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スーパーギャラクシーズ 小さな大冒険  作者: モリサワツカサ
第十四章 ザヴィエラの蛇竜
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第十四章 ザヴィエラの蛇竜


「・・・もう、またこんな役回り」

ドリューは、無人の食堂でため息混じりに呟いていた。

牢獄衛星の時といい、今回といい、またしても身を隠しつつの作戦である。特に、そういった類の訓練なんかを受けたことはないし、そもそも身体を動かすことは苦手である。

「・・・ケントのオーラが消えちゃったら僕の爪でも、壊せないものものが多いってのに」

何度か大きな爪を動かして愚痴を零した。

戦艦の動力炉を探せということだが、はっきり言って検討のつかない状態になっていた。先程、避難経路を発見した時に動力室かそれらしい場所を確認しておけばよかったと、また溜息をついた。

 今いる食堂は、スクランブルのおかげで当然ながら誰もいなくなっていた。調理担当ぐらいはいるかなと、警戒していたが、どうやらそれらもいないらしくドリューとしては都合がよかった。せめて、また地図があれば助かるのだがと、あたりを見渡してみた。

 『おかわりは一人一回!』『今日の献立』『SNSへのアップは控えめに』などなど、張り紙が貼られていたり、先程まで利用していたのかテーブルにトレーが残されていたりした。

「うーん、ないかな・・地図。それか制服とかあれば動きやすいんだけど・・・」言いながらにドリューが食堂をぐるりと一周した。特にこれと言ったものが見つからなかったが、ふとひとつの扉を見つけて目が停まった。

「そうだ、厨房の方ならなにかあるかも」

そんな軽い気持ち厨房へと続く扉に歩み寄ると、捜し物を探す目でドアを開けた。

ドアの向こうは極普通の厨房で、銀の流し台が多く目に映った。そうして、いざあれこれと探してみようと足を進めた。その時。

ドカ!

「いて!」何かに足を取られて、ズッコケてしまった。

 厨房の緑の床にヘッドスライディングをかましたドリューは、起き上がりざまに躓いたものの正体を確かめようと振り返った。すると、そこには何かが『寝ていた』。

「わ!」ドリューが驚いて声を上げた。

「・・・んぁ?」その声に何かが起きて、背伸びをした。

 丸まっていた身体が伸びて、その全体を露わにする。大きさはドリューと同じくらいで、軍服を来ており、特徴的なのは背中からたくさんの棘が生えていた。

ハリネズミ族だ。ドリューは息を呑みながら確信した。

「・・・んん?もう終わったかな―――・・・・なんだお前?!」ハリネズミがドリューに気がついて飛び上がった。

「ちょ!ちょっと待って!怪しい――いや、ま、怪しいけど、僕は怪しくないよ!落ち着いて!静かにして!」

ドリューは慌ててハリネズミの口を塞いだ。

「んぐ!な・・んだ!どうし・・てここに・・・俺が隠れ――、いやいや待ち構えているって――・・・わかった!」息つきしながらに吠えるハリネズミは、己の軍服をあちこち触って何かを探している仕草を見せた。が、次には青い顔をして「あれ?ない!ない!」と腰部のホルスター部分にあるずあの武器がないことに、冷や汗をかき始めたのがわかった。

「・・・君、もしかして怖くてここに隠れてたの?」ドリューは、思わず同情気味に手を離して問いかけた。

「ち、違う・・・!俺は、そのだな・・・戦闘向きじゃないんだ・・・だけどメカニックは定員オーバーだからってこっちに回されたんだ・・・」ハリネズミ族の声は尻すぼみになった。そんな彼を見てドリューは少し考え込むと、ポンと手を叩いた。

