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スーパーギャラクシーズ 小さな大冒険  作者: モリサワツカサ
第十章 牢獄衛星を脱出せよ
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第十章 牢獄衛星を脱出せよ

ドリューとジョットは異様な光景を目の当たりにしていた。惑星というよりは、大きな岩石の上にやってきたとも思えた。手錠されたままに歩かされて、目に入ってくるのは小さなに岩星に不釣合な振り合いな、きれな立方体の鋼鉄建造物。重々しくと佇み、ひとつだけ備えられた出入り口の門で二人を迎えていた。

「入れ」銀髪の男が言った。

ジョット曰く、男は政府軍の白い軍服を来ていることから、軍人であり、それも位の高いものであるらしい。鋭い眼光と、腰部に帯刀した剣の鞘が同じようにギラリと鈍く光ったかとも思うと、また一度口を開いた。

「刑が決まるまで、このバシリアで過ごしもらう」

「・・・バシリア!ここが!」

ジョットが言った。横のドリューは、わからないと首を傾げた。

「なにそれ?」

「・・・・・・牢獄衛星。この太陽系の中では最悪と言われる刑務所だ」

ドリューはその応えに血の気が引いて震えるとサングラスを落としそうになった。黙して建つ建築物が牢獄だとわかると、余計に不気味さを増したように思えた。眼前に迫る入り口の門も、もはや地獄の入り口にしか見えなくなっていた。

「連れて行け」銀髪男が声が飛び、部下の兵士がドリュー達の足を進めさせた。

ドリューは「嫌だ!」と叫びながらも引きずられて入り口をくぐった。一方でジョットはゴーグル越しに銀髪男を睨んだが、それだけで、あまり抵抗はせずに兵士の指示に従い牢獄へと踏み入れた。そうして、ジョットは僅かにだけ振り返って、自慢の船、リバリー号が押収の名のもとに、ここまで牽引されてきていることを確認した。


                 ※


 ケントとミカは暗い空間を出て、カジノを通るでもなく地上を目指して細い廊下を歩いていた。前には先導するクィーンと、脇には水槽付き乳母車に乗ったメガットが付き添っていた。

「ザヴィエラはアメイジ星に住むイーサンティ族という知能の高い種族だ。この種族からは過去にも様々な偉人が誕生していてね・・・他の太陽系でも主に政治経済の分野ではイーサンティ族が活躍している。無論、首相やトップの地位に立った者も多くいる」

「ふーん。でも、それなら、そのザヴィエラは何で大統領になってないんだ?」

「お父さんの人望の勝利ね」メガットとケントの会話にミカが、自慢げに割って入った。

「あの副大統領、仕事はできるけど顔が怖いもの」

「顔で大統領が決まるのかよ」それは無いと言った顔を見せたケントが、ミカは無視するとポンと手を叩いて、頭に豆電球を浮かべた。

「きっとそれよ!あいつ大統領になりたいのよ!それで時間を操ってお父さんを事故か何かに巻き込むつもりよ!」

「・・・うーん。単純すぎないか?それに、大統領を襲うだけなら時間をいじらなくたって」

少しだけ頭を捻ったケントだったが、次にメガットから「いや」と聞こえて視線がそちらに向いた。

「的外れとは言えないかもしれませんな。ザヴィエラには大統領になろうという野心が確かにあった。しかし、それが今は副大統領という地位に甘んじている――まぁ、オッド閣下の人徳の成すところもありますが――、それに問題は、何故不安定な介入機をそこまで信じられるのか…」

メガットが声を詰まらせたのにケント達も声を噤んで顔を見合わせるだけだった。

そうして僅かに無言の時間がすぎるころ、前をあるくクィーンの足が止まった。三人もまた足を止め、クィーンが目の間に現れた扉に手をかけているのを見た。間からは陽の光が覗いている。この先は地上なのだとミカもケントも、少々気持ちが早った。そこへ。

「ミカ・フェリアお嬢様、ケントくん、私はここまでだ・・・隠れている身ゆえに用心しなければ」メガットが寂しそうな目をしていった。

「ケントくん、君のソーン流なるオーラ武術をひと目見たかった―・・・―そうだ、武術の中には『酔えば酔うほど強くなる』という幻の武術があると聞いたことがあるが・・・」

 するとメガットは別れ際にと、最後に聞きたかったことを思い出しながらにケントを見やった。ケントも博士の言いたいことがわかったのか「あぁ」と呟いた。

「・・・たしか、古代語で、そう――ドランクモン」

「酔いどれ殺法のことだろ?」

 二人の言葉がほぼ同時に重なったが、ミカとクィーンはケントの出した名前が余りにも滑稽に聞こえて顔をひきつらせていた。

「ほぉ、実在するのか」

「俺は未成年だから無理だけど、師匠はときどき使ってるよ。強いは強いんだけど、スタア姉ちゃんが『パソコン借りるね』って言うだけで、ソワソワしだしてすぐに酔いが覚めるんだよ」

