5話 空を飛べない2人組
5話 「空を飛べない2人組」
「クロスさん!このチョコレートの犯人は誰なんですか?」
「はぁ?知らないねぇ……」
「絶対知ってるくせに……」
「まぁまぁ2人とも。」
ラブとクロスはそっぽを向いた。
(なんで言ってくれないのよ。一発殴りたいのに……)
(なんで言わなきゃならないんだよ。ただでさえもう会いたくないのに……)
数分の沈黙のあと、レイがチョコレートに手を出した。
「ダメだレイ!それは相当辛いやつで……」
「食べたら死ぬわよ!」
「いや、死にはしないだろ。」
そんな会話が繰り返されているうちにレイはチョコレートを食べてしまっていた。
「何が辛いのか説明してくれないか?甘すぎて話にならん。」
『ん?』
さっきまで茶を飲んでいたサチエも布団にくるまっていたクロスも目の前で話していたラブもメルも目を丸くした。
「この状態では初めましてだな。」
「えーと……レイちゃん?」
「レイではない。霊だ。」
「え?」
「幽霊だ。レイに憑いてる。」
「あー!」
「メルさん!?知ってるんですか?」
「じわじわという漫画を読んでいてな、それで知ってるんだよ。」
「わかりませんね……。」
「ざっくり言うと、周囲から避けられていた少女がある幽霊に憑かれてしまいいろんな騒ぎを起こしてしまう。そんな感じだった。」
「だからさっき時々記憶が飛ぶことがあるって……大変ね……。」
「あっまたチョコレート食べたぞ。」
「ほんとだ。」
「ケホケホ!辛いですねこれ……。」
「戻ってる。」
「そうだな。」
「え?何ですか?何かおかしいですか?」
「別にー。」
クロスも布団をたたみ椅子に座っていた。
みんなが楽しそうに話している。
この部活は本当に……
「今はちょうど昼食時間ですね。」
「あの子が何もしなきゃいいけど……」
「クロスさん。やっぱり何か知って……」
「知らないよ!なんにも!」
「うーん……」
この部の近くにある芝生の広場にはたくさんの学生が弁当を食べていた。
中には不味いとか、辛いとか、苦いとか言いながら食べているものも……
「あれは絶対怪しいわよね、クロスさん?」
「まぁ……はい。」
メルは腕組みをしながらサチエと考えていた。
「問題は起きているが、学生と関わるわけにはいかないな……」
「こういう時には制服を用意していますがクロスちゃんの分しかありませんし……」
「よし決めた!」
メルは窓の外を見ていたラブとクロスに話しかける。
「ラブならセーラ服だし、クロスの分の制服もある。学生に紛れて犯人を探すことも容易だ!」
「はぁ!?こいつとよりにもよってあの子にまた会わなきゃいけないのかよ……。」
「頼む。」
「私の制服をお前らが着るのはダメなのか?」
「サイズ的に無理なもんで……」
「(・д・)チッ」
クロスは仕方なく窓から出ようとした。
「まだあなたは飛べないのよ?」
「そうだった……」
「まだ12時半。能力が解けるまであと5時間。」
「あーもう!めんどくさい!」
思いきりドアを開けて出ていくクロスを追いかけるラブ。
大丈夫なのかと心配するメルとサチエ。
窓から眺めているレイは呟いた。
「キャルちゃん、元気かな?」