「そうだ、ねぇ君、僕に協力してくれない?そしたらメカ関係の仕事先紹介してあげるよ」

「・・・なんだって?」ハリネズミ族が眉を潜めて言った。

「僕・・・その、・・・迷子なんだ。動力室に行きたい――あと、航空機のドックにも」

「おい、それより仕事先の話は本当か?」

「え、あ、うん。お偉いさんの家の友達がいるからさ、その子に頼めばスグだよ」ドリューは心でミカに「ごめん」と謝った。

「うーむ・・・しかし、こんなところで会ったやつのことを信用していいいものか」

「お願い早くして!こんなところ他の人に見つかったら、君もいい思いはしなんんじゃないの?」ドリューがダメ押しと言った。

 そうして、焦らされたハリネズミは一段と大きく「うーん」と唸ったところで、一度頷いた。

「わ、わかった!協力しよう!仕事先の件、絶対だぞ!」

「ありがとう!任せてよ!――それでさ、もう一つだけお願いがあるんだ」

 そう付け加えたドリューにハリネズミ族は首を傾げた。

「制服貸してくれない?」

 ドリューは手を合わせて拝んだ。


                   ※


「状況はどうなっている?!」

「小型船が張り付いているようです!それに侵入者らしき報告もあり、そちらの対応にも追われています!」

「ちくしょう!誰だいったい!」

 司令室では操縦士や通信士といった、軍服に身を包んだ者たちが慌ただしく声を飛ばしていた。

 目の前には大きな窓と、スクリーンが併用されており、船外三百六十度の状況を把握できるようにと映像が映し出されており、その映像のあちこちにリバリー号が映っては消えてを繰り返していた。

どうやら大戦艦相手に小回りがきくのを武器に、忙しく小突いているようで、それに対して司令部の怒りは頂点に達していた。そして。

「副大統領殿!撃墜の許可を!」ひとりがそう告げて、専用のイスに座するザヴィエラに振り返ったが、彼は手に取った球体を触っているだけで返事はなかった。

「副大統領殿!!」「・・・ん?あぁ、なにかね?」

 ようやく気がついたのか、愛想のない返答であった。

「あの小煩い蝿への撃墜許可を!」

「撃墜・・・」そう言われてザヴィエラはシワの多い顔をしかめると映像に映る小型船を睨んだ。そうして渋い顔を見せたかと思うと、すぐに広角を上げて鼻で笑った。

「便利屋か・・・なるほど――やつがミカ嬢に手を貸したか・・・――――構わん、撃墜なりなんなり君たちの好きにしたまえ」言いながらにザヴィエラはまた、球体を触りは始めた。

「・・!りょ!了解!!」

 すると事態が進展したことに司令室一同が頷いて、それぞれに与えられた役目を果たさんと操縦機器や通信機器に手を添えた。

「撃墜許可が降りた!砲撃準備!!」

指示が飛び、全員の注目が映像に映るリバリー号に集まった。

「撃」

ベコン!ドカン!!

 砲撃開始の号令の、その直前、司令室に異常な音が鳴り響いた。

全員が音の方向へと振り返ったことで、砲撃への手がやんでしまう。そして異常な音の正体は通信室への入り口扉から聞こえていた。

メキメキ!バコン!!

「うわ!?」

 次の瞬間、鋼鉄製の扉がひしゃげた状態で『飛んできた』。扉は司令室の中を一直線に吹っ飛んで、大きなスクリーンに激突、そのまま映像の殆どをシャットダウンさせてしまった。

 司令室の全員が突然の事に声を失っていると、扉があったはずの入り口から一組の男女が入ってきたのがわかった。


「ちょっと、誰かに当たったらどうするのよ!」

「わ、わかってる!だ・・・大丈夫だろ、きっと」

 ミカとケントが言い合いながらに司令室に入ってきた。

同時に、全員の視線を集めていることを理解した上でミカは銃を突きつけた。

「動かないで!・・・―――無論、あなたもよ。副大統領」ミカがギラリと睨んだ。

 ミカの声に司令室全員がざわめき出した。衝突騒ぎに侵入者、そして更には戦艦乗っ取りまで起きている。どよめく言葉の端々からは「ミカ・フェリア嬢では?」と飛び出していた。

もちろん、それが聞こえないミカではなかった。

一度、大きく瞬くと帽子を取って改めて全員に顔を晒した。

「えぇ、そうよ!私はアージェナルド・ミカ・フェリア!――そして、効力があるかわわからないけど、オッド大統領の娘として言わせてもらうわ!」ミカはタンクが満タン状態の銃をザヴィエラに突きつける。