なんでだろうな?とケントが問いかけたがミカは軽蔑の目を現しており、クィーンは黙ったまま。そして、メガットだけは全てを悟って「外部メモリに保存しておくのも手だ」と呟き頷いていた。

 そうして、どうにも身のない話を最後にケント達はメガットと別れ、光あふれる地上へと出ていくのだった。


「なんだここ?!砂漠だろ!?オアシスだろ!?なんで凍ってるんだ!?」

 ケントはこの星にやってきた時は気絶していていたので、このオアシスのことを知らなかった。そのため凍りついた泉や、ヤシの木、なぜか置かれたベンチなどに、あれこれと言を飛ばしていた。しかし、ひとしきり騒いだところで、改めて凍える寒さに身を震わせた。

「は、早くしよう・・・風邪をひく」「珍しく同感よ」両腕をこすりながらにミカとケントがクィーンを促した。

「私より厚着のくせにだらしのないやつらだな」

 コートの下は半裸に近いクィーンが「ふん」と鼻で笑うと、凍った泉を軽く見渡してピタッと視線を止めた。その先にはリクライニング式のベンチに横になる色黒のクマがいた。陽気なサングラスを掛けメロンソーダを飲みながらに、横で同じく仰向けに寝転がったフグ族の男と喋りたくっていた。

「どうなると思う?今年のギャラクシアンボウルの行方は?」

「そうだな、わしが思うにピピンズはかなりの戦力アップを図ってきたと思うぞ・・・これには流石の王者・フェアリーズも苦戦を免れんだろう」

「ポーリッド」クィーンがクマの方へと呼びかけた。が、クマは、まったく気がつくことはなく、そのまま喋り続けている。

「ふーむ、しかしフェアリーズもランニングバックを強化したぞ?バイソン族の、ヴィフって言ってな」

「ポーリッド!!」「それで―――…!、!!、ボス!?」

 クィーンの刺さるような大声にようやく気がついたクマが飛び上がってベンチから転げ落ちると、そのまま慌てて手足を動かしてクィーンの全力疾走してきた。

「ぼ、ボス!何か御用でしょうか!?」

「・・・――なにをやっている?お前は受付だろうが?」

 クィーンの冷たい視線にポーリッドが全身から冷や汗を吹き出した。

「いや、ちょっと・・・休憩時間をと、思いまして――ボスもどうですか?」

 そう返したポーリッドだったが、刺さるような氷の視線が飛んできた口をつぐんでしまった。俯いたポーリッドに「減給、か、即刻クビ」との囁きが聞こえて、彼の目に涙が浮かんできた。

「お!お願いします!それだけは!これからは心を入れ替えて一所懸命に・・・!」

「そう思うんだったら、さっさと私の預けた船を出せ!!」

 クィーンが一喝。ポーリッドが、一瞬、ポカンとした顔を見せたがすぐに思い出したように手を叩いた。

「あぁ!あの小さいの!この間、隠したばかりなのに、もう使うんですかボス?」

「・・・――私ではない」

 クィーンが首をクイッと捻らせてミカとケントの方を示した。そこには、凍れるオアシスよりヌルイ砂漠のほうがマシだと、砂漠側に立つ二人がいた。

「ミカ!ケント!お前らか!」ポーリッドが飛び上がって近寄ってきた。

「どうなってんだよ?あの、なんとかって博士に会えたのか?」

「まぁね、それで今度は実家まで帰らなくちゃいけいないのよ、それも副大統領が首都星にいる間にね」

 ミカが、そこそこに理由を明かして言うが、ポーリッドは「そ、そうか」と納得していない頷きを見せた。

「な、なぁ、頼むよ。俺の休暇も無制限じゃないんだ、あと、この中途半端な気温も気持ち悪いし」砂漠の風を受けてケントが嫌そうな顔を見せていた。

「よ、よし!わかった!それにボスの命令だ…――おい、そこちょっとどいてろ」

 と、ポーリッドはうってかわって頷くと、二人にその場から少し離れろと指示して自分はオアシスの受付席まで走っていった。

「これで、と」

 するとポーリッドが席の下から何かを取り出すとカチッという音と共に、ミカとケントの足元が揺れだした。

ゴゴゴ、と地鳴りを響かせて砂が隆起していく。そうして足元がパカっと外側に割れたかと思うと砂場を迫り上げて、何かが二人の前に現れたのだった。

「それがメガットの船だ」クィーンが言った。

 現れたのは小型の宇宙船であった。楕円形の卵のような形で緑のボディカラーに黄色のラインが走っている。窓らしい窓はなく、コックピット部分のフロントガラスぐらいしか透過している箇所はない。なにより、メガットが乗ってきたということで、中もまた狭苦しく感じられた。

「リースだから、くれぐれも傷つけるなと言っていたな」

「・・・・・というか、どうやって返す気だったんだ?」

 クィーンからの博士の伝言にケントが呆れた声を出した。脇でミカは早々に乗り込もうと、ハッチを開けると小柄なコックピットに乗り込んだ。あきらかに一人が乗ってちょうどいいサイズである、詰めれば二人乗れないことはないが、かなり窮屈であった。

