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スーパーギャラクシーズ 小さな大冒険  作者: モリサワツカサ
第十五章 決着
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第十五章 決着

「・・・ううぅ、まずいわね・・・」ミカが呟いた。

硬い床を転がったとはいえ、反撃できないわけではない。だが、しかし、このまま正面切ってぶつかっても思い通りには事は運ばないだろう。

あれこれと打開策はないかと考えるミカは、ちょうど進行方向の先に、半壊した地図ツールを見つけた。先程自分と同じく吹き飛ばされたものだ。そして、そのツールからはとぎれとぎれだがまだ博士の声が聞こえていた。

『・・・ミカ・・・く・・・どうし――』

「博士!聞こえる!?」ミカが急ぎ拾い上げて応答を確かめた。

『よかっ・・――!まだ、介入機――無事・・・・』

言葉がノイズ混じりになってはいるが、言いたいことはわかるとミカは頷いた。

「まだ完全の使用はされてはいません、けど、時間の問題かも・・・!博士、何か手はないんですか?」

『――・・・ある・・・とすれば――完全・・・・破壊・・・』

「完全破壊?」

ミカが問いかけた。

『介・・・入機・・・も・・・ヒィ・・ート・・・ツールで、あり、ヒィ・・・をエネル・・・ギー源にし、てい・・・わけだ――つまり、それ・・・現象発生の・・・に、相殺させるこ・・・できれば・・・あるいは・・・』

「介入機に同じくらいのヒィアートをぶつければいいのね?」

『ただ、副作用・・・よって・・・起こ・・現象の源のヒィアート・・・とてつ・・・なく莫大な量・・・それ・・・準備する――・・は現実的・・・ないだ・・・』博士の声が少し詰まる。

『ケント・・・くんや、ミカ・・・ートを・・・合わせて、タンク・・・詰めても・・・』

「任せて!生きの良いヒィアートを持ってるから!!」

ツールの向こうで疑問符を浮かべる博士の姿が浮かんだ。

銃を新ためて構えて、いまだ黄金のヒィアートがタンクから色味を溢れさせているのを確認する。

「・・・よし」とミカは一度瞬いて言った。

拓けた壁の向こうでは、攻守逆転したのかザヴィエラがまたしても介入機を持っていた。

ケントの姿が見えなかったが、少し視線を下に向けると、崩れた翼部分の端から彼の両手だけがしがみついているのが見えた。

 なるほど、大ピンチである。

すぐさまにツールをポケットにしまって、一歩駆け出した。

「あれ?」

が、それよりも早く、ミカの横を誰かが通り過ぎていった。



「さぁ、儀式に必要なものを確かめさせてもらうぞ」

 ザヴィエラの手中で介入機が駆動音をうならせる。球体型の形状を維持したままに内部や周りに配された機械が目まぐるしく動き回り、更には淡くブルーの光を溢れさせると、ザヴィエラを包み込んだ。

「おおお!」

「・・・くっ!待て!やめろ!!」ケントが、なんとか上半身を引っ張り上げて叫ぶも、既にザヴィエラは恍惚とした目を見せていた。

 

 ザヴィエラの脳には、彼の求めた景色が映し出されていた。

いつの時代かわからないが、己の故郷であろう惑星の、そのまた辺境に一組のイーサンティ族が視えていた。一人は年老いた男で弱々しくイスに腰掛けている。もう一人は活気溢れる若者で、首からは連鎖の印をぶら下げいてた。

