耳-1
恐ろしい少年と恐ろしくなりたい少女の奇妙な関係とは…
「こんにちは」
今日の授業を全て終えHRも終わり、 自分の担当する場所の掃除も終えて帰る準備をしていた僕に、 話しかけて来た人がいた。
話しかけて来たとは言っても、 聞こえるか聞こえないぐらいの声量だ。
多分僕にしか聞こえないように意識したのだろう、 とは言え大きな声を出す彼女なんか想像もつかないが。
顔を上げると予想通りそこにいたのは西川だった。
西川は自分からはあまり喋らないタイプだし事実、 彼女から話しかけられたという友人も居ない。
容姿は整っている。 両目は黒い部分がまるで黒瑪瑙のような輝きを放ち、 肌もまるで死人のように白い。
貧血タイプなのだろうか。 顔は世間一般的に言えば美人だろう。 頭に超が付いても不思議ではない。 スタイルもいい為言い寄って来る男はいるらしい。
二つある教室の黒板側のドアにいる女子たちが、 僕と西川を見てヒソヒソ話していた。
その集団の真ん中に居る女子は周りからハルカと呼ばれていた。 僕の知っているハルカだろう。
別に下の名前で呼んでるからと言って親しいという訳でもない、 本人が苗字の谷繁で呼ばれるのを嫌がるからだ。
別に意識していた訳でも、 口に出してた訳でも無いのにハルカと呼んでしまう辺りに彼女の必死さがわかるだろう。
その隣に居るのは多分赤見内だろう。 読み方は「あかみない」、 かなり珍しい苗字だから僕の記憶にも残っていた。
ほかの女子たちは名前も知らないし、 顔も見たことがない。 もしかしたら挨拶とか話したこともあるかもしれないが、 僕の記憶に残るほどでも無かった。
閑話休題
ヒソヒソ話していたのは多分、 僕たちの関係だろう。前にマルとボンからも聞かれたことがある。
マルは本名が「丸サカキ」だからそのまま苗字で呼んでる、 ボンは苗字が「梵」で読み方は「そよぎ」なのだが、 読みづらいため「ボン」と呼んでいる。
しかし、 僕と彼女の話してる姿を見ても誰も僕たちの関係性はわからないんじゃないか。
現に、 挨拶をして来た西川は無表情だし僕自身も無表情だ。
そのうち女子の集団はワイワイ騒ぎながら荷物を持って出て行った。 恐らく部活だろう、 先ほどトラベリングとかコフィンコーナーがどうとか言ってたからバスケなのかもしれない。
ちなみに、 僕も西川も部活には所属していない。 厳密に言うと僕は図書部員だが、 入ってみても特に僕の興味を引く本も無かったので幽霊部員になっている。
女子の集団が去ってから僕も口を開いた。
「こんにちは」
「ごめんなさいね、 突然話しかけたりして」
「別に気にしてないよ、 五月蝿い女子集団も部活に行ったみたいだし」
「そうね、 そうそう。 昨日借りた小説が変な話だったのよ」
西川はそう言うとその小説の内容を簡潔に語り始めた。
一気に話したからだろう。 少し息が上がっていた。
「確かに変な話だけど、 興味あるな」
「あら? 貴方はカニバリズムに興味があるの?」
西川は笑いながらそう聞いてきた。 もちろん、 冗談ぽくだ。 しかし、 冗談と言ってもそのポイントが少し違う。
「僕が興味あるのは人肉を食べるよりも、 人肉を食べる人についての興味だよ」
「人間性ということかしら?」
「と言うよりも、 その人の過去とかその行為に至った経緯も知りたいかな。 もちろん、 その行為をする理由にも興味がある」
「どうして?」
「その人が何を考えているのか。 その人はどうしてそういう行為をしているのにこの世界を生きているのか。 間違った世界に居るとは思わないのだろうか。 興味が沸かないか?」
「貴方って変な人ね」
「そんな小説を読む君も相当だと思うよ」
僕たちはその話をしたあと、 一緒に帰る。 こともせず、 それぞれ家に帰って行った。
のんびりと時間があれば書いていきたいな。と思っています。僕自身まだ学生ですのでおかしな文等は目を瞑っていただきたいなと思います。