「・・・よし」ミカがハッチに手をかけた。

「自然と置いていこうとするな」それを手からオーラを発しながらにケントが阻止した。

「狭いのよ!」「詰めればいいだろ!」

 ケントは無理矢理にでも乗り込むとミカの後から掴まる形で、なんとかコックピットに収まったのだった。しかし、やってみてわかったが、ほとんど身動きが取れない状態であった。顔と腕が少し動かせるくらいで、足は全く伸ばせないでいる。しかも腕を動かせば必ずミカにぶつかる。

「動くな!触るな!介入機が入ってるのよ!」

「さっきそれで殴っただろ!」

 騒ぐ二人を見ながらに、クィーンは代わりにハッチを閉じてあげようと手を伸ばした。そうしてグッと力を込めてハッチを閉じ始める。

「・・・そうだ、私からもひとつ情報をやろう――手を抜いた詫びだ」と、言いながらにクィーンが口を開いた。無論、それには騒いでいたミカとケントも動きを止めてそちらへと耳を傾けた。

「ストログを警戒していたのは当然だが、メガットはもうひとり気を付ける人物を言っていた」

「・・・ザヴィエラのこと?」ミカが問いかけたがクィーンはクビを横に降った。

「いや、その副大統領の秘書で直属の軍を指揮している人物だ。数年前に雇われたらくてな、腕は立つかわからんがかなりの切れ者らしい・・・たしか、名前は――」

 珍しく、考え込んだ顔を見せたクィーンが短い記憶探しのあとでパチンと指を鳴らした。

「――ラージャック」

 ケントの目の色が変わった。


                    ※


 頑丈な特殊鉄格子に入れられてドリューとジョットは疲れ果てた顔をしていた。牢獄衛星の中は、囚人たちの呻く声で溢れており、とてもだが一休みつくような場所ではないことを思い知らされた。

「どうやっても開かないね」

ドリューは自慢の爪を格子に立ててみるも、まったく刃が立た少し痛い思いをして、すぐにジョットへと振り返った。ジョットはというと、深く考え込むように顎にて手をつけて無言を貫いていた。そしてゴーグル越しに渋い表情が見えたかと、ようやく少し口を開いた。

「・・・おそらくあいつらは軍の中でも大統領、副大統領直属の部隊だ。それにあの銀髪、連鎖の印を着けていた」

「え?なに?連鎖…の印?」初耳の言葉にドリューが言った。

「副大統領ザヴィエラ。やつの種族に伝わる英雄の印だ。親から子へと受け継がれるものだが、やつには子はいなかったはず・・・――」

「つまり、あの人が副大統領の子供・・・――養子って事?でもそれがどうしたの?」ドリューが首を傾げる。

「本来は、死の間際や死を悟った時に代替わりの意味を込めて贈る習わしなんだが・・・現役で勤め上げている現状で渡す意味がわからん」

「うーん・・・早めに渡しておいて損は無いとか?」

「――あとは、どうにかして自分の死期を知ったかだな」ジョットが「あり得ない」と鼻で笑って言った。

 ドリューは、銀髪の男を思い返してジョットの言う『連鎖の印』なるものを思い返してみた。容姿端麗ながら鋭い目つきを思い返される、そしてそのすぐ下に、首元にたしかにペンダントのようなものをぶら下げているのを思い出した。なにか銀縁の柄の入った輪に宝石を埋め込んだようなものであった。

「・・・うーん、あの人どっかで見たような」

 そう思い返していく中で、ドリューは。銀髪男の顔がどこかで見たことあるような気がしてきた。どこか、身近な。自宅、学校、ガガノートの町中、ドリューの道場――。

しかし、そう思考していたドリューだったが鉄格子の向こうから誰かの声が聞こえてきてそちらに意識を傾けることになった。

「あの御令嬢見つかってないんだろ?」

「あぁ、便利屋の船も探ってるがほとんど骨董品の塊みたいだ」

看守である兵士が二人、鉄格子の向こうで喋っていた。ジョットは骨董品という言葉に苛立ちを見せていた。

「まぁ、でもトンネルから落ちた可能性もあるらしいからな・・・だとしたら絶望的だな」

「それだと隊長もガッカリだな、せっかくザヴィエラ様からたっての希望なのに」

片方の兵士が肩をすくめて言った。

「ベッタリだもんなラージャック隊長――、それに今からわざわざ報告に戻るんだろ?」

「あぁ、そうらしい――それもメーザードにだ」その言葉を聞いて、反対の男が疑問符を浮かべた。

「メーザード?魔法惑星か?副大統領は首都星にいるんだろ?」

「さぁな、そういう指示らしい・・・また、あのメガットとかいう博士に会いにいったんじゃないか?」

 それを聞いた瞬間、ジョットがゴーグル越しに目を見開いて鉄道史に掴みかかった。これでもかと近づいて話の続きを聞こうとしたが、外の二人は通信が入ったのか、慌ただしく去っていってしまった。