 単色とモノクロの堺のような色味の乏しい世界で、ザヴィエラは己が意識だけの存在となって老人と若者のやりとりを眺めているのがわかった。

「我が継承の器と成ること、後悔はないか?」

「はい。類まれなる知識は完全なままに引き継がれるべきです」

若者は、何の迷いもない真っ直ぐな目をして老人に応えた。

「・・・よかろう。では、ここに継承の義を執り行う」

「はっ」と若者が頷くと同時に、ぶら下げていた連鎖の印を外すと、それを老人に渡した。

 意識だけのザヴィエラは『ここまでは知っている』と無言で頷いて、続きを見やった。

 すると老人が動きを見せた。

印を握りしめたままに、反対の指先にあらかじめ用意しておいた小さな刃物で傷をつけたのだった。指先から血が滴って、不気味さを演出させる。

「連鎖の刻印を刻まれし者よ――この者に我が蓄えし叡智の全てを継承する」

 老人が血の滴る指先を若者の首元に当てるとゆっくりと十字を切った。

若者の首元に紅い十字が描かれると同時に、彼の首周りに先程まで着けていた連鎖の印と同じ模様が光の筋となって浮かべ上がったのだった。

 意識だけのザヴィエラは驚いて息を呑んだ。これこそが、儀式の失われた部分であると確信した。

「「智は力なり」」

 そうして老人と若者が同時に呟いた。

瞬間、老人の体中から淡い光が吹き出して、それらは全て勢い良く若者に流れ込んでいった。老人は『何か』が抜け落ちたように、力なくイスにもたれかかり動かなくなった。

そして、一方で若者は流れ込む光の衝動に身体を揺らしていた。

 ザヴィエラは、儀式完遂間近だと確信した。

しかし、そこで映像は途切れて、ザヴィエラは現実世界へと引き戻された。


「がっ?!」

 目が覚めると同時にザヴィエラは顔面を思い切り殴り飛ばされていた。

過去へ飛んでいた意識が、今度は別のどこかに飛びそうなのをこらえて殴った下手人を睨み返した。

 ケントが戻ったかと予想したが、なんとそこには親衛隊長が立っていたのだった。

「目が覚めたか!」

 ラージャックが叫んだ。

拳からは弱々しくだが黄金のオーラを漂わせ、息も切らしている。そして、ようやく身体全部をひっぱりあげたケントに気を配りながらも、ザヴィエラを睨んだ。

 ザヴィエラは殴られた部分を軽くさすりながらも、すぐに蛇竜達に構えを取らせてにやりと笑った。


「これはこれは、なんと都合のいいことか、器からやってくるとは」

「・・・答えろ。私を騙していたのか?――私に良くしてくれたのは、悪趣味な儀式のためか?」

「―――――、そうだ。だが騙してなどいないさラージャック、君には始めから私の跡を継いで欲しいと言ってきただろう?」言いながらにザヴィエラは蛇竜の牙で、己の指に傷口を作ると血を滴らせた。

「――・・・私の目は曇っていたというわけだ」

「そうでもないさ・・・その目は私の目となる」

 瞬間、ザヴィエラは蛇竜達に指示を送った。一匹の蛇竜がラージャックに飛びかかるも、避けられるが、残った二匹が彼の手足を絡め取ってしまった。

「くっ・・・!」「ラージ兄ちゃん!」後ろでケントが叫んだ。

「私の全てを授けよう」

 言いながらにザヴィエラがラージャックに迫り、彼の首元で十字を切った。 

ラージャックの首元に紅い十字が描かれると同時に首周りには連鎖の印の模様が光の筋となって浮かび上がった。

「智は――」

 しかし、最後の一台詞を告げようとした、その時、ザヴィエラは手中にある介入機がおぞましいほどの異音を発しているのに気がついた。

ガガガ!バチバチ!!


 これまでの現象のきっかけとはまるで違う。青白い光が疾走るではなく、介入機を中心にまるで防壁のように電撃が纏わりつき出した。

「・・・これは!?」

 そして、遂には介入機はザヴィエラの手を離れ宙に浮かぶのだった。

電撃の膜を纏って異音を発し続ける介入機が、今度は黒紫に光りだした。その瞬間、ザヴィエラとラージャックは身体が軽くなったのは感じて驚いた。

「磁場が生まれているというのか?!」

ザヴィエラが叫ぶと、今一度、儀式の完遂をとラージャックを睨んだ。彼の首元にはまだ紅い十字と光の印が浮かんでいる。

「小型ブラックホール・・・なるほど、これが私の死の原因か――」

 介入機に引き寄せられるのを感じながらも、不気味な笑顔を見せたザヴィエラが最後の一手と指先をラージャックの首元に伸ばした。

だがそこへ。

「やめろぉぉおおお!!」

 ケントが身体を真っ赤に燃やして飛びかかった。

ラージャックを絡め取る蛇竜の一匹を殴り飛ばして気絶させると、その拍子で圧迫が弱まった部分を糧に兄弟子の身を無理矢理にでも引き離した。

「貴様ぁ!!」残された蛇竜が悲鳴と怒号を上げて、ザヴィエラが憤怒の顔を見せた。

「ケント、お前!」

「逃げろラージ兄ちゃん!」

 ラージャックの代わりに蛇竜を捉えたケントが、ザヴィエラと睨み合った。

ラージャックは、引き離された反動で戦艦の翼部分に転がったが、反対にケントはザヴィエラの半身から伸びる蛇竜の一匹を捉えたままなので、彼と道連れに介入機の磁場に吸い寄せられて行くのが見えた。