「ザヴィエラ副大統領!あなたの持っている時間介入機を返してもらうわ!!」

ビシッ!と言い飛ばした。が、当の相手は顔色1つ変えずに鼻で笑い飛ばした。

「返す?これは封印術を施すために少し借りるとおっしゃったではありませんか?」

「嘘よ!あなた封印術なんてこれっぽちも知らないでしょ!――あなたが介入機でやりたいことは・・・これでしょう?」と、言いながらに先程ラージャックから拝借した首飾りを見せつけた。

「お、おい、あれ」「ラーっジャック隊長が着けていたやつだ」「まさか隊長が・・・」

 あれこれ言葉が飛ぶが、その中でもザヴィエラの眉が潜めいたのに気がついてミカは、「やっぱり」と頷いた。

すると今度はケントが拳を赤く燃やしながらに口を開いた。

「連鎖の印だったか・・・これでラージ兄ちゃんに何をする気だ?過去を見て儀式を成功させたいんだろ?」怒りに満ちた目でザヴィエラを睨むケント。

と、その時だった。

 司令室を新たな警報が包み込んだ。オレンジのパトランプが回転し、機械制のメッセージが鳴り響く。

『動力炉に異常発生、動力炉に異常発生。運行を予備動力へ移行します』

そう鳴ると同時に薄明るい照明に切り替わり、異常を知らせていた警報やメッセージはなくなっていた。

「・・・ドリューがやったんだわ」「さすがだな、あいつ」

司令部の人々が慌ただしく、あれこれと装置を触りだすも、どれも思ったようには動かず、本来の機能には届かないものになっているようであった。

「とりあえずこれで、すぐにワープはできないわ」ミカが息を付きながらに言った。

「ジョット、撃ち落とされない前にうまく引き上げてくれるといいけど」

と、ケントがジョットの名を出した時、ザヴィエラは少しだけ広角を釣り上げていた。

そして、その手は、また介入機を操作していた。

「おい!ミカ!あいつ!装置を!」「ちょっと!!」

バチリ

ザヴィエラの手中の球体が青黒くきらめいたかと思うと、またしても嫌な電撃音が聞こえた。ケントとミカは戦慄を覚えながらも、次に起こる現象に目を凝らした。

そして青白い稲光は、ちょうど司令部員達のあつまる操縦機材近くを真っ直ぐに走った。

「今すぐそこを離れろ!!」ケントが叫んだ。

が、司令部員たちは、おろおろとするだけで右往左往していた。

「ケント!!」「わかってる!!」

瞬間、ケントは脱兎の如く飛び出した。

両足を真紅に染めて、司令部員達の元へ瞬時に迫ると、彼等の首元をひっつかんで力任せにその場を離れた。

ガスンッ!!!

 次の瞬間、彼等のいた場所は操縦機材や外壁の装甲ごとえぐり取られてしまっていた。

操縦機材の一部が消え、更には装甲が消えた部分からは空が覗いて、強風が吹き付けてきた。

「なななななんだ?!」「どうなってるんだ?!」

「逃げろ!!ここにいたら今度こそ抉られるぞ!!」ケントが怒声を発した。

すると、その声と先程の鋼鉄扉をふっ飛ばしたことが重なったせいか、司令部員たちはケントに恐れを見せて蜘蛛の子を散らすように、司令室からに逃げ出していってしまった。

 

 一方で、ミカは人が死ななかったことに安心しながらも銃を改めて突きつけて睨みを強めていた。

「動くなっていったでしょ!それに、その装置のせいでこんなことが起きてるってわかってるの?!」

 叫ぶミカの元に、ケントが「危なかった」と呟きながらに戻ってくる。拓けた外壁の向こうから風が舞い込んで二人の髪をなびかせている。

「ふふ、そちらこそ・・・便利屋と会ったのでしょう?どうりで、私が装置を欲していると推理できるわけだ――ならば、だからこそ、この装置に強力な衝撃は禁物ですよ?ミカ・フェリア嬢・・・たとえ、そのような・・・あぁ、―――玩具の銃でもね」