「おい!待て!!」ジョットが叫ぶが、兵士は帰ってこず他の囚人たちの呻きが返ってくるだけだった。「くそ!」と吐き捨てて鉄格子を力いっぱいに殴りつけた。

「ジョット、どうしたの?」ドリューがあまりの険しさを見せるジョットに恐れるように問いかけた。

「・・・わかったんだ!傭兵を雇っていたのはザヴィエラだ!」

「え?ええ!?」突如のことにドリューが飛び上がった。

「ミカが探していたのはメガット博士だな?そしてザヴィエラも博士を探していたんだ!やつにとって己以外に博士を探すものは邪魔だったんだ!」

「ど、どうしてそんなことが言えるの!?」

 ドリューの言葉に、口早に言っていたジョットは僅かに落ち着きを取り戻すと、声量を元に戻して話を続けた。

「――俺は昔、ザヴィエラと仕事をしたことがあった。その時にメガット博士とも顔を合わせたことはある……奴は、博士が造っていた何かの装置を、博士より早く作り上げることに執念を燃やしていた」聞き続けるドリューだが、未だに話が飲み込めないでいる。

「その時は、特に何も思わなかった。ただ奴が必要としている物質なり古代ツールなりを運んでくる仕事だったからな・・・。そうしてザヴィエラは、遂にはその何かを完成させた・・・いや、させたはずだったと言うべきだな。欠陥だったんだ」ジョットの声が一段と重くなった。

「出来上がった装置を使った瞬間、装置は爆破四散した――そのせいで俺も…――俺の――」言いながらにゴーグルを少し撫でて息を呑んだ。

「・・・・―――おそらく、博士は奴が失敗した装置を完成させたんだ。ザヴィエラはそれを追っている」

「そ、その装置って何なの?」

ドリューが訪ねたがジョットは首を横に振るだけであった。そうして深くため息をついたあとで、ようやくドリューに視線を合わせた。

「――ザヴィエラの真の狙いが何かわからんが、もしもミカが無事なら探す方法はある」

「ほ、本当に?!」

 その声に今度は首を縦に振ったジョットは、リバリー号があるであろう一点を睨んだ。

「一応はまだ便利屋の客として契約中だからな――そしてバルンには契約者の位置情報を特定できるようにしてある・・・契約者が死んでいなければだがな」最後の一言で望みが薄くなったが、ドリューには目に輝きが戻ったようだった。

「それなら早く調べようよ!」

「あぁ、そのためには、いわゆる『脱獄』を成さなければな・・・――またひとつ罪が増えるな」

 そう言って、ジョットは小さく笑った。


                    ※


「・・・なによ黙りこくって、そんなに自慢のお兄さんが副大統領の部下だってのにご立腹なわけ?」

「…――別に」

 ミカが後ろを振り向きもせず問いかけると、すぐ後ろからケントの小さな声がした。

二人を乗せた小型宇宙船は既に砂漠星ハッタハッタを飛び出して、宇宙空間を泳いでいた。ミカは、博士が聞いていたであろう大音量のステレオ(チャキチャキの演歌が掛かっていた)をいじってラジオに替えた。ノイズ混じりの声が途切れ途切れに聞こえてくるが、ケントはまだ無愛想な態度のままだった。

「あんた言ってじゃない?お兄さんが、『偉いさんのところで働いている』って、その通りじゃない?」

「副大統領が傭兵を仕掛けてくるようなやつだと知らなければ、手放しで喜んでたさ」

 クィーンからもたらされた『ラージャック』がケントの兄弟子である『ラージ兄ちゃん』であるとわかってからのケントは、どこか不機嫌であった。ケントにとって憧れの存在だった人が、どこか音を立てて崩れ去る寸前に来ているのだと感じ取ってミカは溜息をついた。

「……お兄さん、ザヴィエラの秘書なんでしょ?ということは一緒に付いて回ってるはずよ、だから一緒にトキエイドにいるはず。ばったり会うなんてしないわよ」

「――だと、いいけどな」と短く返したケントは、そのまま大きく溜息を吐いた。それまで突っかかっていた何かが、ほんの少しだけ退いてくれたかのように狭いコックピットで背伸びをした。もちろんすぐに天井やら壁に当たって痛い思いしてしまう。

「いてて・・・なぁ、まだ着かないのか?最高クラスのエコノミー症候群になりそうなんだけど?」

「動くなっての!」狭苦しさにもがき始めたケントに苛立ってミカが言った。「ドリューとジョットの情報を探してるのよ!」と、続けて言うとケントにスマートツールが見えるように手を伸ばした。