「どけぇええええ!!」

「させるかぁあ!!」

怒れるザヴィエラがラージャックを差し出せと吠えるが、ケントは残った二匹の蛇竜がそれぞれ片手に噛み付いているのを利用すると、渾身の力を込めて引き寄せた。それによって、ザヴィエラ本体がケントに接近してきて――そのまま勢いを殺さずケントは真っ赤な頭突きを御見舞した。

「・・・ぐっ、あ・・・!」

 ザヴィエラが呻いた。


 ニヤリと笑うケントだったが、ザヴィエラの背後に見える介入機が更に震えだして、また青白い稲妻を疾走らせたのがわかった。それも装置を中心にした極近い距離である。もちろんこのまま引き寄せられたままなら、えぐり取られること間違いなしである。

危機を感じたケントだったが、そこへ、強風にのって女の声が飛んだ。

「ケントー!!そいつから離れなさい!!」

ミカが銃を構えて叫んだ。強風で縛った髪が揺れている。

「ミカ!!」

「装置に特大のビームを当てるわ!それで止まるかもしれない!!早く、そこから離れて!」

「――そんなこと言っても!」

 ケントはザヴィエラと共に宙に舞い上がった状態であった。それも介入機に引き寄せられて。そして、装置は遂にその身が自壊せんばかりに震えた。

それにケントは嫌な予感を覚えた。

「ミカ!俺を撃て!早く!!」

「何言ってんのよ!?」

「いいから早くしろ!!」

次の瞬間、介入機はその場に青紫の空間の渦を作り出したのだった。

「――ッ!?」「!!」

 ケントとザヴィエラは驚いた表情を見せた。

実物は見たことはないがブラックホール・・・それによく似ていると思った。突如として吸引が早くなり、巨大戦艦さえもそちらに傾き始めたのだった。

「いいから撃て!!」

「わかったわよ!!」

 刹那、ミカは吸い寄せられそうな身体をなんとか踏ん張って、ケント目掛けて引き金を引いた。銃口より特大の黄金のビームが撃ち放たれて、今にもブラックホールに吸い込まれそうなケントに襲いかかった。

 そによって先に動いたのは蛇竜であった。ケントの腕に噛み付いていたままの二匹はビームの接近に驚いて、その身を引っ込めてしまった。

「馬鹿な!そいつを離すな!!」支えを失ったザヴィエラが叫んだ。

直後、両手が自由になったケントへと特大ビームがぶつかった。

「うぉおおおおおお!!」

 ケントは両手を前に突き出して、ビームを受け止めてみせた。

真紅のオーラが燃え上がってビームと衝突する。そして、凄まじい衝突の反動によってケントの身体はブラックホールからどんどんと引き離されていくのだった。


「馬鹿な!!こんな、こんなこと――!おのれ・・・おのれぇええ!!」

もはや、どうあっても介入機の吸引に抗うことの出来ないザヴィエラが、蛇竜をなんとか戦艦に届かせようと伸ばすが。その行為よりも早く、そして強力な引力が彼を空間の歪みへといざなっていく。

「私は・・・私の叡智は――・・・・」

 そうして、その言葉を最後にザヴィエラは暗黒の歪の彼方へと消え去っていってしまうのだった。


「がっぁあああ・・・あああ!!」

 ケントは特大ビームをなんとか弾くことに成功して、息をついた。

が、それでも、身体は宙を舞っている。惑星の重力と介入機の引力とでどちらに引っ張られているのかよくわからない状態でもがく羽目になった。

 このまま地上に落下か、それともザヴィエラの用にブラックホールに消えるか、どちらにしても命は無いと表情が凍った。

そこへ。

「ケント!」ラージャックの声が飛んだ。

 ラージャックは残された僅かな体内ヒィアートの全てを足に集めてオーラを纏うと、ケント目掛けて飛び出していた。

「兄ちゃん!」

「ケント!私をしっかり掴んでいろ!!」

 空中でケントを掴まえたラージャックが叫んだ。それに、どういうことかと聞き返す間もなくケントはラージャックの軍服の一部をしっかり掴んだ。

「少し痛いぞ」

「え?」

バキィ!!