ザヴィエラが見下したように鼻で笑った。

「お、玩具ですって・・・!見てなさい!!」

「やめろミカ!」

今にも引き金を引きそうなミカをケントが止めた。

そして今度はケントが口を開いた。

「・・・副大統領、俺はあんたに恨みがあるってわけじゃないが・・・――いや、傭兵のことに関しては恨みあり、か――まぁ、色々言いたいこともあるけど・・・一番は、ラージ兄ちゃんをどうする気だ?」

ケントが腰を落として構えを取った。

「――なるほど。ラージャックを退けたのは君か・・・それにオーラ術者・・・同門か?」「弟弟子だ」

「結構」

 ザヴィエラが、少しだけケントを強く見やって、口角を釣り上げた。

「・・・どうする、とは?期待の答えを授けられればいいが――便利屋からの推測でわかっているのだろう?――彼に引き継いでもらうのさ、私の役目をね・・・ただ、正式な段取りを踏みたい、それだけだ」

「それだけ・・・?」

ケントが明らかに言葉足らずだろうと睨みを強める。

「ラージ兄ちゃんに副大統領にでもなれっていうのか?」

「そうだ。正確には『私に』だ」

ザヴィエラの妙な付け足しにケントが首を捻った。

「嘘よ!それだけなら唯、職を譲ればいいだけじゃない!なんのために装置が必要なのよ!」

そう言ったミカに対してザヴィエラは口を紡ぐと、首を横に振りながら溜息を漏らした。

「どうにも、若人は己の意見が全て正しいと思っているようですな・・・年寄りのほんの些細な楽しみも見逃してくれないとは」

「何が楽しみよ!その装置のせいで魔法惑星が穴だらけどころか消えちゃったらどうするのよ!」

「それは、あなた方が私をここに引き止めているせいです・・・現象は装置を中心に起こる――私を、惑星外に出してくれれば」

「装置を返せば済む話だろ」

 ケントが、低い声で言った。

それと同時に、話は終わりだと、緊張の糸が更に強く張り巡らされる。しかしそれでもザヴィエラは、やれやれと首を横に振ると、そうちをローブの内側にしまいこんでしまった。


「・・・生憎と私には時間がないのです――今日という日に連鎖の儀式を執り行わければならない――」

と、言いながらにザヴィエラのローブの下が気味悪く蠢き出したのが分かった。まるで蛇でも飼っているかのように何かがウネウネと半身を這っているようである。

「な、なに・・・?」「気持ち悪・・・」ミカとケントが声を漏らす。

「あの事故で、便利屋には鉱物が埋め込まられたらしいが・・・――私には、そんな生易しいものではなかった」

心臓部のローブを突き破って、刺々しい蛇の頭が飛び出した。シャーと威嚇の声が響く。

「私の半身には、見ての通り化物が埋め込まれた――これがまたやっかいでね、この状態で生きており、なおかつ獰猛なのだよ」

「うへぇ・・・どうなってんだよ、あいつの身体・・・」

「しかもアレ、ただの蛇じゃないわ――ハーフドラゴン、蛇竜っていわれる、宇宙でもすっごく危険なドラゴン族よ・・・」

 役立つ情報ありがとうと、皮肉交じりに肩をすくめるケント。そんな彼にザヴィエラの半身から伸びた蛇竜が迫って、挑発的に下をチロチロと出しては引っ込めた。

「私と此奴らは身体を共有していてね――一斉に暴れだしたら――止めるのに一苦労なのだよ」

ビリッ!!シャー!シャー!