「あぁ」と、それに頷くケントだったが、すぐに「ちょっと待てよ」と首を傾げた。

「・・・なぁ、確か魔法族はヒィアートツールに振れると反発して暴発すんじゃなかったのか?」ミカが安々とツールを操っているのにケントは思い出したように言った。

「あら?珍しく学習しているじゃない?そうよ暴発するわ――けど、それは血の濃い種族に限ってよ。血の薄い・・・まぁ、つまり普通の人間に近ければ近いほど反発力は減るわ。その分ツールだって使えるってわけよ」スマートツールを振りながらにミカが後ろを見ずに応えた。

「・・・ふーん、じゃ、お前は普通の人間と変わらないのか。魔法族である意味ないな」

「向こうに着いたら、真っ先にあんたを混血最高裁に突き出してやるわ」

 冷たい声が船内響いたと。するとそれと同時にミカは触っていたツールの手をピタッと止めたて、そこに書かれているニュースを呼んだ。

「星間列車で強盗・・・犯人は便利屋を名乗る鳩族とモグラ族の二人組――――その場で星間警察及び政府軍が捕らえ、バシリア刑務所へ・・・。あの蜘蛛傭兵ども、ドリュー達に罪をなすりつけたわね」

 文を読むミカの手が強くツールを握りしめた。後ろでケントも同じ思いだが、二人が無事であることにホッとしていた。

「捕まってるけど無事ってことだ…!それなら俺達が証人になればいいわけだ!」

「えぇ、そうね!大統領の娘の証言は絶対に無視できないわ!」

 ミカの職権乱用的な台詞は置いておいて、ケントはとりあえずは意気投合と声を張り上げるのだった。


                 ※


「・・・よし、作戦はこうだ」ジョットがドリューに向けて静かに言った。脱獄のプランだと悟ったドリューはもっとよく聞こうとジョットに近づいた。

「こいつを使う」

 と、ジョットはゴーグルの耳上部分に取り付けられたつまみを回した。するとまるで鳩時計の鳩が飛び出すように、ゴーグルの一部がピョコッと開いて中から小さなカプセルのようなモノが出てきた。それを手にとってジョットがじっくりと見つめた。

「な、なにそれ?なにかの豆――」

「豆鉄砲さ。ショック性のな。潰すと強い光を発して、目にした相手の動きを短時間だが止めることが出来る・・・もともとは追われて逃げる時に使っていたものなんだが」どこかニヤリとしてジョットは続ける。

「いいか?まず看守をひとり呼び寄せる。そしてこいつで動きを止めている間に警棒を奪う。牢屋の鍵なんか上手いこと持ってるいわけないからな」

「警棒なんか奪ってどうするの?」ドリューの質問に、鉄格子の向こうに聞こえる見回りの足音に気にしつつジョットが応えた。

「ここの看守が装備している警棒は特別なヒィアートツールだ。なんせここに入る連中は獰猛な奴らが多い・・・そいつらを抑えつけるのに唯の棒っ切れで叩いても無意味なだけだ。そのために強化されているんだ――電撃に超高温化。さらには岩石族のようにタフなやつ用にドリル式にして削るなんてものも追加されている」

ジョットが言うと、見回りの足音がこちらに向きを近づいて来たのに気がついた。

「・・・――ドリュー、看守をひきつけてくれ。俺が豆を潰す」

「え?えぇ!?急に言われても」「急げ!」渋るドリューに、ジョットが声を小さくしながらも怒鳴った。早くしなければ、看守がまた別方向に向かうとも限らない。ジョットからの強い眼差しを受けて、ドリューは意を決して頷いた。


「す!すいませーん!!あの!!友達がお腹痛いって!!」

 ドリューは腹の底から声を出した。すると、餌付けでもしたように、ひとつの足音が引き寄られてきた。やってきた看守は2メートルはあろうかという大男で禿げた頭に皺が多く、四角張った顔から見下した視線でドリューを睨んでいた。

「なんだぁ?モグラの坊主?腹が痛いって?」

「はい!友達が!」横をちらりと見て、踞るような姿勢をしたジョットを教えた。

「・・・へへ。鳥の糞でも引っ掛けられたか?そりゃ気の毒にな!いいか!そういう時は、一度ふやかしてだな、ぬるま湯のタオル」

瞬間、目を覆うような真っ白な閃光が牢屋を塗りつぶした。

 何かタメになることを言いかけていた看守は、何度も目をパチクリとし、口を阿呆のように開けたままで動きをしなかった。見たままにショック状態であった。

「サングラスしてても眩しいんだね」「警棒を取れ!すぐに応援がくるぞ!」

と、幸い二人共に閃光から目を守る装備していたため、ショック状態には陥らずすぐに行動に移れた。ドリューは言われるがまま急いで看守が腰部にさしていた警棒を、力任せに引っ張った。ベルトに接続されていた結合部をブチッと鋭い爪でちぎると、警棒をそのままジョットへと渡した。

「これか!」ジョットは警棒の手元に備えられたボタンを1つ押してみた。それと同時に警棒の先が伸びて長細くなると、バチバチと電撃を纏った。見ながらに頷くと、ジョットはそのままショック状態の看守を睨んだ。

「ドリュー!そいつの口を抑えておけ!」「え?う、うん!」ドリューが、また言われたとおり、動きのない看守の口に手を当てた。そこへ。

バチッ!!