 瞬間、ラージャックの黄金の拳がケントに直撃した。

凄まじい衝撃で一直線に吹き飛ぶケント、そして彼に掴まれたままのラージャックもまた道連れに吹き飛んだ。


 ドカン!ドカン!と、二人は戦艦の翼部分に激突して磁場のおかしい場を転がった。

「いたたた・・・!もうちょっとやりかたが・・・」

「―――、ケント!なにかに掴まれ!吸い込まれるぞ!!」

 起き上がりざまにラージャックが叫んだ。戦艦、上空には介入機がおぞましい駆動音を張り上げていた。青黒い空間の歪みは渦を巻きそこらの中のモノを飲み込み始めている。まだ、かなりの上空にあるとはいえ、少しずつ地上にあるものも影響を受け始めている。

事実、巨大戦艦さえも引き寄せられ始めている。このままでは運命を共にすることになる。

「よ、よーし!今度こそ当ててやるわ!」

と、そこへミカが再び銃を構えて介入機を狙う仕草を見せた。彼女もまた、空に吸い込まれないようにと足場の装甲板の出っ張りを支えにしがみついていた。

「そこ――だ?・・・あ、あれ?」

 引き金を弾こうとしたミカの声が裏返った。身体がふわりと浮かび始めたからだ。

何故かとしっかり掴んだ装甲板を見れば、答えはすぐにわかった。装甲板自体が介入機の吸引に負けはじめてめくり上がったのだ。

「う、うそ――」

ベリベリ!バキン!!

嫌な音がして、ミカは支えにしていた装甲板ごと空へと吸い上げられてしまった。

一瞬にして表情が凍りつき、ミカは浮き上がった身をどうにしかしようともがくが、無慈悲にもブラックホールは吸い込みを強めるのだった。

「ミカ!!」ケントが叫んだ。

「待て!どうやって戻る気だ!」

 今にも飛び上がりそうなケントをラージャックが制止した。

自分がやったようにミカも殴り飛ばす気かと、口にする間もなくケントは察して踏みとどまると歯ぎしりをした。

 どうにかしてミカを助ける方法をあれこれと思考するが、焦る瞳が泳ぐように動き回る。

何か、何かないかと、辺りを見渡すも使えそうなものがない。

このままでは――。

「ケント!!」

「ミカ!」

 今にも歪みに消えそうなミカが手を伸ばすも、空を切るだけだった。

ケントは引き戻す方法は思いつかないが、それでもと、一歩踏み出した。

その時だった。

ガシ!

 突如としてミカの身体を金属の鉤爪が掴んだ。

鉤爪の先には長いワイヤーが伸びている。そして、その先にあるのは。

「リバリー号!ジョットか!」

「あれは・・・たしか便利屋の・・・」

便利屋ジョットの愛機リバリー号であった。前に星間列車に連結する際に使った、ワイヤーがミカを掴んでいた。

「わ、わわわ!」

 間一髪、歪みに消えそうだったミカはリバリー号にワイヤーで引っ張られる形で、吸引の中心部から離れだした。そうしてリバリー号も吸い込みから逃れるために全力でブースターを展開して、吸引される方向とは反対方向に舵をきった。

「きゃ!」

ガツン!と、ミカは巻き取られたワイヤーに連れられてリバリー号の外壁に激突した。

お陰で尻もちをついたが、それでも助かったと尻を撫でながらに安堵の息を漏らした。

「無事か!ミカ!?」

 ハッチを開いてジョットが顔を見せると、口早に言った。

「なんとかね・・・助かったわ――と、言いたいところだけど、あれをなんとかしないと星ごと吸い込まれるわね」

 ミカは、やれやれと今は眼下になった介入機を見下ろした。

介入機は未だに唸りを上げて小型のブラックホールを発生させたままである。地上から飛んできたであろう木々やガラクタなんかが吸い込まれているのがわかる。そして、戦艦の外壁装甲や砲台の一部なんかも徐々に剥がされ始めている。

