3話 修理代はいくら?
3話 「修理代はいくら?」
「ヒリヒリする……。」
「熱い……。」
「こんな辛いの食べたことない……。」
「絶対あの子の仕業だ!」
窓から逃げようとしたクロスの服の裾を掴んだのはラブだった。
「まさかこのまま逃げようとか考えてるんじゃないでしょうね。」
「まっさかー」
「そこに正座して。」
「後輩が先輩になんて事を言うのー。」
「早くしろ。」
「はぁ……」
そういえば今は飛べないんだよなとラブの目を見て思い出したのか、素直に正座した。
「危うく死ぬところだったわね。感謝しなさい。」
「あ……ありがとうございます……」
「ラブちゃん、そんなにイライラしないで。冷たい水でも飲んで落ち着いて?」
「……」
(全く馬鹿なんだから……)
メルの隣に座り、冷たい水を一気に飲み干した。
「クロスさんはそこで大人しくしといてください。私達があの子とやらを探してきますから。」
「ちぇ」
「ラブ、私達はこの世界で死ぬ事は無い。でも大怪我をしても治す者がいない。だからクロスを助けてくれてありがとう。」
「別にそんなつもりじゃ……」
ちらとクロスを見ると布団をしいてゴロゴロしていた。ため息ばかり出る。
「もうさっさと探しに行きましょ。」
「でもどこにいるかわからないぞ?」
「あー……そういやそうだったな……」
クロスはどうやら知らないみたいだし、校内にいない可能性の方が高い。
ラブは頭を悩ませ、(いっそまた問題が起きてそいつが現れてくれればいいのに。)とまで思っていた。
パリン
「東の校舎から聞こえましたね。行ってきます。」
サチエは部室を出たかと思うとすぐ帰ってきた。
「速いですね……」
「足が速いという次元ではないような……」
「どうやら3年9組の教室の窓が割れたようです。あのクラスなら行っても大丈夫そうですね。」
「え?」
「元々私達は3次元とあまりふれあってはいけないんですけど、3年9組とはいろんな意味で繋がっているので。」
笑っているサチエの横をメルは通る。
「とりあえず現場まで行ってみよう。クロスは留守番だ。」
「はいはーい。」
ラブとメルはサチエに掴まりまるで瞬間移動のように例の場所についた。
幸い教室には誰もいなかったが窓のそばにはガラスの破片が刺さった手を見つめている少女がいた。
その頃、部室では……
「イタズラビット……だっけか?」
「うん。」
「お菓子はその……味があれだったんだけど嬉しかったよ。」
「嘘。」
「うん、まぁ嘘なんだけども……でもあんたの才能には興味がある。」
「才能?能力の事?」
「そう。」
クロスは入部届けを差し出した。
「さっき新入部員が入ったばっかりなんだけどさ、まだまだ足りないと思うんだ。だから、入ってくれない?」