「いて!!」電撃が看守を伝ってドリューの手にまでたどり着いた。思いがけない電流の痛みに思わず声を上げてしまったドリューは、看守から手を離してしまっていた。

「す、すまない計算しきれなかった・・・が、とりあえずは上手くいった」

 そう言うジョットは、電撃で完全に失神した看守を確認しながらドリューにあやまると、今度は持っていた警棒の違うボタンをおした。

 警棒はおぞましい電撃を消し去って、熱を帯びて橙色に輝き出した。超高温化である。

「原始的だが・・・確実だ」ジョットはそれを鉄格子に押し当てた。

みるみる格子が熱を伝えて橙にそまっていく。警棒の高温下の出力が上がれば上がるほど、鉄格子も赤みを増していく。そうして今にも溶け出すのではないかと思うほどになったとき。

「よし!」ジョットの嬉々とした声とともに、鉄格子がぐにゃりと折れ曲がったのだった。折れ曲がった鉄棒を、人一人が通れるぐらいに広げて、もう一度「よし」と頷いた。

「これで通れる!行くぞ!」

「は、はい!」

鉄格子にもたれかかった看守の巨体を目くらましに二人は牢屋を這い出た。その際にまだ熱をもったまま鉄格子にこすって二人共に体毛を焦がすという熱い被害を受けてしまった。

 そうやって、なんとか牢屋を出たのも束の間、あらたな足音が近づいてくるのが聞こえた。

「こっちだ」ジョットが口早に言った。

 逃げたのがバレるのもすぐだろうと、次なる手のため二人は急ぎ駆け出した。


「リバリー号は、まだここにあるはずだ。船内を捜索をしていると言っていたからな」

「な、なるほど!でも、どこにあるんだろう?」

 行き交う看守達から隠れて二人は話し合っていた。

今や、刑務所は騒然としていた。そこかしこから「あっちだ!」「逃げたぞ!」「探せ!」などの声が飛んでくる。それを通路の各所で身を伏せながらに、どこかにある宇宙船目指して駈けていた。

「ねぇ、バルンを遠隔で起動させられないの?」

「できんことはないが、俺の音声認識が必要だ――せめて無線でもあれば…」

 ドリューの思いつきにジョットは難しい顔を見せた。しかし一方でドリューは、ニヤッと笑った。

「アレだよ!ジョット!」ドリューが何かを見つけた呼びさした。

そこには『通信室』と札が貼られた扉があり、ドリューは先程警棒を手に一歩踏み出していた。


 「ごめんなさい!」

 ドリューは床に倒れた通信兵に謝っていた。兵士の後頭部にできたたんこぶは痛々しく、ドリューも自分でやったこととはいえ、「うわ」と思わず漏らしてまじまじと見やっていた。

 しかし、一方でジョットは通信兵の装備していた警棒を取り上げると、そばの物陰に兵の身体を隠して素早く通信装置に陣取った。

通信室の扉が閉まっていることを一度確認して、ジョットはそれまで兵士が使用していたであろうマイクに口を近づけた。

「脱走者は既に外へと向かった!急ぎそちらに向かえ!他に脱走者がいないかも調べるんだ!バルンは起動しその位置を示せ!」

口早にそして、最後に言葉を付け足してジョットはマイクから口を離した。ドリューは、そんなのでいいののかと首を傾げたが、ジョットは少し笑って「これでいい、行くぞ」と通信室を出ようと扉を開けた。

「外だ!」「急げ!!」「他にもいるかもしれないぞ!」「バルンってなんだ!?」「知らん!とにかく外だ!」その瞬間、ドタバタと大勢が駈けながらに一方へと進んでいくのがわかった。口々に通信の内容を言い合いながらも、その中身を追求するでもなく脱走者の捕獲だけに必死になっている様子だった。

「・・・さて、あとは」ジョットが扉に身を潜めながら呟いた。すると。

ドカン!

轟音とともに足元が揺れた。

「なるほど地下だ」

 船の在処を突き止めたと、ドリューを伴ってジョットは駆け出した。


 看守や他の兵士たちが次々に外へと向かう中、ジョットとドリューは身を隠しながらに刑務所の地下を目指していた。先程の通信のおかげか人影は少なく随分と動きやすくなっていた。そうして、ようやくそれらしい地下空間にたどり着いたとき、またしてもあの轟音が響いた。それも今度は悲鳴付きだ。

「うわぁ!なんで勝手に動き出したんだ!?」

「誰か乗ってるのか?!おいやめろ!!」

 作業着姿の兵士が二人ほど、奥から飛び出してきたかと思うと、隠れている二人など目に止めずそのまま走り去っていってしまった。何事かと、走り去った兵士たちがやってきた位置を覗き込んだドリューは「あ!」と声を上げた。