 飛び続けているリバリー号でさえ、吸い込みと速度が同じなのか逆方向に進んでいるはずがあまり前進していないようだった。

『コレ以上ハ オーバーヒート シテシマイマス』

中からバルンの機械音声が聞こえた。

 だが、ミカは、それよりも介入機が再度震えたのが見えた。そして唸りが一段と大きくなり、またしても電撃の膜が介入機を覆った。

「まさか・・・もう一段階あるの!?」

ミカが嫌な予感を口にした。しかし、それと同時にケントが戦艦側から叫んだ。

「ミカー!!撃て!!今しかないぞ!!」

ケントも異変を察知していた。そして、これが最後のチャンスだと声を大にして叫んだ。

強風にかき消されそうな状態だったが、それでもミカにはなんとか伝わった。

「わかってる!・・・だけど、ここから撃ったら船に当たるわ!!」

「俺が受け止める!!さっきもやったろ!だから撃て!!」

 そう言われてミカは、ほんの僅かだけ思考を巡らせると、意を決して首を縦に降った。

もはやこれしかない。介入機を、これ以上暴走させるわけにはいかない。

「俺を信じろ!!」

「ぜ、絶対よ!!絶対に受け止めなさいよ!!」

 青白い稲妻が走り出したのを捉えながらにミカは引き金を引いた。

瞬間、小さな銃から超特大のビームが発射された。空を裂き、一直線に蠢く介入機向けて黄金の閃光が疾走り抜けた。

バチィィィッ!!

 劈くような轟音を鳴らして空中で特大ビームと介入機がぶつかった。

空は黄金色に染まり、電撃が四方八方に駆け抜ける。ブラックホールは、まるで漫画のように、ぐにゃりと歪みその威力を弱まらせた。

「わ、わわわ・・・!」

「ミカ!掴まれ!」

ミカは、ビームのあまりの反動で後方に吹き飛ばされそうになったが、なんとかジョットの助けでリバリー号に残ることが出来ていた。

 危ない状況ながらにタンクを見れば、黄金のヒィアートは空になっており、その全てを詰め込んだビームが発射されたことを示していた。


「・・・な、なんという砲撃だ――まるで超弩級戦艦砲並だ」

「あれ、ラージ兄ちゃんのヒィアートだよ・・・それも半分の」

 見上げて黄金の衝突に呟くケントとラージャック。だが、ケントは僅かに異変があるのに眉を潜めた。

介入機に罅が入りはじめているがわかったが、反対にビームの方の威力が弱まっているように見えた。なによりブラックホールが吸引力を取り戻しつつあった。

「ミカ!!もう一押しだ!!」

「はぁ!?」

轟音に混ざってケントが叫んだ。ミカは、聞こえたその言葉に表情を引きつらせた。

「タンクは空なのよ!どうしろって・・・」

「ミカ!お前自身のヒィアートだ!!魔力を注ぐんだ!!」

と、ジョットのその言葉にミカはハッとした。少々、ラージャックのヒィアートに頼り過ぎだったようだと。急ぎタンク部分のカバーを外すと片方の手を添えた。

「行くわよ!!全力全開!!これが私の魔法よ!!」

増設されたタンクに緑のヒィアートが溜まっていく。思えば、パングリオンの港町でストログ相手に撃ったことがある(あの時はかき消されたが)。そうしてタンクが満タンになると同時にミカは再び引き金を引いた。

バチィ!!

 二度目の特大ビームは緑の閃光で、衝突を続ける介入機の元へと突き刺さった。

バチバチバチ!!

 黄金と緑が混じり合って空を染め上げていく。電撃もまた空という空を疾走り、おぞましい様相を見せいていく。

 だが、それは異変の終わりの兆しだった。

ブラックホールは歪むどころか、ぐにゃぐにゃにひしゃげて小さくなっていく。そして介入機自身も全体に罅が入りミシミシと軋みだした。

そして――。

バリン!!


 遂に、介入機は粉々に粉砕され、ブラックホールは己を飲み込むように渦を巻いて消え去ったのだった。

しかし、それは特大ビームが勝利して戦艦への直行を意味していた。

ゴォオオオオオ!!

 黄金と緑が混じった超特大ビームが戦艦に迫った。その先は司令室のある箇所である、動力を予備に変わってるうえメインコントールを失えば、大きな被害は免れない。

「うぉおおおおお!!」

 ケントは全身を真っ赤なオーラで染め上げてビームの前に立ちはだかった。両手を前に突き出して迫る超特大ビームを受け止めるため腰を深く落とした。

はっきり言って、防ぎきれるかは自身がなかった。

残った体内ヒィアートも多い方ではない、そしてラージャックのヒィアートと更にはミカの魔力の上乗せである。

 いくら鍛えているとは言え、人ひとりで防ぎきれるだろうか・・・。と、考えてもどうにもならない。やるしかないのだ。やらねば船もろとも消え去るだけだ。

バチィイイ!!

