されるラーメン屋は、不味くても連日大人気。反対に旨いラーメン屋の方が客が少なくなって閉店していくんですよ。
本当に旨いラーメンを作ってる店は、利益が出なくて潰れていくのが、この世の中ってもんでして。
この投票でできるランキングってのは、そういうもんでしてね。
そのジャンルを盛り上げようってのがいっぱいいて、熱意があって活気があるときは、その投票でできるランキングは信用できる。
だけどね、そいつが盛り上がって認知度が上がると、それを利用して儲けてやろうとか、それを使って名を上げてやろうってのが群がってくる。組織票だったり、身内の口コミだったりね。
で、もともと熱意と理想を持って参加してた人達がそういうのに嫌気が刺して、しらけて離れていっちまう。結果、できるランキングが信用できねェってことになる。こいつはラーメンに限らず、いろんなジャンルやコンテンツでよくある話ですな。
選挙の投票なんてのも国民の大多数が、この国を良くしよう、子や孫が豊かに幸せに暮らせる国にしようって、熱意と理想を持って勉強して盛り上がってるうちはまともに動くんでしょうがね。
これが一度しらけて人気を取り戻せなきゃあ、信用は落ちるし投票率は下がるしで、そいで選挙なんて勝手にやってたら? なんて風になっちまうもんですわ。
あたしは投票に行ってますがね、自分で書いた奴が当選しなきゃいいのになァ、なんて考えながら投票してるんですわ。
あんまり大きな声で言えないんですがね、あたしの家族も親戚も、みんなカルトに嵌まってるんですわ。
日本人が全員、このカルトに入信して、このカルトがバックにいる政党が与党になって、皆が教祖様の言う通りにしたら、日本は平和になって豊かになると、本気で信じてんですな。
この親戚の一人がカルトが後ろ楯になった投票で議員になってるんで、その関係でね。親戚連中の中で上手くやってくには、あたしもそのカルトの組織票に協力しないといけない。
あたしも、アルバイトでね、独り暮らしのお年寄りのとこに行ってたりするんですわ。ボランティアってことになってますがね、そのカルトから金を貰って、寂しいお年寄りの世話をしに行くんですよ。
そいで選挙になったら、そのお年寄りを車椅子に乗せてですね、
「さぁ、お散歩に行きますよ」
って、投票所まで散歩に行くんですよ。こうやってカルトは票を集めてるんですな。
なに? そんなのは理想的な民主主義じゃ無い?
なに言ってやがんでぇ。理想的な民主主義なんてもんはただの理想じゃねぇか。
そんな絵に描いた餅がなんの役に立つってンでェ。
絵に描いた餅じゃあ、目の前の貧乏にも、身寄りの無い年寄りの寂しさにも、勝てやしねえってもんよ。
違法? これが違法ってんなら、ちゃっちゃと取り締まってしまやぁ、いいんじゃねぇんですかい?
まァ、世の中こうなって投票する奴あ、その利権に絡む奴ばっかりになると、その組織票で当選した奴が信用できねぇってことになるんでしょうね。
どこぞの国の大統領が、皆の投票で選ばれたわりにやたら嫌われてたりね。
日本もカジノ法案が通っちまったけど、あれ、本当に日本人の大多数が賛成してんですかい?