 そこには特殊な鎖にしばれたままのリバリー号が、砲台から弾を発射しているところだった。大砲並のそれは、地下空間の壁を損壊させ続け、瓦礫の山を作っている。そして船の周りには停止させようとして失敗したのか、作業員や看守たち何人かが白目を向いて気絶していた。

「バルン!俺だ!とまれ!」ジョットは飛び出して言った。

 その声と共に砲撃は止み、船の運転席の方に目のような緑のランプがオッケーサインよろしく、可愛らしく点滅していた。

「鎖を外す!!手伝ってくれ!!」

「う、うん!」

 そう言うとジョットは警棒のボタンを1つ押し、ドリル式に変えるとその腹を鎖にと押し当てた。ドリューもまたジョットに習い、警棒ドリルを持つと反対側から伸びる鎖へと押し当てた。

ガリガリガリ!バチン!

 金属を削り切る音が響いて、リバリー号は自由を得た。

「よし!乗り込め!」

「ちょ、ちょっと待って!」

いざ脱出と、船に乗り込もうとしたジョットをドリューが引き止めた。

「どうした?」

「どこから出るのさ?たぶんこれ地上から運び入れたんでしょ?ということは、ここから出るには上の刑務所を破壊しなくちゃいけないってこと?」

「……今は、強行突破しか無い――」やむを得ないとジョットが首を横に降った。

「それじゃ、他の人に被害で出るよ!それに本当に他の囚人まで脱獄させてしまうかもしれない!」

「――このままここにいたら、俺達は本当に囚人になるんだぞ!?」そう返すジョットは、こちらへ向かってくる足音が聞こえ始めたのに気がついた。

「ドリュー!乗れ!!」

 急かすジョットにドリューが納得できない顔を見せるが。その時、手に持っていた警棒を見て何かを思いついた。

「そうだ!!」と、ドリューは駆け足で動くと、周りに倒れたままの兵士から他に何本か警棒をかき集めた。

「何してる!!」

「ジョット!!船を出して!僕が道を作る!!」

「何を言ってる!?早くするんだ!!」

「いいから!!僕の後についてきて!!」

 集めた警棒を大きな爪の間に挟み込んでしっかり固定したドリュー。そんな彼の背中を見ながらにジョットは、ドリューが何を考えているのかはっきりと理解できぬまま船に飛び乗った。

「バルン!!至急出発だ!!」

「イエス サー」円盤型ロボのバルンが返事をしてハンドルを握ると、強烈な駆動音が空間内に響き渡った。当然、その音を聞きつけて兵士たちがやってきた。

 船の中から、早く乗り込めとドリューに叫ぶジョットだが、ドリューは固定した警棒をじっくりと睨むと器用に全てのドリル式のボタンを押した。

両腕に備えられた複数の警棒ドリルから、船のエンジン音をかき消すくほどの轟音が響く。

 そしてドリューは両腕を大きく掲げると、船の進行方向をこっちだと報せて床にドリルを当てた。

「僕がモグラで良かったね」

 刹那、ドリューが凄まじい勢いで腕を振るうとドリルの効果もあって一瞬にして大きな穴が出来上がった。まるでトンネルだ。それもとんでもないスピードで掘り進んでいっている。

 ジョットは、そういうことかと理解して急ぎ船をトンネルへと突っ込むのだった。


「うりゃうりゃりゃりゃ!!」

 ドリューは気分爽快であった。モグラ族の十八番とも言うべきトンネル堀がここまで快適だったことは無いからだ。腕に巻き付けた複数の警棒ドリルのお陰で驚くべき作業効率を生み出している。

 刑務所の底を掘り進み、下へ、横へ、そして上へ。異常なスピードで広がっていくトンネルを、ジョットの乗ったリバリー号が猛追してくる。勢いを殺したくないドリューは後ろを振り返ること無く、付いてきていると信じきって、着実に掘り進んでゆく。そして。

 ボコン!!

「わ!」

 遂にはトンネルは開通し刑務所のちょうど裏手にあたる崖から飛び出した。急に掘るべき対象を失ったドリューはドリル付きの腕をバタバタと空振りさせて、崖から真っ逆さまに落ちだした。

「よくやった!!」

 瞬間、落下中のドリューをジョットがハッチから身を乗り出して、首根っこを掴まえた。間一髪、救助されたことに深い息を吐いたドリューは、己の手に巻き付けたドリルを見やった。どれもこれもが限界を超えたようで半分に折れており、ドリルの刃などは無いに等しかった。

「・・・ちょっと無理な使い方だったかな」ドリューは言いながらに、警棒達を解放し取り去ると、ジョットの手助けを受けてリバリー号に乗り込んだ。

「すぐにでも追手がくるだろう――バルン、『ゴミクズ』を起動させて魔法惑星に直行だ」

「リョウカイ」

 ドリューの指示を受けてバルンが万力型の細腕をレバーに引っ掛けた。レバーに上下に合わせて、船内にかかるGが増していく。そうして、最高速度までに加速したリバリー号は、未だ騒がしい牢獄衛星から一気に脱出するのだった。