 またしてもローブの下から蛇の頭が飛び出した。それもこんどは4つもである。そうして合わせて5つの頭を不気味に動かして、ヘビたちはケントとミカを見やった。。

まるで餌でも見定めるかのように、細い目が刺さる。

「行け」

刹那、5つの蛇頭は一斉に二人に飛びかかった。


              ※


「よし、これでいいはずだ」

 どこかの物陰に隠れながらにドリューは胸をなでおろしていた。

ハリネズミから借りた隊服が少し汚れてしまったが、それでもなんとか動力炉を使えなくすることには成功したようだ。と、言っても慌ただしい中の目を盗んで、計器をいじったり、ちょっと爪で引っ掛けてみたりしたぐらいで、正直、その結果としてどこまで異常が起きるかは計算できてはいなかった。

 しかし、結果的に予備動力へと代わってくれたようで、どうにか任務達成だと「やれやれ」と肩を落とした。

「あ、そうか、脱出用の船もだっけ・・・。うーん、でも流石に全部は無理だよね」

思い出して呟いた。

もうひとつ任務としてザヴィエラの退路を断つためにも、戦艦に積まれれた航空船も使えないようにする、と、これまた難しい注文を受けていたのだ。

「どうしたものかなぁ」また、呟いたドリューだったが、ふと窓が見えて空を眺めた。

そこには、ちょうど高速で飛ぶリバリー号が見えた。それも戦艦の上部を目指しているようだった。


                   ※


「ミカ!撃つなら一番弱くして撃て!操縦機類に当たったら舵が効かなくなるぞ!」

「そ、そんなのわかってるわよ!だ、だけど・・・!」

 ミカは銃の出力を最弱にしようと操作し始めるが、そこへ蛇の一匹が牙を鋭く迫り、一睨みカマせたのだった。おもわず「ヒィ!」と声を裏返らせてしまったミカ。

バシ!

と、それをケントが一発、殴り飛ばすと、蛇はザヴィエラの半身へと戻っていった。それでも他の4匹の蛇竜たちは次は自分の番と舌をチロチロさせている。

「なんて声出してんだ」

「あ、ああいうニョロニョロしたの・・・苦手なのよ!」言い訳のミカだが、更なる攻撃が迫りつつあるのに急いで身を立て直した。

「苦手なら、全部、その鉄砲で追っ払え!」

「い・・言われなくても!!」

 今度は二匹同時に飛びかかってきた。一匹はケントに、そして一匹はミカに。

ケントは腕を赤く燃やして飛びかかってきた大きな蛇を軽やかにキャッチして見せた。一方でミカは、慎重に銃の狙いを定めて、照準の中心に蛇が重なった、その時。

引き金を引いた。

バシュ!――・・・・ドカン!!