そいでお年寄りを投票所まで連れて行くんですがね。ちょいと話てみりゃ解るんですけど、独り暮らしのお年寄りなんて、最近の政治のことなんて解りゃあしない。
節約するのに新聞なんて取ってやしねぇし、屋根のアンテナが壊れても、直す金が無ぇからテレビだって映んねえし。パソコンもネットも有るわけねぇし。
ラジオはあっても政治の話なんてツマんねぇもん聞く気はねぇってもんで。
あたしみたいにボランティア紛いで来るカルトの話を鵜呑みにしてんですな。この人にしてみりゃあ、言われるがままに投票してりゃ、たまに人が来て家の中片づけて話相手になってくれるんだから、その為に1票使うんなら安いってもんで。
さっきのラーメンの話で言うと、誰もが一流の舌を持ってて、一流のラーメンの味が解るってもんでも無いんでね。
将棋に囲碁だって、駒の動かし方も知らなけりゃあ、何が面白いのか解りゃあしない。
政治だっておんなじもんでしょう。
お上の言ってることは、なんだかややこしくて難しくて、正直、なんて言ってんだか解りゃあしねぇ。
それで1票入れろってなると、自分の利になるとこに投票するってもんでさぁ。
あたしもカルトのことは胡散臭いと思ってますがね。そこから金を貰って暮らしてンだから、文句も言えない。
これからもこういう組織票が増えて、そいでますます、民意と政治が離れていくんでしょうなぁ。
あたしは学が無いですがね、選挙の投票率を上げるのは簡単なんじゃねぇかって思うんですよ。
カジノ法案が通ってこの国の政治はギャンブル推しっていうんなら、選挙も賭博にしちまやぁいいんですよ。
どいつが当選するかってのを競馬みてぇにすりゃあ、投票するのが増えんじゃねぇですかい?
どいつが当選するのか決まってる地区はつまんねぇ。接戦になってどっちが勝つか、ハラハラする方が盛り上がるってもんですよ。
◯◯追い上げた! ××逃げ切るか! なんて開票放送を馬券ならぬ政券握り締めて見る訳ですな。自分の1票が万馬券ならぬ万政券になるかも、ってなりゃあ、投票せずにはいられねぇってもんですよ。
あと気になってンのはですね、年寄りの運転免許。最近は反応と判断が鈍くなった年寄りから運転免許を取り上げようってなってるじゃないですか。
このとき一緒に選挙権も取り上げなくていいんですかい?
選挙の1票ってのは国の運転に関わるものじゃ、ねぇんですかい? 判断が鈍くなった年寄りにハンドル握らせちゃあ、危ないんじゃないんで? まさかこれで一方通行を逆走するような政治になってんじゃねぇんですかい?
それと少子高齢化、これで若者の声を政治にっていうことなら、二十歳から十八歳に、二歳下げただけじゃ、まだまだ年寄りの数が多いんだから若者の数が増えやしねぇ。
ここは思いきって十二歳くらいまで下げねぇといけねぇ。なに、字が書けりゃ投票用紙くらい書けるってもんでしょう。
あたしが昔働いてたとこなんて、ひらがなもカタカナも読み書きできない中年が普通に働いてましたからね。小学校で漢字が書けるようになれたら上等ってもんですよ。
というかですね、ひらがなもカタカナも読めねえのに、政治を勉強して投票用紙に人の名前を書けっていうのが、酷なんじゃねえんですかい?
まさかお上も日本人が全員、読み書きできるとは考えちゃいないでしょうがね。
小学校で読み書き習ったなら、ついでに十二歳から選挙に慣れさせりゃあ、習慣にもなるんでいいんじゃねえんですかい?
まァ、この選挙の投票なんてのもね、時代遅れのポンコツを代わりがねぇからって無理矢理動かしてんで、いろいろガタが来ちまってンでしょう。
かと言って新しい代わりのもんが見つからねえから、仕方無えんですがね。
これからも選挙で選ばれた奴が信用されねぇって風潮が続くんでしょう。あたしらみたいのが自分の暮らしの為に、ポンコツだって解ってんのに投票してんですから。
だからなんでこんな奴が? てのが当選してくのが、当たり前の時代になってくんでしょう。ラーメンのランキングとおんなじですな。
頭のいいなんかできそうなのがいなくなって、たいして旨くもねぇ不味いのが政治家で生き残るってのも、今のラーメン屋と似てますな。
昔、友達と行ってた旨いラーメン屋が軒並み無くなっちまって、今は寂しいもんになっちまいました。
本当に旨いラーメン屋ほどね、世間には知られねぇもんなんですよ。