                   ※

「見えた!」

「お、どれどれ・・・って、見えん」

 ミカが嬉しそうにコックピットの前方を指差していた。それを確認しようと後ろでもがくケントだったが、チラリと宇宙の景色が見えるだけで、どれがどれやらまったくわからなかった。

「なぁ、介入機をお前の母親に見せるのはいいけど・・・大統領はいないのか?このさい一気に卒業の件を終わらせたいんだけど」

「あぁ・・・それは、どうだろう。お父さんも首都星だってニュースでも言ってたしなぁ――と、言うかあんたはまずドリュー達の安否を確認しなさい、向こうににつけば何かしらの連絡手段ぐらいあるから――・・・ん?着陸態勢に入るみたいね」

 ケントに助言していたミカは、船内に取り付けられたナビに着陸準備の表示が表れたことに気づいて、今一度外を眺めた。

 青と緑の中間色で彩ろれた惑星が眼下にあった。周りには星の出入りのため、他の宇宙船も何隻か見えている。旅客船や個人船、さらには当たり前だが太陽系政府関連の船も見受けられる。

「ただいま、魔法惑星」

 そんな彼女にとっては見慣れた光景に、思わず呟いた。


                     ※

「ミカの反応が出たぞ!」

「本当に!?」

 リバリー号の船内でジョットとドリューが声を大にしていた。

ジョットは、タブレット型のツールを持出してくると、それに便利屋契約者の位置情報を映し出していた。自分たちの現在位置を中心に円を描いて拡がった宇宙地図。その一部に「契約者」と記されたポイントが点滅していた。

「なんとか無事のようだな」

「よかったぁ」ドリューが、ヘナヘナと腰を落とした。が、次にはジョットが険しい顔を見せた。

「・・・・・・メーザードに向かっている?何故だ?一度、家に戻る気か?」

「そうかもよ?大統領に傭兵に襲われたことを教えるのかも――それなら僕達の濡れ衣も晴れるわけだし、早く合流しようよ」

「――いや、問題はそこじゃない。あの銀髪男は確か報告のために魔法惑星に行くと言われていたな?」

「え?あぁ、あの看守さん達が言ってた…けど、それがどう関係あるの?」

「関係あるのは銀髪男が報告しに行くであろう相手だ」

 ジョットの言葉を深く響かせてリバリー号は魔法惑星へ向けて全速で航行してゆく。


                 ※


「無事、発ったか?」「あぁ、なんだかんだと揉めてたがな」

 砂漠の地下空間でメガットが、戻ってきたクィーンに話しかけていた。

「うまく行けばいいが・・・」

「なにか気になることでもあるのか?」

 キュルキュルと乳母車を動かしてメガットがその場をぐるぐる回った。備え付けの水槽の中で腕代わりのヒレを組んでは考え込んでいる。

「気になる、というべきか・・・ミカくんは私がメーザードを発ってすぐに追いかけたと言っていた・・・それをザヴィエラはどうやって知り得たのか――」

ふむ。と同じくクィーンも腕を組んで考え込んでみた。

「部下に見張らせていたとか?」

「・・・おそらくは、私を見張っていた途上――、だろう。しかし、だとすれば、その場で捕まえればいいもの」またぐるぐるとその場を回るメガット。

 すると、ピン!と何かを思いついたように目をパチクリさせた。

「ダミー…!そうだ!首都星にいるというザヴィエラのニュース!どれかに一度でもやつの写真なり映像があがったか?!」乳母車のアームを動かして、タブレットなり、他の機器からも情報を引き出すメガット。クィーンも、ただ事ではなさそうな夫をみやって、近くの情報端末に手を伸ばした。

「・・・――ないな。どれも文の情報ばかりだ。映像も大統領は映っているがザヴィエラが一緒に映っているものはない。他は録画の繰り返しだ」

「――まずい」メガットが言った。

「・・・どういう意味だ?」クィーンが問いかけた。

「ダミーだったんだ・・・!奴が首都星にいるという情報が!」険しい顔のメガットが続ける。「奴は私のダミー信号に気づいていた。念のためにと追手を放ち、ミカくんを葬れればそれはそれでよし、そして葬れなくてもミカくんが私と接触し装置の事を知る。封印術のことは遅かれ早かれ私が気付くだろうと踏んでいたのだ」

「・・・じゃ、ミカが装置を持って戻ってくるまでが、奴の計算だっていうのか?」

「『ミカくん』が、じゃない『装置』が、だ。私だろうと私以外だろうと、封印術のためにハル・ハーティ様に近づくだろうと読んだのだ。そこで自分は首都星にいるとダミーの情報を流した」

言い終えると同時に、嫌な沈黙が流れた。

「ザヴィエラは首都星にはいない・・・――おそらく初めからメーザードで待ち受けていたのだ」

 メガットが不安をつのらせ言った。

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