轟音を張り上げてケントの突き出した両手に特大ビームがぶつかった。真紅のオーラが衝突によって空に舞い上がる。

「ぐ・・・!がぁあ!!」ケントは歯を食いしばってこらえていた。

 あまりの威力に身体が下がっていく。足元の硬い装甲板がめり込めはじめて、ほんの僅かでも力がゆるめば即座にアウトである。

「・・・こ、の・・・!!」

なんとか踏ん張るケントだが、やはり力不足か今にも膝が付きそうになってしまう。ビームは容赦なく威力をお捉えさせること無く猛進を続けている。それによって巨大戦艦自体も押され始めていた。

「ケント・・・!一人では無理だ!」

と、そこへラージャックが叫んだ。既に満身創痍の彼は、這ってなんとかケントの側までやってくると、ケントの足に手を添えた。

「使え・・・!私に残された僅かなヒィアートだ!」

「ラージ兄ちゃん!」

 するとラージャックの身体から黄金のオーラが湧くと、そのままケントの足を伝い身体全体を染め上げた。

赤と金のオーラを身にまとってケントは目を見開いた。

「ぉぉおおおおおお!!」

 ケントが吠えた。

 真紅と黄金のオーラは混じり合って、そのまま両手に集まっていく。

押され気味だったケントの身は下がることをやめ、反対に押し返すほどになっていた。

しかし、目的は跳ね返すことではない、このまま無害の方角に弾き飛ばすか、かき消すかである。

「消え・・・ろッ!!」

 ケントはかき消す方を選んだ。と、いうよりは悪戯に弾いて戦艦の他の部分に当たってしまっても都合が悪いからである。

 赤、金、緑と戦艦の上でまばゆい光が轟音をバックミュージックに溢れかえっていく。だが、それもしだいに落ち着いた様子になってきた。

「はぁああああッ!!」

バチン!!