一筋の黄金の光が蛇を貫き、向こうの外壁まで貫通し穴を空けた。

「!?」撃った本人が顔を引きつらせた。

「嘘でしょ?!一番弱くして撃ったのよ?!あんたのお兄さんのヒィアートどうなってんのよ?!」

まさか壁に穴が開くとは思っておらず、冷や汗混じりにミカがケントを怒鳴った。

「――それでも、一匹――やっつけたろ!」

 ケントは自身に襲いかかる蛇竜をなんとかいなして距離をとると、ミカの方に近寄って、まもりを固めた。

「・・・あと三匹か」

「でも、強すぎてビームは乱用できないわよ、装置に当たっちゃうわ」

こそこそと話し合う二人。向こうからはザヴィエラガ薄ら笑いを浮かべて、また半身から蛇竜を蠢かしながらに様子を伺っていた。

「なるほど、恐るべき威力の銃だ――メガットの発明か」

「残念、わた」

『ミカくんとの合作だよ、ザヴィエラ』


その瞬間、ミカの声を遮って新たな声が響いた。

無論、三人と共に驚いて、声の主を探して辺りを見渡した。

『無駄だ、私は『まだ』そこにはいない――ようやく電波の届く宙域にまできたところだからね』

「博士!?」

 ミカは声が己のポーチから出ていることに気がついて、急いで弄っては発生源である地図ツールを特定して、それを印籠のように正面に抱えた。

『・・・すまないミカくん、あの修理の時、すこしだけ手を加えさせてもらったのだよ。――念のためにと特殊通信機能を取り付けさせてもらった』

「通信!?それじゃ私の会話とか・・・」

『聞こえてはいたが、さして浮ついた会話もなかったのが残念だ。せめてケントくんと宇宙船でふたりきりの時ぐらい――』

地図ツールが、ミカの握力でミシミシと軋みだした。

『ま、待て!ミカくん!早まるな!私にはザヴィエラの真摯がわかったのだ!』

「本当か!?」

ツールの向こうで慌てた声の博士にケントが嬉々とした声で言うと、ミカの握力が元に戻った。


『・・・君たちと便利屋との会話が聞けて、謎は全て解けたよ――ザヴィエラ・・・お前は死を恐れているな』ツールからの声が一段低くなった。

「さすが我が友、ならば私の願いもわかっているだろう?」ザヴィエラから猫なで声で言った。

『一度は介入機の悪影響に巻き込まれておいて、なおも己の欲望に固執するか――それも介入機を私に造らせるとは』

「君が私より優れているのは、私がよく知っている――」ザヴィエラの瞳がギラリと光った。

『・・・・・・お前は前に作った介入機で未来を見たのだな・・・そして、己の死を見た――正確には死の刻を見たのだろう?』

「その通りだよメガット――・・・あの時見た未来が真実ならば・・・本日、間もなく私は死ぬ」

「はぁ!?」「死ぬって?!・・・だったら放っておいても」

ケント、ミカと思いがけないザヴィエラの言葉に目を瞬いた。

『ミカくん、だからこそ奴は介入機を欲しているのだ』

「だからって介入機で延命はできないだろう?」ケントが問いた。

『延命ではない――継承だ。それこそがイーサンティ族の失われた儀式だ』

「知識とかを受け継がせるとかっって聞いたけど・・・そういう意味?」今度はミカが問いた。

『半分正解だミカ君。正確には知識だけでなく、行ったものの全てを継承するのだ――記憶も、人格も、そして心さえも』

「よく調べたなメガット」ザヴィエラが気味の悪い笑顔を見せた。

彼の半身でうごめく蛇竜たちは、同じように笑ったように下をチロチロしている。

「ちょ、ちょっと待った!それじゃあいつはラージ兄ちゃんを乗っ取るつもりなのか!?」

『そうだ。だが、儀式自体は失われて久しい・・・そのため儀式完成のための最後の一手がわからないのだろう――それも死が近いため形振り構わない』

「解説は終わったか?これで私が介入機を欲した理由がわかっただろう」

そう言うと、ザヴィエラはおもむろに介入機を取り出すと強く握りしめた。

「ケント!」

「それで誰が納得するか!!」

 ミカの声を背に受けてケントが赤に染まって飛び出した。

ザヴィエラの掌で球体が奇妙に動き出す。壁に開いた穴の向こうの空では青白い稲光が走っていた。

「うぐ・・・!」

と、ケントは拳を突き出してザヴィエラに迫ったが、残った蛇竜達に絡め取られて身動きが取れなくなってしまった。

「ケント!」叫ぶミカだが、ザヴィエラがまだ介入機を触っているのに気づいて銃口を向けた。

 だが、それも遅かったか空に今一度稲光疾走ると、見える範囲の空を見えない何かが刳りとっていったのがわかった。雲が蜂の巣ように穴だらけになり、のんびり飛んでいたモモイロガラスが危険を察知してとんずらしていく様が見えた。

「や、やめなさい!!あんた船ごと消えるわよ!?」

『無駄だミカくん、もはやザヴィエラには儀式完遂のことしか頭にないだろう』

「・・・そうか、ようやくわかったぞ。まったく、同じものを作ってこうも造りが違うとはな」

すると、ザヴィエラが呟いた。

掌の介入機がこれまでとは違い、けたたましいほどの駆動音を上げているのにミカは目を見張った。

キィィィィン!!

あきらかに始動し始めた介入機に息が詰まる。

「うぉおお!!」

瞬間、ケントが吠えた。纏わりつく蛇竜に噛み付くことによって、拘束を緩ませ力任せに放り投げた。そして、蛇竜とつながっていたザヴィエラの身が少々体勢を崩したのを見逃さず、ケントはすかざず手をのばした。

ガシ!

