8話 相棒
8話 「相棒」
「お茶置いておきますね。」
ラブとメルとサチエは出かけていて
部室にはレイとクロス2人だけだった。
「レイはさ私のことどう思ってる?」
「えっと……ちっちゃい人?」
「グサッとくるね……いやいやそうじゃなくて……」
「冗談です。クロスさんは私に似ていますね。」
「はい?」
「『クロス グロス』が始まったと同時に『じわじわ』が終わりました。その頃は廃棄という概念はありませんでした。それよりも私は何故か周囲に避けられているなと感じていてその事で頭がいっぱいでした。きっとクロスさんも同じ思いだったのではないかと思います。」
「私のこと知ってたんだ……」
「いえ、私の能力です。」
「能力?」
「私は人の過去がわかるみたいなんです……。」
「へぇー……えー!」
「気にしないでください。知ってるからと言って何もしませんよ。」
「そう……」
ニコニコ笑うレイをじーと睨むクロス。
「クロスさんは相方がいていいですね。」
「ラブのことか?いや、あいつは今日だけだから……」
レイは片手に持っていたスマホを見て立ち上がった。
「用事があるのでそれでは。」
時計はいつの間にか6時を過ぎていた。
「ラブさんと話をしてみてください。楽しいですよ。」
レイは出ていった。
数分後、ドアをノックする音がした。
「ただいま帰りましたー。」
どうやらラブだけ帰ってきたらしい……。
クロスは目を伏せてサングラスを差し出した。
「これをかけろと?」
「はい。」
サングラスをかけたラブを見てジャンプしてみたが飛べないのでクロスはその場で跪いた。
「やっぱりお前と組むのは無理だ……」
「飛べないだけで?」
「ふぇ?」
「自分が強くなったらいいじゃない……」
「どうやって?」
「メルさんと戦ってみるとか。」
「それはダメ!死んじゃうから!」
「1回やったことあるの?しかも死んでないし。」
「むぅ……」
「じゃあ私と戦いましょ。」
「いいの?」
「構いませんよ?」
クロスが殴ろうとするとラブはよけて足でけろうとしたがクロスは足を掴み振り回した。
「私こんなに強かったのか?!」
「ちっ……ちょっ……はな……して!」
「やっほほーい!」
「やめろー!」
午後7時、振り回すのをやめたクロスは目が回って疲れたラブを寝かせた。
「久しぶりだよ、こんなに人と接したのは。昔の私は誰も話してくれないんじゃないかって思ってた。」
「意外にクロスさんが思ってるより皆さん優しいですよ。」
「起きてたの?ははっ……。また泣けてきちゃった……。」
「そこのお菓子でも食べれば?」
「誰が食べるか!って……その声はキャルローゼ?」
ドアの前にはキャルローゼと安藤が立っていた。
「ラブはやっぱ寝てんのね。で、何しに来たのさ?」
「謝罪。」
「謝るの?」
「何も知らないのにあんなこと言ってごめん。」
「どうせ安藤さんに怒られたから仕方なくでしょ?」
「うん。でも私も誤解を解きたかった。」
「へ?」
「私が嫌いなのはそこで寝てるツインテール。」
「?でもあの時確か……」
「後ろでそいつがワーキャー言ってたからあんなこと言ったの。あなたのことは言ってない。」
「??」
「キャルローゼさん、実は髪型がかぶってる子がいるから気に食わないらしくて……」
安藤さんはパジャマ姿でお辞儀をした。
「ごめんなさい。」
「別に謝らなくていいって!」
「ありがとうございます……。えっとキャルローゼさんが何か用事があるようで……。」
「私を部に入れてほしい。そしてあんたらをちゃんと理解したい。これは私の本当の気持ち。」
「そうか!じゃあここに残ってけよ!いろいろ話をしようぜ!安藤さんは気をつけて帰りなよ。」
「はい。いろいろ気をつけます。」
そっとドアを閉めた安藤に手を振りキャルローゼはボールペンを手にした。
「イタズラビットって知ってる?」
「知らないねー……。」
「実はネットで連載されてたんだけど10話で終わっちゃってね。同じサイトの小説『アリスのアリス』と書籍化されたんだけど売れなくて……でもあの子は知ってたんだ。」
「へー。」
安藤美紀、あの子も面白そうだ。
「あのさ、私ずっと起きてたんですけど……」
「え?!」
キャルローゼはお茶をすすりながら帰ってきたレイ、メル、サチエの持っていた晩飯を受け取った。
「あんたしれっとここにいるけど私は許さないからね!」
またややこしいことになりそうだ。