最後にこれまでで一番の大きな音を立てて、特大ビームは真っ赤な光に割かるように分散すると、そのまま霧のように蒸発し掻き消えたのだった。


「・・・や・・・った」

 同時に己のオーラも掻き消えたケントはその場に倒れ込んだ。正真正銘、本当に全力をだしきったのだ。腕も足も鉛のように重く、とても簡単に回復できそうにはなかった。

だが、それでも良かったと思えた。これで戦艦は無事だったわけだ、あとは誰かが救助にきてくれるだろう。

「・・・すごかったぞ、ケント」

「そ、それほどでも――」

ケント、ラージャック、お互いに倒れたままで会話した。両者ともに体内ヒィアートを使い果たして、立ち上がることも出来ない状態である。

 しかしラージャックも、さほどの問題ではないと笑みを零した。その時、戦艦が揺れた。

「!?」

介入機の吸引や、ビームの衝突で傾いていた艦体をもとに戻したのだ。だが、それが、二人を危機に陥れた。

 思うように身動きの取れないケントとラージャックは戦艦が揺れた拍子に、翼部分の装甲を見事に転がってしまったのだった。

 なにかに掴まるべきだと、身体を動かそうとするがまったく動かない。そうして為す術無く船外へ放り出されそうになった。

その直前。

「ケント!!」

 大きな爪を持った毛もじゃな腕が、翼から落ちそうな二人を間一髪でキャッチしたのだった。

「ドリュー!!」ケントが目を輝かせて言った。

「よかった・・・!」ドリューもまたサングラス越しに涙目で言った。

ラージャックもまた礼を言いながらも「便利屋と一緒にいた・・・」と呟くのだった。


「ザヴィエラは?介入機もどうなったの?」

「どっちも消えたよ・・・ま、これで任務達成だ!俺達の卒業も確定だな!」

ドリューに肩を借りながらにケントは空を見上げた。その先にあるリバリー号。そして、今回一番の活躍を見せたミカに顔向けた。が。

「ん?ミカのやつ、どこだ?リバリー号の中か?」

「・・・ケント!あれ!」

 ミカがリバリー号の外にいないことに、首を傾げたケントだったが、次にドリューがリバリー号の真下を指差したのに目を向けて――驚愕した。

何かが、誰かが、落下していた。

金髪の、銃を手にした――少女。

「ミカ!」

 ケントが叫んだ。


                    ※


「バルン!ミカが落ちた!真下だ!!」

ジョットの声がリバリー号内に響き渡った。それに伴って円盤ロボのバルンも応答してランプを点滅させる。

「ムリデス カンゼン ニ オーバーヒート シテ イマス」

「・・・ちっ!!ワイヤーは!?」

「オナジデス コノママ フジチャク スルノガ セイイッパイ デス」

 くそ!とジョットが近くの壁を殴った。

ミカは、ビームの消滅を確認した後、船内に戻ろうとした。が、彼女もまたタンクに己の全てのヒィアートを詰め込んだため、とても満足に歩けるような状態ではなかった。そのため、バランスを崩してジョットが手を延ばすよりも早く、船の外へ落下してしまったのだった。

「・・・こんなことならあのダチョウも乗せておくべきだった!」

「ミカクニン ノ ハンノウ アリ セッキン シテキマス」

悔やむジョットの耳に、予想外のバルンの声が聞こえた。

「なに?」と聞き返すジョットはバルンが確認していたレーダーを見やった。

「モノスゴイ ハヤサデス ソレニ オソラク コウクウセン デハ アリマセン」

「生身だと言うのか!?」

と、そこでレーダーは消灯してしまった。

オーバーヒートからの影響である。ジョットはまたしても悔しそうに舌を打った。

「いったいなんなんだ!?」

 困ったようにコックピットから覗く窓を見ると、一筋の光が疾走ったのが見えた。

その光は青く、そしてコートを着ていたようだった。


                   ※


「なんでミカが落っこちてるんだ!!」

 どんどん小さくなっていくミカを見てケントが叫ぶ。

今すぐにでも飛び出すか、戦艦に積んだ航空船で助けに行かなければと騒ぐが、どちらもとても現実的ではなかった。

ケントもラージャックも回復しきっておらず、このまま飛び出しても自殺行為である。そして航空船の出動では時間がかかりすぎる。

「見殺しにする気か!?」

「でもどうしろっての!?」

ケントとドリューが言い合う。

すると、その脇でラージャックが不思議なモノを見つけて指を指していた。

「・・・なんだ、あれは?」

それにケントもドリューも急いで視線を向けた。ラージャックが差す方向には、落下を続けるミカ。そして、それを追う、何かがあった。

青い光、おそらくオーラだろうか・・・それを纏いフード付きコートを着た大柄な人物がミカを追って落下していた。

「――あいつ!」

「なんで!?」

ケントとドリューは目を丸くした。

 目を凝らした、その先で、フードの中にカブトムシ型の顔がチラリと見えたからだ。


                   ※


「・・・し、しまったぁ」

落下しながらにミカは呟いた。

絶賛、地上に向けて猛進中の我が身は、まったくもって言うことをきかない。気力の全てを持っていかれたような感覚で、今にも握ったままの銃さえも手放しそうになっていた。

「流石に助からない・・・かな・・・」

 ぐんぐんと地表が迫ってくる。リバリー号も巨大戦艦も、もう掌に収まるくらいに小さく見えて距離の遠さを思い知った。きっと誰も助けにこれないのだ。もしくは、あのゴタゴタの中で、自分が落下したこなど気がついていないのかもしれない。

「・・・みんな、ごめん――・・・!?」

ガシ!!

 あきらめて目を瞑ったミカだったが、突如として何かが己の全身を掴んだのが分かった。一体全体、高高度の落下中で、それも地上まであと僅かの自分を何が掴むのだろうか。またリバリー号のワイヤーだろうか。

しかし、掴まれた感触は分厚い装甲のようであり、何より人の感触そのものであった。

そこでミカは目を開いた。

「――あんた!」

 そこにいたのはナンバー1傭兵のストログであった。

フードが目繰り上がりカブトムシの顔が顕になっている。そしてミカの身体をがっしりと掴んだままに、間近に迫る地表を睨みつけた。

「喋るな、舌を噛むぞ」

次の瞬間、ストログは溜め込んでいたモノを吐き出すように足から青いオーラを噴出させた。

ズシン!!

 ミカを抱えたままにストログは物凄い勢いで着地した。地面はめり込み、砂埃は舞い上がり、側にいた珍妙な動物たちは一目散に逃げ出した。

 そうして、そんな落下点を目指して巨大戦艦から、一機の小型航空機が急発進で飛び出し接近してくるのだった。


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