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第三話 悪魔の契約

8/17 内容を少し付け足しました。


「………契約?」

「クスクス。そう、契約……見た所、君には魔法使いの素質がかなりあるみたいだ。将来の僕らの敵はここで潰しておかないと」

「…っ、お前『アクリア』か!」

「そうだよ。さぁ、どうする? エリゼを助けたければ契約するしかないよ」

「…………」



契約ってどんな事するんだよ…。いや、そんな事言ってる場合じゃない。早くしないとエリゼが…。



「…わ、分かった」

「クスクス。じゃあ、契約だね」

「契約って何をするつもりだ?」

「クスクス。君の力を封印するのさ……まぁ、全部は可哀想だから八割ぐらいにしてあげる」

「……っ」



コイツ!?

殴りたい衝動を抑える。今俺は子供なんだ。大人のコイツにかなう訳ない。



「…じゃあ、始めるよ…………」

「……?」



赤ローブは無言で木から飛び降りる。スタスタと俺の前まで来ると左手を横に振った。すると。



「…あっ!」



魔法陣が現れた。

これが詠唱無しでの魔法か……。赤ローブは俺の考えてる事が分かるのかニヤリと笑っている。



「そうそう、本来なら君の魔力を封印するだけなんだけど…どうせなら本当に悪魔と契約しちゃう? 僕らみたいに…クスクス」

「悪魔と…契約?」

「僕らは魔力を持たない者と共存するつもりはない。だけど邪魔する『ラピスリー』より強い力を手に入れたい、そう考えた王は悪魔との契約をした。当然、僕らもね。ほらこれが契約の証さ」



そう言うと被っていたフードの頭部分だけを脱いだ。燃えるような真っ赤な髪に幼い顔立ち。何より印象に残るのは顔の左側に施された刻印だ。



「この刻印こそが悪魔と契約した証さ。人間が悪魔と契約する事は禁忌とされていてね、捕まれば最悪は死刑になりうる……もう一度聞くけどそんな危険を犯してまでエリゼを助ける理由なんて、ある?」

「ある!」



即答だった。元はと言えば俺が上級魔法を使わなければ、エリゼを連れてこなければ怪我させる事はなかったんだ。これはきっと俺の罰なんだ。父さんと母さんを悲しませて

しまうかもしれない、でもやっぱりここでエリゼを亡くしたら人として終わりな気がするんだ。



「即答か……クスクス。君、やっぱり面白いや! じゃあ早いとこ始めるよ」

「……っ」










………



その後の事はよく覚えていなかった。気が付いたら俺は、家のベッドに寝かされていた。隣りには心配そうにしている父さんと涙を浮かべる母さんが。



「あ、アレス!」

「…母様…」

「良かった…」



母さんが俺を強く抱きしめる。胸がズギズキと痛むのを感じた。俺は悪魔と契約した、言わば人の敵となってしまった事に申し訳なささと後悔で柄にもなく泣いてしまった。



「…………」



ただ、父さんだけは俺を見て目を細めている。悲しそうな瞳だが凛々しい。もしかしたら父さんは気付いているのかもしれない。



「…カトレア、アレスと二人で話しがしたい。席を外してくれないか」

「……はい。あまり怒らないであげてね」

「あぁ」



心配そうにチラチラ後ろを振り返りながらもゆっくり部屋を出て行った。残された俺達はというと、暗い雰囲気だ。切り出しにくいのか、沈黙が続く。



「アレス」



長い沈黙を破ったのは父さんだった。静かに俺の名前を呼ぶ。



「は、はい」

「…単刀直入に言うが、その顔の刻印はなんだ?」



刻印!?

言われて初めて気付いた! というか赤ローブ、顔に傷残るんなら言えよな!俺は確かめる為、寝室に備わっている鏡の前に立つ。



「…あ」



鏡で見た自分の顔は赤ローブまでとはいかないが顔の左側、目より下に刻印があった。まるでアニメのキャラになった気分だ。いや、事態は深刻か。



「…その刻印、『アクリア』に付けられたのか?」



父さんの表情はいつも通りに見えるが明らかに怒っていた。だって父さんの後ろから怒りの炎が見えちゃってるからね。



「は、はい…」

「…なんて事だ……」



頭を抱えて空いてるベッドに座り込む父さん。俺は迷惑を与える天才か。結局、どっちの世界でも必要とされないんだ。そう考えると涙が出てきた。



「……アレス。すまない」

「…っ、父様?」



いきなり抱きしめられた! 母さんの時とは違う…強く、でも優しく。



「お前の方が辛い目にあったのだったな。辛い事を思い出させてすまなかった」

「い、いえ。父様は悪くないです! ぼ、僕が……全部僕が悪いんですっ」



そう、全部俺のせい。

だから父さんも母さんも泣かないでくれ。








ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー




一人になった部屋は寂しい。父さんは数日、様子を見る為部屋に居るようにと言った。言わば軟禁だがそうなって当たり前の事をしたんだ。



「……そういえば…エリゼ、大丈夫かな…」

『大丈夫、無事ですよ』

「!?」



び、ビックリした! 完全に一人だと思ったからマジでビビった。



「誰かいるのかっ!」

『えぇ、居ますよ』



やっぱり声だけしか聞こえない。



「卑怯だぞ! 姿を表せっ」

『えー……。はいはい、分りましたよ…マスター』



途端に淡い光が目の前に現れる。

そしてその輝きの中には人影があった。




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