耳-2
家に帰って制服を脱ぎ、 自分の部屋で勉強をしている間もずっと考えていたことがあった。
西川は恐らく、 自ら闇の方に行こうとするタイプだろう。 僕に話す内容も小説か、 もしくはニュースなどだ。 内容は全て殺人、 しかも猟奇的なものばかりだ。
そういうものに興味を抱いて自分もその世界に行こうとするタイプなのだろう。 だからこそ、 僕と彼女は違う。
僕は元々そこの住人だ。
幼稚園の時だろか、 僕は普通に周りと同じく子どもらしい絵を描いていたはずなのだが、 周りの大人が心配するような、 少し訝しむような絵を描いていたらしい。
僕が覚えているのは、 人の顔に当たる部分をいつも黒く塗りつぶし、 四肢の部分を全て蛸とか烏賊のような触手にした絵だ。 その絵を見た周りの友だちは泣き出し、 幼稚園の先生方も気分が悪そうだった。
そして僕のことを、 なにか恐ろしいものを見るかのような目で見てくるようになった。 いや、 恐ろしいものを見ていたのだろう。
その視線に気づいた頃から僕は周りを騙すことを学び始めた。 それ以降はほかの園児と同じように扱ってもらっていた記憶がある。
僕はそのような経験が幾つもあり、 自分は他の人とは違うということに気がついた。 自分はどこか狂ってる、 しかしそれを他人の価値観に押しつぶされるのは嫌だった。
だから演技し始めたのだ。 学校での自分もやはり演技だ。 マルとかボンと話すこともあるが自分からは話しかけたことは一度もない。
しかし、 昼休みなどはクラスメイトと過ごしているので目立つことは無い。 会話の内容もテレビをチェックして漫画をレンタルすれば事足りた。 そういう点が僕と西川の違いだろう。
カノジョは負に憧れている、
ボクは負だ。