「なに?!」

「やった!!」

ケントの手中に介入機が収まった。

「触るなぁ!!」

 次の瞬間、ザヴィエラが吠えた。

再び蛇竜達が一丸となってケントに迫ると、獰猛な牙を光らせた。

ケントも回避か防御をと考えたが、介入機の保護が優先だとそちらに意識を飛ばした。結果、蛇竜達の牙は避けきったものの、続いての猛烈な体当たりは防ぐこと叶わず、そのまま吹き飛ばされてしまった。

「ケント!」ミカが叫んだ。

 ケントは介入機を持ったまま、砕けた外壁を超えて、急風吹き付ける、戦艦の外まで飛ばされてしまったのだった。

「チィ・・・ッ!!」

ザヴィエラが舌打ち混じりに歯ぎしりすると、蛇竜達を操って、その身を戦艦の外へと運ばせた。ズルズルと気味悪い這いずり音を響かせて、ミカの前を通り過ぎて行く。

「ま、待ちなさい!介入機を持って無いなら、問題なく撃つことでき」

「うるさい!!」

ミカの声を遮ってザヴィエラが一括。半身より伸びた竜の一匹が一瞬にしてミカに迫ると、身をうねらせミカを薙ぎ払った。

「きゃ!」

『どうしたミカく・・・――な・・・に・・・』

司令室の床を転がって、ミカが痛みに声をあげる。そして、それと共に地図ツールも放り出され、衝撃によって博士からの通信は途絶え途絶えになってしまうのだった。

「け、ケント・・・」

 全身を疾走る痛みを我慢しながらに、ミカはザヴィエラがケントを追って船外へと向かうのを睨むのだった。


「う、うおおぉ!」

 ケントは、船外の翼部分に這いつくばって、急風に飛ばされまいと必死にしがみついていた。手にはまだ介入機を持ったままである。

 巨大戦艦の翼の上からは、戦艦の装甲がところどころ抉られているのが見える。どうやら先程の現象の余波を受けたようである。

「ドリュー・・・無事だろうな」呟くケントだがすぐにでも蛇竜達と主の視線が痛いほど飛んでてきて、なんとかバランスを取って立ち上がった。

相手は、蛇竜達を支えに強風吹き荒れる翼の上でも平然と立っていた。

「お前がラージャックの身内だろうと関係ない、装置を渡せ――無知には使えぬ代物だ」

「そんなこと言っていいのか?ここから放り投げることもできるんだぞ?」

ケントは強がってみせると介入機を高度数千メートル上空から捨て去る仕草を見せた。

「そんなことをすれば、地上にぶつかった衝撃で、これまでにないほどの破壊現象が引起こされるだろうな」

「・・・うぐ」

ザヴィエラに返されて声を紡ぐケントは、そっと介入機を謝って落っことさないような位置にまで引き戻した。

「無駄だ」

瞬間、己の表情さえも蛇竜が如く険しさを見せたザヴィエラが一声。のこった蛇竜達を同時に動かした。

半身より伸びて気色の悪い体躯がズルズルとケントに迫っていく。

一匹目が迷いもなく猪突猛進で体当たりを敢行した。が、ケントはそれを意図も容易く飛び上がって回避してみせた。しかし、それがいけなかった。

「!?」

 既に飛び上がることを読んでいた二匹目が、己の身を鞭にしてケントを叩き落とした。

バシン!と鋭い音を立てて翼の鋼鉄装甲に叩きつけられるケント。彼の身は向こうへ転がって先端近くにまで達してしまう。そこへ三匹目が迫った。

ガツン!

 三匹目はケントの側の装甲に頭突きをした。すると、それに伴って装甲に罅が走り、先端にいるケントの足場がメキメキと崩れ始めたのだった。

「・・・う・・わッ!?」

 次の瞬間、音を立ててケントのいる足場が崩壊した。このまま地上まで真っ逆さまに落下をするわけには行かないと、慌てて、本体側の切り出した部分を掴んだケント。

なんとか、落下を免れたものの、その拍子に介入機を手放してしまっていた。

パシ!

「あ!!」ジタバタするケントの視線の先で、蛇竜の一匹が、放り出されて無防備だった介入機をくわえ込んだのが見えた。

 蛇竜は、そのままスルスルと主の元に戻っていき、介入機を奪還成功を果たすのだった。


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